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1.人生初告白は突然に
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――今週の運勢―― by オリヴィエ 玖珂
……
☆獅子座(7/24~8/23)
<全体運>
先週までの勢いがなくなり、低迷期に向かいつつあります。誰の協力も得ら
れない、そんな孤独感にさいなまれて、落ち込んでしまうかも。でも、きっと
あなたを支えてくれる人がどこかにいる。そう信じて、明るく頑張って。
<恋愛運>
恋愛運は、とても盛り上がっています。と言っても全体運の方が下降気味な
ので、理想の相手はちょっと厳しいかもね。思いも寄らない異性から告白され
て、急に気になり始めちゃいそう。じっくり考えて、結論を出すのが吉よ。
……
毎週、読んではいるけど、さほど気に留めていない占い。たかが少女雑誌のおまけのページ、そうそう当たるもんじゃない。と、気楽に考えてた。
でも、今朝は違ってたみたい……。
「島川さん」
下駄箱のところで名前を呼ばれ、振り返ると、同じクラスの佐々木君。
今日の日直、私と佐々木君。男女別に、五十音順。
早朝の学校は静かだ。日直でもない限り、自転車を飛ばしてまで、こんな時間には滅多に来ない。
「佐々木君も今?」
「ちょうどよかった。鍵、取って来るから待ってて」
教室の鍵を職員室に取りに行くのが、日直の最初の仕事。二人一組で日直をやるせいで、行き違いになると結構、面倒なことになる。今朝はラッキー。
「お待たせ」
鍵をちゃらつかせ、駆けてくる佐々木君。廊下、走ったらいけないんだぞ。
「ありがとう」
私の隣まで来ると、ちょっとスピードを落とした佐々木君。横に並ぶのも何だから、私は遅れて進み出す。
「早く早く」
「急かさなくたって」
相変わらず早歩きの佐々木君。何をそんなに急いでいるんだろ。
「待ってよ」
「早くしないと、みんなが来る」
「佐々木君て、日直の仕事、そんなに熱心だっけ?」
おかしくなって、冗談を言ったつもり。
「熱心じゃないさ」
先に教室前にたどり着いた佐々木君は、にぎやかな音をさせて、戸を開けた。
彼の姿が教室内に消えたところで、私はやっと一つ手前の廊下にいた。
何のために私を待たせていたのよ。なーんて。
机の列を整える音がする。
「あっ、先に窓、開けない? ほこりっぽいじゃない」
前の扉のところに立って、主張する。
カーテンさえ開いていない教室は、中途半端に明るかった。というか薄暗い。
「じゃ、開けて。机並べるよりも楽でしょ」
「はいはい」
鞄を自分の机に置いて、窓際に寄る。
「あのさあ、島川さん」
「何?」
カーテンに手をかけようとしたら、また名前を呼ばれた。今朝、二度目。何だか気になる雰囲気が、彼の口調にあった。
「窓、開ける前に聞いてほしいんだけど……」
「だから何」
「……俺、島川さんのこと、好きなんだよな」
自分の眉間にしわが寄っただろうな、このとき。
「は、はい?」
「聞こえなかった?」
佐々木君は、眼鏡のずれを直して、もう一度その台詞を言いそう。
「い。聞こえたっ。聞こえたわ」
「そう」
にっこり笑う彼。
「じゃあ、聞かせて。島川さんの気持ち」
「え……っと」
突然言われて、何て答えればいいのやら。
これまで何度か日直で一緒になったぐらいで、あとは……どうだっけ。そうだ、宿題を教えてもらったことも三度ぐらい――もっとかな?――あった。彼、クラスで一番成績いいもの。委員長に選ばれるぐらいだから、頼りになるし。だけど、好きかどうかなんて、考えたことなかった。
「断るなら、きっぱりどうぞ。気にしないから、俺」
「えっと、その……急」
……
☆獅子座(7/24~8/23)
<全体運>
先週までの勢いがなくなり、低迷期に向かいつつあります。誰の協力も得ら
れない、そんな孤独感にさいなまれて、落ち込んでしまうかも。でも、きっと
あなたを支えてくれる人がどこかにいる。そう信じて、明るく頑張って。
<恋愛運>
恋愛運は、とても盛り上がっています。と言っても全体運の方が下降気味な
ので、理想の相手はちょっと厳しいかもね。思いも寄らない異性から告白され
て、急に気になり始めちゃいそう。じっくり考えて、結論を出すのが吉よ。
……
毎週、読んではいるけど、さほど気に留めていない占い。たかが少女雑誌のおまけのページ、そうそう当たるもんじゃない。と、気楽に考えてた。
でも、今朝は違ってたみたい……。
「島川さん」
下駄箱のところで名前を呼ばれ、振り返ると、同じクラスの佐々木君。
今日の日直、私と佐々木君。男女別に、五十音順。
早朝の学校は静かだ。日直でもない限り、自転車を飛ばしてまで、こんな時間には滅多に来ない。
「佐々木君も今?」
「ちょうどよかった。鍵、取って来るから待ってて」
教室の鍵を職員室に取りに行くのが、日直の最初の仕事。二人一組で日直をやるせいで、行き違いになると結構、面倒なことになる。今朝はラッキー。
「お待たせ」
鍵をちゃらつかせ、駆けてくる佐々木君。廊下、走ったらいけないんだぞ。
「ありがとう」
私の隣まで来ると、ちょっとスピードを落とした佐々木君。横に並ぶのも何だから、私は遅れて進み出す。
「早く早く」
「急かさなくたって」
相変わらず早歩きの佐々木君。何をそんなに急いでいるんだろ。
「待ってよ」
「早くしないと、みんなが来る」
「佐々木君て、日直の仕事、そんなに熱心だっけ?」
おかしくなって、冗談を言ったつもり。
「熱心じゃないさ」
先に教室前にたどり着いた佐々木君は、にぎやかな音をさせて、戸を開けた。
彼の姿が教室内に消えたところで、私はやっと一つ手前の廊下にいた。
何のために私を待たせていたのよ。なーんて。
机の列を整える音がする。
「あっ、先に窓、開けない? ほこりっぽいじゃない」
前の扉のところに立って、主張する。
カーテンさえ開いていない教室は、中途半端に明るかった。というか薄暗い。
「じゃ、開けて。机並べるよりも楽でしょ」
「はいはい」
鞄を自分の机に置いて、窓際に寄る。
「あのさあ、島川さん」
「何?」
カーテンに手をかけようとしたら、また名前を呼ばれた。今朝、二度目。何だか気になる雰囲気が、彼の口調にあった。
「窓、開ける前に聞いてほしいんだけど……」
「だから何」
「……俺、島川さんのこと、好きなんだよな」
自分の眉間にしわが寄っただろうな、このとき。
「は、はい?」
「聞こえなかった?」
佐々木君は、眼鏡のずれを直して、もう一度その台詞を言いそう。
「い。聞こえたっ。聞こえたわ」
「そう」
にっこり笑う彼。
「じゃあ、聞かせて。島川さんの気持ち」
「え……っと」
突然言われて、何て答えればいいのやら。
これまで何度か日直で一緒になったぐらいで、あとは……どうだっけ。そうだ、宿題を教えてもらったことも三度ぐらい――もっとかな?――あった。彼、クラスで一番成績いいもの。委員長に選ばれるぐらいだから、頼りになるし。だけど、好きかどうかなんて、考えたことなかった。
「断るなら、きっぱりどうぞ。気にしないから、俺」
「えっと、その……急」
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