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2-6.エース(仮)への道程その1
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団体を背負うレスラーの一人になって、プロレスそのものはうまくなったと実感がある。その一方で、ガチンコだの喧嘩だのとはとんとご無沙汰で、しかもかつての志貴斗との対抗戦が最悪の結末で幕引きがなされたことを思うと、嫌な記憶ばかり脳裏を占める。もちろん、仕掛けられたときに備えて、懐に収めた匕首のごとき裏技を、道場で磨いてはいるが……。
「自信なさげな顔だな」
福田が声なき笑いの仕種をしながら言った。小石川に話を伝えにきた彼は、今では実木のボディーガード役としてリング内外で活躍している。
「自信がないと言うよりも、不安なんですよ、これは」
「ほう? 昔あれだけとんがっていた小石川拓人も、今やすっかりプロレスの上手な次期エースってことか、うん」
「そう、そこなんですよっ。次期エース、なんですかねえ」
小石川は苦笑を浮かべ、嘆息した。
次期エース候補と目されるようになってから五年余りで、トップクラスの仲間入りを果たした。“候補”が取れ、立派な次期エースの一人であるのは会社内でもファンからの評価でも間違いない。
イースタンプロレスのシングルのフラッグシップタイトルであるGPWF(グローバル・プロ・レスリング・フェデレーション)認定ヘビー級王座の載冠はまだ果たせていないが、世界王者に挑戦して引き分けに持ち込む程度には、実力を認められるようになっている。
団体のタッグタイトル、ナショナルタッグタイトルの方はすでに載冠経験が三度ある。一度目は、イースタンプロレスが新体制になってからの師匠であり社長でもある実木と師弟タッグを結成したときのもの。二度目の防衛に成功したあと、団体エースの実木がシングルに専念するためという名目で返上。直後、外人コンビとの王座決定戦には水橋と組んで出陣するも敗退。佐波と新コンビを結成して奪回に成功した。佐波と小石川のチームはライバル心がうまく作用し、名タッグとして高い評価を得て、連続防衛を重ねていく。いよいよ長羽と実木のコンビが持つ連続防衛記録に列ぼうかというとき、仲違いを演じて解散となった。無論、これは会社の方針で、団体ナンバーツーのタイトルとして用意されたナショナルヘビー級のベルトを、比較的若い連中で争う構図を作りたかったのだ。小石川は鶴口と、佐波は水橋とそれぞれ新コンビをなし、シングル・タッグ両面で競り合っていく。
後に明かされた実木社長の思惑としては、自分を追い掛けてくる若い選手同士で食い合いをさせ、実力・人気の両面で勝ち残った者一人の挑戦を受けて、叩きのめすという流れを作りたかったらしい。
ところがファンの反応は少し違った。小石川&鶴口と佐波&水橋の激しい攻防はプロレス復興の着火点になり、四人が四人とも支持され、一般世間にも名を知られるほど人気を誇るようになったのだ。おかげで、誰か一人を勝ち残らせるという“絵”を描きづらい状況ができてしまった。さらに、若手らの人気沸騰が、会社的には儲かるにしても、一選手としては面白くない実木は、二年ほど競わせて充分に利益を出したあと、この若手の競争を強引に終わらせた。実木が福田らベテランと手を組み、若い連中に軍団抗争を仕掛けた。いわゆる世代闘争である。片っ端から小石川ら若手四天王の挑戦を受けるのかと思いきや、軍団抗争という枠組みにかこつけて、来る日も来る日もタッグでぶつかり合う。先日まで競っていた若い面々のタッグはコンビネーションがいまいちで、ぎくしゃくとしてしまい、勝ち越せない。フラストレーションが募った段階で、実木がいよいよシングル戦に乗り出し、各個撃破していく。大まかな筋書きがあるとはいえ、実木の手の平の上で踊らされた格好になった若い面々は、単なる勝敗以上に格差を見せつけられてしまった。
「自信なさげな顔だな」
福田が声なき笑いの仕種をしながら言った。小石川に話を伝えにきた彼は、今では実木のボディーガード役としてリング内外で活躍している。
「自信がないと言うよりも、不安なんですよ、これは」
「ほう? 昔あれだけとんがっていた小石川拓人も、今やすっかりプロレスの上手な次期エースってことか、うん」
「そう、そこなんですよっ。次期エース、なんですかねえ」
小石川は苦笑を浮かべ、嘆息した。
次期エース候補と目されるようになってから五年余りで、トップクラスの仲間入りを果たした。“候補”が取れ、立派な次期エースの一人であるのは会社内でもファンからの評価でも間違いない。
イースタンプロレスのシングルのフラッグシップタイトルであるGPWF(グローバル・プロ・レスリング・フェデレーション)認定ヘビー級王座の載冠はまだ果たせていないが、世界王者に挑戦して引き分けに持ち込む程度には、実力を認められるようになっている。
団体のタッグタイトル、ナショナルタッグタイトルの方はすでに載冠経験が三度ある。一度目は、イースタンプロレスが新体制になってからの師匠であり社長でもある実木と師弟タッグを結成したときのもの。二度目の防衛に成功したあと、団体エースの実木がシングルに専念するためという名目で返上。直後、外人コンビとの王座決定戦には水橋と組んで出陣するも敗退。佐波と新コンビを結成して奪回に成功した。佐波と小石川のチームはライバル心がうまく作用し、名タッグとして高い評価を得て、連続防衛を重ねていく。いよいよ長羽と実木のコンビが持つ連続防衛記録に列ぼうかというとき、仲違いを演じて解散となった。無論、これは会社の方針で、団体ナンバーツーのタイトルとして用意されたナショナルヘビー級のベルトを、比較的若い連中で争う構図を作りたかったのだ。小石川は鶴口と、佐波は水橋とそれぞれ新コンビをなし、シングル・タッグ両面で競り合っていく。
後に明かされた実木社長の思惑としては、自分を追い掛けてくる若い選手同士で食い合いをさせ、実力・人気の両面で勝ち残った者一人の挑戦を受けて、叩きのめすという流れを作りたかったらしい。
ところがファンの反応は少し違った。小石川&鶴口と佐波&水橋の激しい攻防はプロレス復興の着火点になり、四人が四人とも支持され、一般世間にも名を知られるほど人気を誇るようになったのだ。おかげで、誰か一人を勝ち残らせるという“絵”を描きづらい状況ができてしまった。さらに、若手らの人気沸騰が、会社的には儲かるにしても、一選手としては面白くない実木は、二年ほど競わせて充分に利益を出したあと、この若手の競争を強引に終わらせた。実木が福田らベテランと手を組み、若い連中に軍団抗争を仕掛けた。いわゆる世代闘争である。片っ端から小石川ら若手四天王の挑戦を受けるのかと思いきや、軍団抗争という枠組みにかこつけて、来る日も来る日もタッグでぶつかり合う。先日まで競っていた若い面々のタッグはコンビネーションがいまいちで、ぎくしゃくとしてしまい、勝ち越せない。フラストレーションが募った段階で、実木がいよいよシングル戦に乗り出し、各個撃破していく。大まかな筋書きがあるとはいえ、実木の手の平の上で踊らされた格好になった若い面々は、単なる勝敗以上に格差を見せつけられてしまった。
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