2 / 10
2.二人目は隣
しおりを挟む
「きゅう?」
「急すぎる。考えさせてくれないと……」
「ああ。考えてくれるんだ? それだけでも嬉しくなっちまいそう、俺って」
またにっこり笑う。悪意のない顔してる。こっちはどっきんどっきんしてるのに。あ、何か暑いと思ったら、気温が高いんじゃなくて、顔が紅潮してるんだ、私。
「もう窓、開けていいよ」
そう言われたって、頭がぼーっとしてる。手、カーテンをつかんだまま、動かない。
「何やってんの。代わろうか」
すぐ側まで、佐々木君が来た。
「え! いや、いい。いいです。私、やる」
「だったら、俺、ごみを捨ててくる。ついでに黒板消しもはたいてくっか」
彼は黒板消し四つに加え、ごみ箱をついと抱えると、ばたばたと出て行った。
はぁ。何なのよ、もう……。
窓を開けると、風がふんわり、流れ込んできた。顔の火照りが冷やされていく感じ。
「占い、当たったのかな」
独り言を言ってると、廊下の方がまたばたばたと騒がしい。
もう帰って来ちゃったのかと、再び顔が赤らむ思い。うつむいてしまう。
ところが。
「島川?」
佐々木君の声じゃなかった。はっと顔を上げ、確認するために振り返った。
幸村。隣の席の幸村だった。
「な、何で」
すぐ横を向いた。顔が赤いの、見られたくない。
「何で、幸村が来るのよ?」
「俺が来ちゃおかしい? クラス替えされた記憶はないんだけどなあ」
「馬鹿」
「ひっでえ」
言いながら、幸村は入ってきた。サッカー部、朝練があったのか、水をかぶって頭が濡れてる幸村。
「馬鹿はないよなあ。俺、おまえの姿が見えたから、飛んで来たのに」
「ふざけないで。ほら、早く着替えてきなさいよ。部室の方でしょっ」
今は誰とも話をしたくなかった。でも、特にこの幸村とは。普段、馬鹿話ばっかりしてるから、気取られるかもしれない。
「何のために来たと思ってる?」
「わ、忘れ物でもしたんじゃないの!」
「はずれ。聞いて驚くな」
ふふん。そんな風に笑ったように見えた。
「二人っきりになれると思ったから来たんだよなあ、これが」
「……ど、どういう意味よ」
「俺がおまえを、すっごく好きだってこと」
「え――」
視界がくらくら揺れてきた。
「告白するのにいいチャンスだと思って……。おーい、聞いてる?」
気が付いたら、目の前で手を振られていた。
「ば、馬鹿。何やってんのよ!」
「いや、ほうけちゃってたから、おまえ」
「そんなことないわよっ。ええ、そんなことない」
「何、言い聞かせてんの。てことで、考えといて」
さっさと行ってしまいそうな風情の雪村。
「ちょ、ちょっと。言うだけ言って、逃げるの?」
「逃げるとは心外だよなあ。返事できる? 無理だろ? だから猶予をあげる訳よ。それに日直の相方――佐々木か? 佐々木が来るかもしれないしな。んじゃま、よーく考えてくれたまえ」
背中を向けて、片手を振りながら、幸村は教室を出て行った。
……とても疲れている私が一人、残された。
が、休む間もなく、今度は本当に佐々木君が戻って来た。
「ゴミ捨ての蓋、固くって参ったよ」
「そ、そう。ご苦労さま」
「堅苦しい言い方。ひょっとして、さっきのを気にしている?」
まだ窓を開けきっていない私を手伝いに、佐々木君が近寄ってきた。
「う、うん」
頭の中はパニック起こしてたけど、説明するのも変だから、ただ単にうなずいておく。
「返事、なるべく早く聞かせてほしいな」
佐々木君は無邪気な笑顔を、こちらに向けた。
「急すぎる。考えさせてくれないと……」
「ああ。考えてくれるんだ? それだけでも嬉しくなっちまいそう、俺って」
またにっこり笑う。悪意のない顔してる。こっちはどっきんどっきんしてるのに。あ、何か暑いと思ったら、気温が高いんじゃなくて、顔が紅潮してるんだ、私。
「もう窓、開けていいよ」
