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第1章 とっても悪い魔王様
魔王様は宿敵と対峙する
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その日、魔王幹部は各々自らの持ち場にいたため城を離れており、ノアとルークは玉座の間で勇者への対抗策を話し合っていた。
「どうもー!勇者様のご登場でーす!」
その言葉にノアもルークも即座に戦闘態勢になる。
見れば玉座の前、まさにルークが勇者として訪れたその場所に、見覚えのある4人の仲間とその先頭には見覚えのない男がいた。
「貴様…ここがどこかわかってその台詞を吐いているのだろうな」
「ありゃ、まさかお兄さん魔王じゃない感じ?何してんだよロリ賢者ー、オレ結構ダサいことしちゃったじゃん」
「妾の魔力をほとんど使った転移魔術じゃ!間違ってなどおらぬ!その証拠にあやつは妾らが苦汁を飲まされた魔王本人じゃ!」
「なーんだ、やっぱりあんたが魔王なんじゃん。じゃあ自己紹介でもしろよなーオレ勇者様ぞ?」
「そうか、転移魔術か……。術者本人だけならまだしも全員引き連れてくるとは…。さすがに人間側の術者を侮っていたか」
最大の敵の前だというのに、勇者を名乗った男は楽しそうに自らの仲間と話し込んでいる。まさに強者の余裕といったそれに、ノアもルークも警戒を強めた。
「ノア様、あなたは僕の後ろへ…」
「いや、相手もそんな猶予は持たせてくれないみたいだな」
「さてと…オレ、面倒くさいことは極力したくない主義なんだけどさー、あの美人で巨乳な女神ちゃんが魔王を倒してくれって頼んでくるからさーやっぱり男として美人のお願いは断れないっつーか…てなわけで抵抗せずに殺されてくんね?」
「ふむ…そう言われて承諾するものがどこにいる?」
「だよなー。まあ仕方ねぇ、ハナから抵抗されるのなんて目に見えてたし。それじゃあまあ、オレのこれからの華々しい活躍の1ページにでもなってくれや!」
勇者が腰に下げた剣を抜く。しかしその構えは誰がどう見ても素人同然で、ノアはかすかな違和感を抱いた。
しかしその違和感を突き詰める前に勇者が襲いかかってきたため、とりあえずその違和感を頭の隅へと追いやる。
「タツヤ様が戦っているのです!私たちも加勢に…!」
「行かせません」
勇者の加勢に向かおうとする仲間たちの前にルークが立ちはだかる。
「あなたは…!私たちのことを覚えておられないのですか…!」
「洗脳されたって聞いてたけど、実際に見るとキツイもんがあるねぇ…」
「私たちは魔王を倒しに来た。あなたとは戦いたくない…」
「妾の魔力がもう少し残っていれば洗脳を解けたやもしれんのに…!」
今のルークにとって、目の前の女性たちはかつての旅の仲間ではなくノアの命を狙う敵でしかなかった。
「あなた方は、あの新しい勇者のことを『勇者様』とは呼ばないのですね」
「それは…タツヤ様は女神ルミエラ様に遣わされた神の使徒なのです。勇者よりもさらに尊い存在をその名では呼べないでしょう」
「そうですか…。僕のことを希望の象徴として祀りあげたのはあなたたちのくせに、なんとも勝手なことですね」
「なにを…!あなたもかつては女神ルミエラ様に選ばれるという幸運を賜ったのですよ!それだけでも喜ぶべきことでしょう!」
「幸運?そんなこと思ったことありませんよ。僕にとってあれは人生で最大の不運だった。けれど今では感謝しています。そのおかげで魔王様に…心から共にいたいと思える人に出会えることができたので。だから…魔王様の命を狙うのであれば、かつての仲間でも容赦はしません」
剣を抜き、その切先を向けたルークに彼女たちは一瞬たじろいだが、それぞれ自分の武器をルークに向けた。
「俺ちゃんのことも忘れてもらっちゃ困ルよォ♡」
その言葉と共に聖女の背後からメルトが姿を現す。その手に握られているのは大振りのナイフ。
メルトは躊躇なくそれを振り下ろしたが、ガキンッと何か固いものに阻まれたような音が響いた。
「きゃあ!」
「聖女様!大丈夫かい!?」
「ええ、大丈夫です…事前に防御の魔術を用意していましたから…」
メルトは反応した聖女や他の仲間からの攻撃を食らう前にルークの隣へとさっさと飛び退く。
「あなたは…遅いですよ!来るのが!」
「ごめーン♡俺ちゃんいなくても番犬クン1人でイケるかなぁって思ったんだけドォ、やっぱり俺ちゃんも遊びたくなっちゃっタ♡」
「全く…」
(勇者はきっとノア様がなんとかしてくれる。僕にできることは、1人でも多く戦闘ができないようにすること)
すぅっと呼吸を整え、目を閉じる。
次にルークが目を開いた時にはもう、その目に迷いはなかった。
