ベッド×ベット

崎田毅駿

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耳を揃えて戴きます

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「ビッツ、戦利品の回収をお願いします」
 無視して、ビッツに頼んだ。「合点、了解したよ」との返事がすぐに来た。もちろん、二人とも笑顔だ。
「ま、待て。ビッツ、待ってくれ」
「なぁに、ハルゲン? 文句でもあるのかな」
 銀の腕輪を手に取り、光にかざしてためつすがめつするビッツ。彼女の前で、ハルゲンは手を拝み合わせた。
「ま、負けは認めるよ、当然。だが、このままではわけが分からなくて、夜眠られそうにない。だから説明を頼むよ。どうしてあの耳は取り外すことができたんだ? まさかこの子は異世界の人間のように見えて、実際は違うのかい?」
「それは……言葉で説明しなくても、あれを見たら一発で理解できるんじゃない?」
 ちょうどネコ耳を拾っていたところにそんな声が届いたので、面を起こした。その弾みで、髪の毛に隠していたウサ耳がぴょんと立った。
「え、あれ……。どういうこと?」
 手を頬に宛がって、仕種が何だか女っぽくなっているハルゲン。
「ウサ耳は恥ずかしいから、せめてネコ耳に取り替えてほしかったけど、無理だと言われたから、ネコ耳を付けることでウサ耳を押さえ付けたらどうかなと。結構、うまく隠れていたみたいでよかったです」
「ということは、けものの耳を二つ付けると、一つは取り外しが自由に利くようになるのか!」
 ハルゲンはまた目を見開いて、興奮気味にビッツに確認した。
「うん、自分も知らなかったけれども、そうみたい。ああ、勘違いしちゃいけないよ。自由に外せるのは、あくまでもあとから付けた方のみ」
「なるほどなるほど。理解した」
 負けたというのに、理屈が分かって嬉しいのか、ハルゲンは妙にすっきりした表情になった。
 うーん、自分ならクレームの一つでも付けたくなる負け方だけど。たとえば、けものの耳を二つ付けてたんだからその両方とも外すのが勝利条件だろうと強弁できなくはない。それをしない、言い出さないのは、この世界の人はよほどギャンブルが身近にあって、日常生活に溶け込んでいるものとみえる。
 ギャンブルに対する純粋さや潔さみたいなものが感じられる気がした。それは強みになることもあれば、弱みにもなり得るに違いない。

 警察に出向くのは時刻を定められているわけではないけれども、早いに越したことはない。なので、リーベンデールの店の服に着替えて行きたかったのだけれども、選ぶ時間がない。着替えは断念し、数々の戦利品はひとまず店の方で預かってもらう形になった。
「お嬢さん、次の機会には、わしと勝負してくれるかな」
 ギャンブルの間中、店の奥で戦況を見守っていた主が去り際に言った。聞いてみると、やはりハルゲンの父親で、名をシルベス・リーベンデールといった。
「機会があればぜひ」
 本心ではギャンブルよりも、ごく当たり前の経済活動で物品を得たい。でも、ここは礼儀として受けておく。
 お礼も述べて、リーベンデールの店をあとにした。
「おまえさん、強いねー」
 むふむふ笑いがこらえきれないという風に、口元を押さえながらビッツが言った。
「さっきのは、ビッツの演技力込みだから。付け耳のルールのことで知らんぷりしてくれて」
「そりゃあまあ、協力はするわさ。何たってこっちにもメリットがあることなんだから。でなきゃ、もうちょっと中立に振る舞ったかもしんないよ」
 たとえ知り合いが関与していてもいつもいつも味方してくれるとは限らない、通常なら公平性を重んじるってことか。まあ、この世界の住人のギャンブルに対する考え方がそういうもんなんだろうなと理解しておこう。

 つづく
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