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2-7.エース(仮)への道程 その2
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程なくして世代闘争も終了し、以前のような日本人vsガイジンの構図がまたしばらく続けられた。が、今年に入って実木が後継者の話を仄めかし始めて、また空気が変わる。イースタンプロレスでは例年春に、トップレスラー参加の総当たりリーグ戦を開催しており、これまで実木に勝った日本人選手はいなかった。それどころか若い世代の面々は、引き分けすらなかったのだが、今年は引き分けを連発。小石川以外の三人と引き分け、リーグ戦の優勝決定戦は、実木、佐波、水橋、鶴口によるトーナメントになった。結果はやはり実木の優勝で幕を閉じるのだが、世代交代を予感させる下地を作ったことになる。
その後の展開が急だった。リーグ公式戦戦で若手四天王の内、唯一、実木に負けた小石川のために、レールが敷かれたのだ。すなわち、実木への再挑戦を掲げて、佐波、水橋、鶴口に勝負を挑んで三たて。さらに、実木のGPWFタイトルにシリーズ最終戦でチャレンジが決定していた外人側エース格のレスラーにもクリーンフォール勝ちを収める。このため、最終戦はカード変更となり、実木&福田に小石川&鶴口が激突。ここで小石川が実木からフォールを奪うという金星を演出。一気に実木の対角線に立つ権利を確保した――させられたとも言えるが――のが現状。
とにもかくにも、次期シリーズでの実木との一騎打ちが決まったばかりだった。
「ここまでお膳立てをしておきながら、社長はまだ譲るつもりはさらさらないようで」
会社から示された筋書きでは、実木に挑むタイトル戦はこれまたドローだった。その後、外の世界に打って出るという名目で、実木は王座返上。若い世代同士で空尉となったタイトルを争う、というのが今後の流れとされた。
「若い連中で王座争いとなると、公平の観点から言っても、三たてにしたばかりのおまえさんは不利って訳だな」
「多分、そうなるんじゃないかと。悶々としているのに、そこにまたガチンコのアジアトーナメントだなんて、社長は何を考えているんだか……。自分には全然見当が付きやしない。不安になるのも無理ないでしょうが」
「ふふ。いくつか訂正してやらにゃいかんな」
意味ありげな笑い声を立てた福田を、小石川はまじまじと見返した。今、部屋には二人だけだが、第三者がいれば、小石川のこんな子供っぽい顔を見たことがなくて驚いたに違いない。
「訂正って……?」
「まず、ガチンコとおまえは言ったが、大昔にやったあれとはちょいと違うんだな。プロレスルールを守りさえすればいい何でもありじゃなくって、総合格闘技そのものに打って出るのさ」
「ええ? 何をまたそんな……」
馬鹿な真似をという言葉を飲み込む小石川。プロレスが達者になった分、プロレスとおいうジャンルが持つ(持っていた)最強幻想には、あまり執着しなくなった自分がいる――小石川は分かっていた。
「何をまたそんな、何だ?」
腹の内を見透かしたかのように、福田が尋ねてくる。小石川はその質問には答えず、考えを吐露する道を選んだ。
「ガチンコと聞いただけでも、時計の針を逆回しにするようなことをすると思いましたよ。それがまさか、完全なMMAの興行を開くなんて。当然、うちの誰かが出るんでしょうけど、ああいうのはそれ専用のトレーニングを一定以上の長期間積まないと、タイ打ちするのは難しいとしか」
「出るのは決まってるだろ、社長だよ」
「え……。じゃ、じゃあ、もしかして実木社長が言っている、外の世界云々ていうのは」
「おう、これのことよ。だからこそ、王座を返上するんだろうな。プロレスのてっぺんの選手が、MMAで負けちまったら、何やかやと都合が悪い。それは今も昔も一緒だ。かといって、さすがにおまえに負けたあと、MMAに出るというのはいまいち説得力がないと踏んだんだろう。プロレス界最強の看板を維持したまま、MMAをしたいんだよ、あの人は」
その後の展開が急だった。リーグ公式戦戦で若手四天王の内、唯一、実木に負けた小石川のために、レールが敷かれたのだ。すなわち、実木への再挑戦を掲げて、佐波、水橋、鶴口に勝負を挑んで三たて。さらに、実木のGPWFタイトルにシリーズ最終戦でチャレンジが決定していた外人側エース格のレスラーにもクリーンフォール勝ちを収める。このため、最終戦はカード変更となり、実木&福田に小石川&鶴口が激突。ここで小石川が実木からフォールを奪うという金星を演出。一気に実木の対角線に立つ権利を確保した――させられたとも言えるが――のが現状。
とにもかくにも、次期シリーズでの実木との一騎打ちが決まったばかりだった。
「ここまでお膳立てをしておきながら、社長はまだ譲るつもりはさらさらないようで」
会社から示された筋書きでは、実木に挑むタイトル戦はこれまたドローだった。その後、外の世界に打って出るという名目で、実木は王座返上。若い世代同士で空尉となったタイトルを争う、というのが今後の流れとされた。
「若い連中で王座争いとなると、公平の観点から言っても、三たてにしたばかりのおまえさんは不利って訳だな」
「多分、そうなるんじゃないかと。悶々としているのに、そこにまたガチンコのアジアトーナメントだなんて、社長は何を考えているんだか……。自分には全然見当が付きやしない。不安になるのも無理ないでしょうが」
「ふふ。いくつか訂正してやらにゃいかんな」
意味ありげな笑い声を立てた福田を、小石川はまじまじと見返した。今、部屋には二人だけだが、第三者がいれば、小石川のこんな子供っぽい顔を見たことがなくて驚いたに違いない。
「訂正って……?」
「まず、ガチンコとおまえは言ったが、大昔にやったあれとはちょいと違うんだな。プロレスルールを守りさえすればいい何でもありじゃなくって、総合格闘技そのものに打って出るのさ」
「ええ? 何をまたそんな……」
馬鹿な真似をという言葉を飲み込む小石川。プロレスが達者になった分、プロレスとおいうジャンルが持つ(持っていた)最強幻想には、あまり執着しなくなった自分がいる――小石川は分かっていた。
「何をまたそんな、何だ?」
腹の内を見透かしたかのように、福田が尋ねてくる。小石川はその質問には答えず、考えを吐露する道を選んだ。
「ガチンコと聞いただけでも、時計の針を逆回しにするようなことをすると思いましたよ。それがまさか、完全なMMAの興行を開くなんて。当然、うちの誰かが出るんでしょうけど、ああいうのはそれ専用のトレーニングを一定以上の長期間積まないと、タイ打ちするのは難しいとしか」
「出るのは決まってるだろ、社長だよ」
「え……。じゃ、じゃあ、もしかして実木社長が言っている、外の世界云々ていうのは」
「おう、これのことよ。だからこそ、王座を返上するんだろうな。プロレスのてっぺんの選手が、MMAで負けちまったら、何やかやと都合が悪い。それは今も昔も一緒だ。かといって、さすがにおまえに負けたあと、MMAに出るというのはいまいち説得力がないと踏んだんだろう。プロレス界最強の看板を維持したまま、MMAをしたいんだよ、あの人は」
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