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2.カード選びは慎重に
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会場内に設置された大型モニターに七種のカードが表示された。
・二枚舌:二度解答できる権利
・クローズド:関係者を十名まで絞り込める
・検死観:被害者の死亡時刻を正確に知ることができる
・ノーライ、ノーライフ:事件に無関係な嘘を見抜ける
・カンニング:犯人特定のためのアイテムを教えてもらえる(※締め切りの百分前)
・幻影ジョーカー:他のチームのカード一枚を無効にする
・ロバの耳:秘密の仕掛けがあれば知ることができる
以上が今回の探偵ゲームで用いられるカード七種だった。再登場のカードがほとんどだが、一枚だけ、「幻影ジョーカー」は初お目見えだ。
争奪戦は四度行われ、一勝負ごとに勝者チームが好きなカードを一枚選べる。四度の争奪戦後、残される三枚はゲームの勝敗とは無関係に、その時点で獲得カードの少ないチームから順に好きな一枚を選び、もらえるシステムだ。獲得カード数が同じであれば、チームを構成する二人のこれまでの公式戦勝利数が少ないチームが優先される。今回の三チームで言えば、桐生・片薙がトップで、石倉・馳、螢川・高田と続く。
「狙い目は?」
片薙に問われ、桐生は「それを決める前に、もう一つ重要な情報を待たないと」と応じた。
<なお、今回の事件が起きる舞台は、雪で閉ざされた古びた屋敷。警察は当面の間介入不可能な状態にあるとします>
この設定を知ることで、カードの優先順位がある程度決まる。たとえば、警察の介入が当分ないのであれば、死亡推定時刻が分かるのは大きい。古びた屋敷には、秘密の仕掛けがあるのかもしれない。
「とりあえず、カンニングと検死観がトップツー。だが、このどちらかは幻影ジョーカーで無効にされる恐れが高いかな」
「だったら、幻影ジョーカーも獲れるように頑張る?」
「いや、そううまく行くとは考えにくい。片薙さんは知らないかもしれないけれど、僕はこの争奪戦パートはあんまり得意じゃない。二つ獲得できれば御の字」
「じゃあ、どうするって?」
「うーん、さっきの二枚はパスして、ロバの耳とノーライを優先して狙う方がいいかもしれない。ロバの耳は外れカードであることも多いけれど、ここのところ外れ続きだったかっら、そろそろ来る予感が。ノーライは推理材料の取捨選択に――」
話の途中だったが、アナウンスが入った。第一の争奪戦の説明が始まる。
最初のカード争奪戦は運任せの要素が強い、トランプ遊びの神経衰弱。トランプ五十二枚全てを裏向きにし、めくっていくのは通常ルールのままだが、七種のカードは先の提示順に、トランプの赤(ハート及びダイヤ)1~7に対応しているところが異なる。赤の1~7のいずれかで最も早くペアを完成したチームがそのトランプの数字に対応するカードを獲得できる。
ただし、ペアの完成に色の一致は必要でなく、たとえばスペードのエースとハートのエースを開いた場合、ペア完成と見なされ、場から取り除かれる。対応する二枚舌のカードは、この時点では獲得不可能となる。全てのカードが獲得不可能に陥ったときは、1~7のペア(赤と黒)を最初に完成させたチームが権利を有する。よって、他のチーム取られないようにわざと色違いのペアを開き続け、全てを無効にした上でカードの獲得を目指す作戦もあり得る。
桐生らは、赤を揃えることでカード獲得を目指しつつ、状況の推移によっては獲得不可能に持ち込む二段構えを取ることにした。尤も、他の二チームの作戦と大きく異なるとは考えにくい。
序盤は無関係のトランプばかりが続いたが、二巡目で、桐生・片薙組がハートの3を開くもペアは不成立。次いで螢川・高田組が二枚目に開いたのがダイヤの5。石倉・馳組が開くも無関係。桐生組も同様。螢川組のときに動きがあり、二枚目でクラブの3が出た。順番が回ってくる石倉・馳組は、選択の幅が広がる。ダイヤ3もしくはハートの5狙いで行くか、ハートの3とクラブの3でペアとするか。セオリーでは後者かもしれないが、直後に他チームに赤の5のペアを完成される恐れもある。5に対応するのが、最も強力なカードの一つと言えるであろう、カンニングであるのは大きい。とは言え、3に対応する検死観も悪くはない……。
