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4.君の名は?
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第三の争奪戦はお馴染みになっている「言の葉」。二十の質問・二十の扉等の名称で知られる、単語当てゲームだ。
このイベントにおける「言の葉」のルールは、以下の通り。
・各チームが一度ずつ出題者となり一つの単語を定める。
・毎回、単語に関するカテゴリーテーマが司会者によって定められ、全員に通達される。
・解答に回った二チーム四人は順番にイエス・ノーで答えられる質問をしていき、出題者からの答を参考に正解を言い当てる。
・質問の順番は抽選で決められ、かつ、互いに誰が質問者なのか分からない仕組みになっている。
・質問は一人五回、全体で最大二十回となる。
・解答権は一人一回で、解答そのものも質問の一回としてカウントされる。
・途中で誤答して解答権を失った者も、質問は継続できる。
・言い当てた者の所属するチームに加点。たとえば全体で五回目の質問時に正解すれば、21-5=16で十六点、最後の質問時で正解すれば、21-20=1で一点のみとなる。
・正解者が出なかったときは、出題チームに八点が与えられる。
このようなルールで競い、最高得点を収めたチームの優勝。好きなカードを選べるという流れだ。
まずは出題チームを決める必要がある。ここでは先の争奪戦で勝利した螢川・高田組が、最初に選ばれた。
<カテゴリーテーマは、歴史上の人物。いわゆる偉人てやつだ。有名じゃなくてもかまわないが、大手のネット辞書にすら載っていないような人物はだめだ>
これを受けて、螢川と高田は少し相談し、一つの人名をボードに書いた。司会者だけが見て、出題に適しているかどうかをまず判定する。
<この人を僕は知らなかったけれど、調べてみた結果、まあ問題ない。認めるとしよう>
司会の台詞そのものも、ある程度のヒントになるかもしれない。
解答側に回った二チーム四人は、カプセル型の解答席に一人ずつ別々に座った。美容院にあるパーマを当てるマシン、あれのフードを巨大にして人ひとりを丸ごと覆う大きさにした感じだ。解答者の顔の高さにはマジックミラーがはめ込まれており、外からは各解答者の表情が見えるが、解答者からは外は見えない。人の声やその他の音はスピーカーを通してしか聞こえないし、自身の声も、マイクを通してのみ音声変換されて外へしゃべれる。もちろん、口調で誰だか分かってしまうこともあるので、解答はキーボードを叩いて文字入力をしてから送信する仕組みになっていた。
続いて、百本のこよりで作られたくじが持ち込まれ、桐生、片薙、馳、石倉の四名がこの順番に引いていった。こよりの下の端には番号が1~100までだぶることも欠けることもなく書かれていて、引いたくじの数の小さな順に、答えるの順番が決まる。
桐生は自分が三番目に質問者になったことを、カプセル内のデジタル掲示板の点灯で知った。チームを組む片薙すみれが何番目の質問者になったのかは、無論分からない。
<それでは、「言の葉」ゲーム一回戦、カテゴリーテーマは歴史上の人物。スタート!>
司会者の合図が消えるか消えないかのタイミングで、すかさず最初の質問が出された。
1.その人物は存命ですか?
人物がテーマのときのセオリー通りの質問である。螢川・高田チームもこれは予測済みだったのであろう、すぐさま返答した。
1.その人物は存命ですか?-ノー
カプセル内には筆記用具一式が揃っていて、自由にメモを取れる。桐生は丁寧さと乱雑さが入り交じった字で、今の質問と答を書き記した。
その後も順調に質問が出され、セオリーを無視することもなく、早いペースで進んでいく。
2.日本人ですか?-イエス
3.男性ですか?-イエス
この質問は桐生がしたもの。すでにこの世にない日本人男性。これは基本中の基本となる情報であり、ここからが本番と言える。
4.政治家ですか?-ノー
これも悪くない質問だ。関係ないが、政治家ではないが政治に関わった人物を選んだときは、職業は何とするのがいいんだろう? 活動家?
5.国民栄誉賞を取っていますか?-ノー
思い切った質問だったが、絞り込みには成功せず。
6.プロスポーツの選手ですか?-ノー
これまたノー。なかなか枠を狭められない。
順番が回ってきた桐生は、これまでに出た質問と答を速攻で振り返る。
(政治のジャンルでなく、スポーツのジャンルでもない。となると科学者辺りが怪しくなってきたか……?)
そこまで頭の中を整理したとき、ふと閃いた。
(この質問はいいんじゃないか。答がイエスだったとしてもノーだったとしても、得られる情報はほぼ同じ。しかもこのあと想像するヒントになる)
思い付きを自画自賛したくなった桐生だったが、それは諸刃の剣であることにもすぐ気が付いた。
(敵チームへのヒントになるのは確実。四番目の解答者が、片薙さんだったら万々歳なんだけどな)
そこは知りようがない。予め決めておいた、テーマからずれている質問をすることで、お互いが何番目に解答するのかを知らせる策を行使したチームが過去にあったが、現在ではその手法は禁じられている。
(迷っている暇はない。まだほとんど絞り込めていないんだし、ここは思い切っていくとするか)
決断した桐生は、質問を打ち込んだ。
7.出題の人物を最終的に決めたのは螢川さんですか?