「魔王様の側近、名はルークと申します。あなた方はこれより先には一歩も通しません」
「どうもー!勇者様のご登場でーす!」
その言葉にノアもルークも即座に戦闘態勢になる。
見れば玉座の前、まさにルークが勇者として訪れたその場所に、見覚えのある4人の仲間とその先頭には見覚えのない男がいた。
「貴様…ここがどこかわかってその台詞を吐いているのだろうな」
「ありゃ、まさかお兄さん魔王じゃない感じ?何してんだよロリ賢者ー、オレ結構ダサいことしちゃったじゃん」
「妾の魔力をほとんど使った転移魔術じゃ!間違ってなどおらぬ!その証拠にあやつは妾らが苦汁を飲まされた魔王本人じゃ!」
「なーんだ、やっぱりあんたが魔王なんじゃん。じゃあ自己紹介でもしろよなーオレ勇者様ぞ?」
「そうか、転移魔術か……。術者本人だけならまだしも全員引き連れてくるとは…。さすがに人間側の術者を侮っていたか」
最大の敵の前だというのに、勇者を名乗った男は楽しそうに自らの仲間と話し込んでいる。まさに強者の余裕といったそれに、ノアもルークも警戒を強めた。
「ノア様、あなたは僕の後ろへ…」
「いや、相手もそんな猶予は持たせてくれないみたいだな」
「さてと…オレ、面倒くさいことは極力したくない主義なんだけどさー、あの美人で巨乳な女神ちゃんが魔王を倒してくれって頼んでくるからさーやっぱり男として美人のお願いは断れないっつーか…てなわけで抵抗せずに殺されてくんね?」
「ふむ…そう言われて承諾するものがどこにいる?」
「だよなー。まあ仕方ねぇ、ハナから抵抗されるのなんて目に見えてたし。それじゃあまあ、オレのこれからの華々しい活躍の1ページにでもなってくれや!」
勇者が腰に下げた剣を抜く。しかしその構えは誰がどう見ても素人同然で、ノアはかすかな違和感を抱いた。
しかしその違和感を突き詰める前に勇者が襲いかかってきたため、とりあえずその違和感を頭の隅へと追いやる。
「タツヤ様が戦っているのです!私たちも加勢に…!」
「行かせません」
勇者の加勢に向かおうとする仲間たちの前にルークが立ちはだかる。
「あなたは…!私たちのことを覚えておられないのですか…!」
「洗脳されたって聞いてたけど、実際に見るとキツイもんがあるねぇ…」
「私たちは魔王を倒しに来た。あなたとは戦いたくない…」
「妾の魔力がもう少し残っていれば洗脳を解けたやもしれんのに…!」
今のルークにとって、目の前の女性たちはかつての旅の仲間ではなくノアの命を狙う敵でしかなかった。
「あなた方は、あの新しい勇者のことを『勇者様』とは呼ばないのですね」
「それは…タツヤ様は女神ルミエラ様に遣わされた神の使徒なのです。勇者よりもさらに尊い存在をその名では呼べないでしょう」
「そうですか…。僕のことを希望の象徴として祀りあげたのはあなたたちのくせに、なんとも勝手なことですね」
「なにを…!あなたもかつては女神ルミエラ様に選ばれるという幸運を賜ったのですよ!それだけでも喜ぶべきことでしょう!」
「幸運?そんなこと思ったことありませんよ。僕にとってあれは人生で最大の不運だった。けれど今では感謝しています。そのおかげで魔王様に…心から共にいたいと思える人に出会えることができたので。だから…魔王様の命を狙うのであれば、かつての仲間でも容赦はしません」
剣を抜き、その切先を向けたルークに彼女たちは一瞬たじろいだが、それぞれ自分の武器をルークに向けた。
「俺ちゃんのことも忘れてもらっちゃ困ルよォ♡」
その言葉と共に聖女の背後からメルトが姿を現す。その手に握られているのは大振りのナイフ。
メルトは躊躇なくそれを振り下ろしたが、ガキンッと何か固いものに阻まれたような音が響いた。
「きゃあ!」
「聖女様!大丈夫かい!?」
「ええ、大丈夫です…事前に防御の魔術を用意していましたから…」
メルトは反応した聖女や他の仲間からの攻撃を食らう前にルークの隣へとさっさと飛び退く。
「あなたは…遅いですよ!来るのが!」
「ごめーン♡俺ちゃんいなくても番犬クン1人でイケるかなぁって思ったんだけドォ、やっぱり俺ちゃんも遊びたくなっちゃっタ♡」
「全く…」
(勇者はきっとノア様がなんとかしてくれる。僕にできることは、1人でも多く戦闘ができないようにすること)
すぅっと呼吸を整え、目を閉じる。
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🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
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