つづく
・二枚舌:二度解答できる権利
・クローズド:関係者を十名まで絞り込める
・検死観:被害者の死亡時刻を正確に知ることができる
・ノーライ、ノーライフ:事件に無関係な嘘を見抜ける
・カンニング:犯人特定のためのアイテムを教えてもらえる(※締め切りの百分前)
・幻影ジョーカー:他のチームのカード一枚を無効にする
・ロバの耳:秘密の仕掛けがあれば知ることができる
以上が今回の探偵ゲームで用いられるカード七種だった。再登場のカードがほとんどだが、一枚だけ、「幻影ジョーカー」は初お目見えだ。
争奪戦は四度行われ、一勝負ごとに勝者チームが好きなカードを一枚選べる。四度の争奪戦後、残される三枚はゲームの勝敗とは無関係に、その時点で獲得カードの少ないチームから順に好きな一枚を選び、もらえるシステムだ。獲得カード数が同じであれば、チームを構成する二人のこれまでの公式戦勝利数が少ないチームが優先される。今回の三チームで言えば、桐生・片薙がトップで、石倉・馳、螢川・高田と続く。
「狙い目は?」
片薙に問われ、桐生は「それを決める前に、もう一つ重要な情報を待たないと」と応じた。
<なお、今回の事件が起きる舞台は、雪で閉ざされた古びた屋敷。警察は当面の間介入不可能な状態にあるとします>
この設定を知ることで、カードの優先順位がある程度決まる。たとえば、警察の介入が当分ないのであれば、死亡推定時刻が分かるのは大きい。古びた屋敷には、秘密の仕掛けがあるのかもしれない。
「とりあえず、カンニングと検死観がトップツー。だが、このどちらかは幻影ジョーカーで無効にされる恐れが高いかな」
「だったら、幻影ジョーカーも獲れるように頑張る?」
「いや、そううまく行くとは考えにくい。片薙さんは知らないかもしれないけれど、僕はこの争奪戦パートはあんまり得意じゃない。二つ獲得できれば御の字」
「じゃあ、どうするって?」
「うーん、さっきの二枚はパスして、ロバの耳とノーライを優先して狙う方がいいかもしれない。ロバの耳は外れカードであることも多いけれど、ここのところ外れ続きだったかっら、そろそろ来る予感が。ノーライは推理材料の取捨選択に――」
話の途中だったが、アナウンスが入った。第一の争奪戦の説明が始まる。
最初のカード争奪戦は運任せの要素が強い、トランプ遊びの神経衰弱。トランプ五十二枚全てを裏向きにし、めくっていくのは通常ルールのままだが、七種のカードは先の提示順に、トランプの赤(ハート及びダイヤ)1~7に対応しているところが異なる。赤の1~7のいずれかで最も早くペアを完成したチームがそのトランプの数字に対応するカードを獲得できる。
ただし、ペアの完成に色の一致は必要でなく、たとえばスペードのエースとハートのエースを開いた場合、ペア完成と見なされ、場から取り除かれる。対応する二枚舌のカードは、この時点では獲得不可能となる。全てのカードが獲得不可能に陥ったときは、1~7のペア(赤と黒)を最初に完成させたチームが権利を有する。よって、他のチーム取られないようにわざと色違いのペアを開き続け、全てを無効にした上でカードの獲得を目指す作戦もあり得る。
桐生らは、赤を揃えることでカード獲得を目指しつつ、状況の推移によっては獲得不可能に持ち込む二段構えを取ることにした。尤も、他の二チームの作戦と大きく異なるとは考えにくい。
序盤は無関係のトランプばかりが続いたが、二巡目で、桐生・片薙組がハートの3を開くもペアは不成立。次いで螢川・高田組が二枚目に開いたのがダイヤの5。石倉・馳組が開くも無関係。桐生組も同様。螢川組のときに動きがあり、二枚目でクラブの3が出た。順番が回ってくる石倉・馳組は、選択の幅が広がる。ダイヤ3もしくはハートの5狙いで行くか、ハートの3とクラブの3でペアとするか。セオリーでは後者かもしれないが、直後に他チームに赤の5のペアを完成される恐れもある。5に対応するのが、最も強力なカードの一つと言えるであろう、カンニングであるのは大きい。とは言え、3に対応する検死観も悪くはない……。
つづく
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