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第1章 とっても悪い魔王様
元勇者はこの世界をーー。
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「やったぜ!オレ大勝利ー!やっぱ勇者は必ず勝つようになってんだなー!」
「さすがです!タツヤ様!」
「うむ、あっぱれじゃったぞ!」
「お前、やる時はやるんだな!見直したぜ!」
「タツヤ様、すごい…!」
手元には豪奢な黒のローブ。
持ち主は暑いし重くて邪魔だと文句を言っていた。
「女神ちゃんに頼んでおいて聖剣とかいうやつの形変えといてもらってよかったわー!おかげでそれらしい物持ってれば簡単に騙されてやんの!いやーこれが人間の高度な知恵ってやつ?」
「銃…?でしたよね?確かタツヤ様の故郷の武器だとか」
「そーそー、剣なんかよりも間合いが取れて、魔術なんかよりも即座に確実に殺せる最強の武器!剣とか重くて持つのも無理だし!あんなの振り回せとか無理無理!」
あぁ…耳障りだ。
何もかもが。
「んで?この後はどーすんの?」
「とりあえず一旦は国へ帰ることになります。魔王は倒したので、この場所もいずれ人間の統治下に入るでしょう」
「へー、んじゃあオレここ欲しい!一国一城の主とか良くね?魔王倒したわけだしそれくらいのご褒美プリーズ!」
「ぷり……?え、えぇ…構いませんよ。最初から魔王を倒したあかつきにはタツヤ様には報奨金や褒美を渡すつもりでしたから」
「まじぃ!?やった!これでオレも王様かぁー!」
ここは魔族の王、魔王の城。
その城主が変わる…?
他でもない、魔王を殺した張本人に?
「とりあえず帰るとすっかー!あー!さっさとひとっ風呂浴びてー!」
「私も、故郷に行きたい…」
「妾は魔術院じゃの!さっそく魔族の領土特有のものを使って実験を始めねばならん!」
「私も神殿に報告に行かねばなりません。タツヤ様の活躍は女神ルミエラ様もさぞお喜びとなるでしょう」
「まあ?オレの手にかかればこんなんチョロいもんよ!あ、なーなーコイツどうすんの?」
勇者も、勇者の連れてきた仲間も。
ここに来なければ、こうはならなかった。
ノア様が死ななくても良かった。
「あぁ…その方はタツヤ様が来る前の元勇者です。しかし今となっては自ら魔王に寝返った背信者。洗脳にかかっていればそれを解除して連れてくるように、と仰せつかっていましたが、自らの意思だったとなれば別。ここに捨て置いても構わないでしょう」
「ふーん…元勇者くん、ねぇ…」
目の端に黒髪の男のニヤついた顔が見える。
いつの日か僕を誘拐した奴らのような。
いや、それよりももっと醜悪で邪悪な笑みを浮かべた顔。
「なぁなぁ元勇者くん、今どんな気持ち?オレに手柄を取られてくやしーって感じ?あいにくオレが強すぎたせいで魔王が簡単にやられちまってさ。お前の出る幕奪っちまって、ごめんなぁ」
「………」
「あ、てかお前現地人かよ。こっちでは珍しいその黒髪、オレと同郷かと思ったのに。なーんだ、つまんねぇの」
ここは魔族の領土。
人間は立ち入ってはならない地。
「あ、てか今度からここのお城オレのものになるんでよろしく」
ここは魔族の王、魔王の城。
唯一の我らが王のための城。
「いやー、突然無職で放り出すのもちょっとはオレの良心が痛むけどさ、オレの城に男とかいらねぇわけよ」
僕の主、ノア様の城。
「てなわけでちゃちゃっと荷物まとめよろしくーーッ!」
この場所を、ノア様を。
これ以上汚させてなるものか。
何もないのに宙に吊り上げられる勇者の身体。本人はまるで陸に上げられた魚のように、苦しそうに体を痙攣させている。
「がは…ッ…は…だ、だずけて…」
「タツヤ様…!あなた…一体何をしているのかわかっているのですか!」
「ここは、魔王の城。魔王でもないお前たちには不相応なものだ。それに、僕はノア様のように優しくなんてない」
地面の大理石は割れ、地割れが剥き出しになる。全てのガラスが粉々に砕け散り、全てのランプの炎が揺らいで消えた。
吊るされていた勇者はべしゃりと地面に投げ捨てられ、その姿をルークは冷たく見下ろした。
「お前たちには死すらも生ぬるい。生きてその罪を償ってもらう」
「罪…?何をふざけたことを言っているのですか!私たちは罪などなにも…!」
「本当に心当たりがないのならその首が落ちるまでそう叫んでいればいい。今この場でお前たちを殺すのは容易いが、せいぜいみっともなく国に逃げ帰り、その足でその口で伝えろ。『新たな魔王が現れた』と。そして少しずつ人間の領土が削られていく様を震えて見ているといい」
「そん、な…」
床に打ち付けられたのは禍々しい漆黒のオーラを放つ剣。勇者がもつものを聖剣とするならば、それはまさしく『魔剣』といえる姿だった。