そう言われたって、頭がぼーっとしてる。手、カーテンをつかんだまま、動かない。
「何やってんの。代わろうか」
すぐ側まで、佐々木君が来た。
「え! いや、いい。いいです。私、やる」
「だったら、俺、ごみを捨ててくる。ついでに黒板消しもはたいてくっか」
彼は黒板消し四つに加え、ごみ箱をついと抱えると、ばたばたと出て行った。
はぁ。何なのよ、もう……。
窓を開けると、風がふんわり、流れ込んできた。顔の火照りが冷やされていく感じ。
「占い、当たったのかな」
独り言を言ってると、廊下の方がまたばたばたと騒がしい。
もう帰って来ちゃったのかと、再び顔が赤らむ思い。うつむいてしまう。
ところが。
「島川?」
佐々木君の声じゃなかった。はっと顔を上げ、確認するために振り返った。
幸村。隣の席の幸村だった。
「な、何で」
すぐ横を向いた。顔が赤いの、見られたくない。
「何で、幸村が来るのよ?」
「俺が来ちゃおかしい? クラス替えされた記憶はないんだけどなあ」
「馬鹿」
「ひっでえ」
言いながら、幸村は入ってきた。サッカー部、朝練があったのか、水をかぶって頭が濡れてる幸村。
「馬鹿はないよなあ。俺、おまえの姿が見えたから、飛んで来たのに」
「ふざけないで。ほら、早く着替えてきなさいよ。部室の方でしょっ」
今は誰とも話をしたくなかった。でも、特にこの幸村とは。普段、馬鹿話ばっかりしてるから、気取られるかもしれない。
「何のために来たと思ってる?」
「わ、忘れ物でもしたんじゃないの!」
「はずれ。聞いて驚くな」
ふふん。そんな風に笑ったように見えた。
「二人っきりになれると思ったから来たんだよなあ、これが」
「……ど、どういう意味よ」
「俺がおまえを、すっごく好きだってこと」
「え――」
視界がくらくら揺れてきた。
「告白するのにいいチャンスだと思って……。おーい、聞いてる?」
気が付いたら、目の前で手を振られていた。
「ば、馬鹿。何やってんのよ!」
「いや、ほうけちゃってたから、おまえ」
「そんなことないわよっ。ええ、そんなことない」
「何、言い聞かせてんの。てことで、考えといて」
さっさと行ってしまいそうな風情の雪村。
「ちょ、ちょっと。言うだけ言って、逃げるの?」
「逃げるとは心外だよなあ。返事できる? 無理だろ? だから猶予をあげる訳よ。それに日直の相方――佐々木か? 佐々木が来るかもしれないしな。んじゃま、よーく考えてくれたまえ」
背中を向けて、片手を振りながら、幸村は教室を出て行った。
……とても疲れている私が一人、残された。
が、休む間もなく、今度は本当に佐々木君が戻って来た。
「ゴミ捨ての蓋、固くって参ったよ」
「そ、そう。ご苦労さま」
「堅苦しい言い方。ひょっとして、さっきのを気にしている?」
まだ窓を開けきっていない私を手伝いに、佐々木君が近寄ってきた。
「う、うん」
頭の中はパニック起こしてたけど、説明するのも変だから、ただ単にうなずいておく。
「返事、なるべく早く聞かせてほしいな」
佐々木君は無邪気な笑顔を、こちらに向けた。
1
あなたにおすすめの小説
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
始まりはよくある婚約破棄のように
喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」
学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。
ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。
第一章「婚約者編」
第二章「お見合い編(過去)」
第三章「結婚編」
第四章「出産・育児編」
第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる