その占いには裏がある、ない、どっち?

崎田毅駿

文字の大きさ
1 / 10

1.人生初告白は突然に

しおりを挟む
――今週の運勢――   by オリヴィエ 玖珂くが
 ……

☆獅子座(7/24~8/23)
<全体運>
 先週までの勢いがなくなり、低迷期に向かいつつあります。誰の協力も得ら
れない、そんな孤独感にさいなまれて、落ち込んでしまうかも。でも、きっと
あなたを支えてくれる人がどこかにいる。そう信じて、明るく頑張って。
<恋愛運>
 恋愛運は、とても盛り上がっています。と言っても全体運の方が下降気味な
ので、理想の相手はちょっと厳しいかもね。思いも寄らない異性から告白され
て、急に気になり始めちゃいそう。じっくり考えて、結論を出すのが吉よ。

 ……


 毎週、読んではいるけど、さほど気に留めていない占い。たかが少女雑誌のおまけのページ、そうそう当たるもんじゃない。と、気楽に考えてた。
 でも、今朝は違ってたみたい……。
島川しまかわさん」
 下駄箱のところで名前を呼ばれ、振り返ると、同じクラスの佐々木ささき君。
 今日の日直、私と佐々木君。男女別に、五十音順。
 早朝の学校は静かだ。日直でもない限り、自転車を飛ばしてまで、こんな時間には滅多に来ない。
「佐々木君も今?」
「ちょうどよかった。鍵、取って来るから待ってて」
 教室の鍵を職員室に取りに行くのが、日直の最初の仕事。二人一組で日直をやるせいで、行き違いになると結構、面倒なことになる。今朝はラッキー。
「お待たせ」
 鍵をちゃらつかせ、駆けてくる佐々木君。廊下、走ったらいけないんだぞ。
「ありがとう」
 私の隣まで来ると、ちょっとスピードを落とした佐々木君。横に並ぶのも何だから、私は遅れて進み出す。
「早く早く」
「急かさなくたって」
 相変わらず早歩きの佐々木君。何をそんなに急いでいるんだろ。
「待ってよ」
「早くしないと、みんなが来る」
「佐々木君て、日直の仕事、そんなに熱心だっけ?」
 おかしくなって、冗談を言ったつもり。
「熱心じゃないさ」
 先に教室前にたどり着いた佐々木君は、にぎやかな音をさせて、戸を開けた。
 彼の姿が教室内に消えたところで、私はやっと一つ手前の廊下にいた。
 何のために私を待たせていたのよ。なーんて。
 机の列を整える音がする。
「あっ、先に窓、開けない? ほこりっぽいじゃない」
 前の扉のところに立って、主張する。
 カーテンさえ開いていない教室は、中途半端に明るかった。というか薄暗い。
「じゃ、開けて。机並べるよりも楽でしょ」
「はいはい」
 鞄を自分の机に置いて、窓際に寄る。
「あのさあ、島川さん」
「何?」
 カーテンに手をかけようとしたら、また名前を呼ばれた。今朝、二度目。何だか気になる雰囲気が、彼の口調にあった。
「窓、開ける前に聞いてほしいんだけど……」
「だから何」
「……俺、島川さんのこと、好きなんだよな」
 自分の眉間にしわが寄っただろうな、このとき。
「は、はい?」
「聞こえなかった?」
 佐々木君は、眼鏡のずれを直して、もう一度その台詞を言いそう。
「い。聞こえたっ。聞こえたわ」
「そう」
 にっこり笑う彼。
「じゃあ、聞かせて。島川さんの気持ち」
「え……っと」
 突然言われて、何て答えればいいのやら。
 これまで何度か日直で一緒になったぐらいで、あとは……どうだっけ。そうだ、宿題を教えてもらったことも三度ぐらい――もっとかな?――あった。彼、クラスで一番成績いいもの。委員長に選ばれるぐらいだから、頼りになるし。だけど、好きかどうかなんて、考えたことなかった。
「断るなら、きっぱりどうぞ。気にしないから、俺」
「えっと、その……急」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

文芸部なふたり

崎田毅駿
キャラ文芸
KK学園の文芸部は、今日もゆるい部活動に勤しむ。1.同部では毎月テーマを決めて部員達による競作を催しており、今回の当番である副部長が発表したお題は、「手紙」。この題材をいかにして料理するか。神林アキラと神酒優人は互いに生のアイディアを披露し合って、刺激を受けるのを常としているのだ。

ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました

もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

[きみを愛することはない」祭りが開催されました~祭りのあと2

吉田ルネ
恋愛
出奔したサーシャのその後 元気かな~。だいじょうぶかな~。

化石の鳴き声

崎田毅駿
児童書・童話
小学四年生の純子は、転校して来てまだ間がない。友達たくさんできる前に夏休みに突入し、少し退屈気味。登校日に久しぶりに会えた友達と遊んだあと、帰る途中、クラスの男子数人が何か夢中になっているのを見掛け、気になった。好奇心に負けて覗いてみると、彼らは化石を探しているという。前から化石に興味のあった純子は、男子達と一緒に探すようになる。長い夏休みの楽しみができた、と思ったら、いつの間にか事件に巻き込まれることに!?

処理中です...