黒のローブを羽織った少年は玉座の前で叫んだ。
「我が名は『魔王』!お前たち人間の敵となり復讐を遂げるものだ!」
「さすがです!タツヤ様!」
「うむ、あっぱれじゃったぞ!」
「お前、やる時はやるんだな!見直したぜ!」
「タツヤ様、すごい…!」
手元には豪奢な黒のローブ。
持ち主は暑いし重くて邪魔だと文句を言っていた。
「女神ちゃんに頼んでおいて聖剣とかいうやつの形変えといてもらってよかったわー!おかげでそれらしい物持ってれば簡単に騙されてやんの!いやーこれが人間の高度な知恵ってやつ?」
「銃…?でしたよね?確かタツヤ様の故郷の武器だとか」
「そーそー、剣なんかよりも間合いが取れて、魔術なんかよりも即座に確実に殺せる最強の武器!剣とか重くて持つのも無理だし!あんなの振り回せとか無理無理!」
あぁ…耳障りだ。
何もかもが。
「んで?この後はどーすんの?」
「とりあえず一旦は国へ帰ることになります。魔王は倒したので、この場所もいずれ人間の統治下に入るでしょう」
「へー、んじゃあオレここ欲しい!一国一城の主とか良くね?魔王倒したわけだしそれくらいのご褒美プリーズ!」
「ぷり……?え、えぇ…構いませんよ。最初から魔王を倒したあかつきにはタツヤ様には報奨金や褒美を渡すつもりでしたから」
「まじぃ!?やった!これでオレも王様かぁー!」
ここは魔族の王、魔王の城。
その城主が変わる…?
他でもない、魔王を殺した張本人に?
「とりあえず帰るとすっかー!あー!さっさとひとっ風呂浴びてー!」
「私も、故郷に行きたい…」
「妾は魔術院じゃの!さっそく魔族の領土特有のものを使って実験を始めねばならん!」
「私も神殿に報告に行かねばなりません。タツヤ様の活躍は女神ルミエラ様もさぞお喜びとなるでしょう」
「まあ?オレの手にかかればこんなんチョロいもんよ!あ、なーなーコイツどうすんの?」
勇者も、勇者の連れてきた仲間も。
ここに来なければ、こうはならなかった。
ノア様が死ななくても良かった。
「あぁ…その方はタツヤ様が来る前の元勇者です。しかし今となっては自ら魔王に寝返った背信者。洗脳にかかっていればそれを解除して連れてくるように、と仰せつかっていましたが、自らの意思だったとなれば別。ここに捨て置いても構わないでしょう」
「ふーん…元勇者くん、ねぇ…」
目の端に黒髪の男のニヤついた顔が見える。
いつの日か僕を誘拐した奴らのような。
いや、それよりももっと醜悪で邪悪な笑みを浮かべた顔。
「なぁなぁ元勇者くん、今どんな気持ち?オレに手柄を取られてくやしーって感じ?あいにくオレが強すぎたせいで魔王が簡単にやられちまってさ。お前の出る幕奪っちまって、ごめんなぁ」
「………」
「あ、てかお前現地人かよ。こっちでは珍しいその黒髪、オレと同郷かと思ったのに。なーんだ、つまんねぇの」
ここは魔族の領土。
人間は立ち入ってはならない地。
「あ、てか今度からここのお城オレのものになるんでよろしく」
ここは魔族の王、魔王の城。
唯一の我らが王のための城。
「いやー、突然無職で放り出すのもちょっとはオレの良心が痛むけどさ、オレの城に男とかいらねぇわけよ」
僕の主、ノア様の城。
「てなわけでちゃちゃっと荷物まとめよろしくーーッ!」
この場所を、ノア様を。
これ以上汚させてなるものか。
何もないのに宙に吊り上げられる勇者の身体。本人はまるで陸に上げられた魚のように、苦しそうに体を痙攣させている。
「がは…ッ…は…だ、だずけて…」
「タツヤ様…!あなた…一体何をしているのかわかっているのですか!」
「ここは、魔王の城。魔王でもないお前たちには不相応なものだ。それに、僕はノア様のように優しくなんてない」
地面の大理石は割れ、地割れが剥き出しになる。全てのガラスが粉々に砕け散り、全てのランプの炎が揺らいで消えた。
吊るされていた勇者はべしゃりと地面に投げ捨てられ、その姿をルークは冷たく見下ろした。
「お前たちには死すらも生ぬるい。生きてその罪を償ってもらう」
「罪…?何をふざけたことを言っているのですか!私たちは罪などなにも…!」
「本当に心当たりがないのならその首が落ちるまでそう叫んでいればいい。今この場でお前たちを殺すのは容易いが、せいぜいみっともなく国に逃げ帰り、その足でその口で伝えろ。『新たな魔王が現れた』と。そして少しずつ人間の領土が削られていく様を震えて見ているといい」
「そん、な…」
床に打ち付けられたのは禍々しい漆黒のオーラを放つ剣。勇者がもつものを聖剣とするならば、それはまさしく『魔剣』といえる姿だった。
黒のローブを羽織った少年は玉座の前で叫んだ。
「我が名は『魔王』!お前たち人間の敵となり復讐を遂げるものだ!」
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