この桐生からの質問には審議ランプが灯った。ルールに反していないかどうかを判定するためのものだが、一分と経たない内に問題ないことを意味する青ランプが点った。
改めて返答が行われる。
7.出題の人物を最終的に決めたのは螢川さんですか?-ノー
つづく
このイベントにおける「言の葉」のルールは、以下の通り。
・各チームが一度ずつ出題者となり一つの単語を定める。
・毎回、単語に関するカテゴリーテーマが司会者によって定められ、全員に通達される。
・解答に回った二チーム四人は順番にイエス・ノーで答えられる質問をしていき、出題者からの答を参考に正解を言い当てる。
・質問の順番は抽選で決められ、かつ、互いに誰が質問者なのか分からない仕組みになっている。
・質問は一人五回、全体で最大二十回となる。
・解答権は一人一回で、解答そのものも質問の一回としてカウントされる。
・途中で誤答して解答権を失った者も、質問は継続できる。
・言い当てた者の所属するチームに加点。たとえば全体で五回目の質問時に正解すれば、21-5=16で十六点、最後の質問時で正解すれば、21-20=1で一点のみとなる。
・正解者が出なかったときは、出題チームに八点が与えられる。
このようなルールで競い、最高得点を収めたチームの優勝。好きなカードを選べるという流れだ。
まずは出題チームを決める必要がある。ここでは先の争奪戦で勝利した螢川・高田組が、最初に選ばれた。
<カテゴリーテーマは、歴史上の人物。いわゆる偉人てやつだ。有名じゃなくてもかまわないが、大手のネット辞書にすら載っていないような人物はだめだ>
これを受けて、螢川と高田は少し相談し、一つの人名をボードに書いた。司会者だけが見て、出題に適しているかどうかをまず判定する。
<この人を僕は知らなかったけれど、調べてみた結果、まあ問題ない。認めるとしよう>
司会の台詞そのものも、ある程度のヒントになるかもしれない。
解答側に回った二チーム四人は、カプセル型の解答席に一人ずつ別々に座った。美容院にあるパーマを当てるマシン、あれのフードを巨大にして人ひとりを丸ごと覆う大きさにした感じだ。解答者の顔の高さにはマジックミラーがはめ込まれており、外からは各解答者の表情が見えるが、解答者からは外は見えない。人の声やその他の音はスピーカーを通してしか聞こえないし、自身の声も、マイクを通してのみ音声変換されて外へしゃべれる。もちろん、口調で誰だか分かってしまうこともあるので、解答はキーボードを叩いて文字入力をしてから送信する仕組みになっていた。
続いて、百本のこよりで作られたくじが持ち込まれ、桐生、片薙、馳、石倉の四名がこの順番に引いていった。こよりの下の端には番号が1~100までだぶることも欠けることもなく書かれていて、引いたくじの数の小さな順に、答えるの順番が決まる。
桐生は自分が三番目に質問者になったことを、カプセル内のデジタル掲示板の点灯で知った。チームを組む片薙すみれが何番目の質問者になったのかは、無論分からない。
<それでは、「言の葉」ゲーム一回戦、カテゴリーテーマは歴史上の人物。スタート!>
司会者の合図が消えるか消えないかのタイミングで、すかさず最初の質問が出された。
1.その人物は存命ですか?
人物がテーマのときのセオリー通りの質問である。螢川・高田チームもこれは予測済みだったのであろう、すぐさま返答した。
1.その人物は存命ですか?-ノー
カプセル内には筆記用具一式が揃っていて、自由にメモを取れる。桐生は丁寧さと乱雑さが入り交じった字で、今の質問と答を書き記した。
その後も順調に質問が出され、セオリーを無視することもなく、早いペースで進んでいく。
2.日本人ですか?-イエス
3.男性ですか?-イエス
この質問は桐生がしたもの。すでにこの世にない日本人男性。これは基本中の基本となる情報であり、ここからが本番と言える。
4.政治家ですか?-ノー
これも悪くない質問だ。関係ないが、政治家ではないが政治に関わった人物を選んだときは、職業は何とするのがいいんだろう? 活動家?
5.国民栄誉賞を取っていますか?-ノー
思い切った質問だったが、絞り込みには成功せず。
6.プロスポーツの選手ですか?-ノー
これまたノー。なかなか枠を狭められない。
順番が回ってきた桐生は、これまでに出た質問と答を速攻で振り返る。
(政治のジャンルでなく、スポーツのジャンルでもない。となると科学者辺りが怪しくなってきたか……?)
そこまで頭の中を整理したとき、ふと閃いた。
(この質問はいいんじゃないか。答がイエスだったとしてもノーだったとしても、得られる情報はほぼ同じ。しかもこのあと想像するヒントになる)
思い付きを自画自賛したくなった桐生だったが、それは諸刃の剣であることにもすぐ気が付いた。
(敵チームへのヒントになるのは確実。四番目の解答者が、片薙さんだったら万々歳なんだけどな)
そこは知りようがない。予め決めておいた、テーマからずれている質問をすることで、お互いが何番目に解答するのかを知らせる策を行使したチームが過去にあったが、現在ではその手法は禁じられている。
(迷っている暇はない。まだほとんど絞り込めていないんだし、ここは思い切っていくとするか)
決断した桐生は、質問を打ち込んだ。
7.出題の人物を最終的に決めたのは螢川さんですか?
この桐生からの質問には審議ランプが灯った。ルールに反していないかどうかを判定するためのものだが、一分と経たない内に問題ないことを意味する青ランプが点った。
改めて返答が行われる。
7.出題の人物を最終的に決めたのは螢川さんですか?-ノー
つづく
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