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第2章 隠居に成功(?)した魔王様
魔王様は初めて愛を伝える
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「腰が痛いぃ…喉も痛いぃ…ルークうぅ……」
「途中で止めるのは嫌だとおっしゃって無理をされたのはノア様でしょう。メルトから貰ってきた特別な薬ならありますよ。なんでもありとあらゆる外傷に即効性があるそうです。その代わり、この世のものとは思えないくらい苦いらしいですけれど」
「嫌だぁ……」
「それなら仕方ないですね。効き目は遅いですが普通のお薬と温かい紅茶で我慢してください」
「飲むぅ……」
「お砂糖とミルクはいつもより多めで入れておきますね」
翌朝、ノアは無事にベッドの上で屍になっていた。夜通し喘いだ喉はガラガラになり、腹の中には未だに何かが入っているような気がするし、腰も痛い。生まれたての子鹿のようになった足では上手く立つことすらできず、薬が効くまで出発を延ばすことになった。
「ごめんなぁルーク…お前の仕事もあるのに色々させて…」
「今の僕は魔王補佐兼側近ですから。ノア様より優先する事項なんてありませんよ」
ノアが意識を飛ばしている間にサラサラになっていたシーツに包まると、少し体温よりもひんやりしたそれが心地よくてまた眠ってしまいそうになる。
なんとなく起きる気にもなれなくて、ゴロゴロだらだらとベッドの上を移動していたが、ふとルークの方を見るとちょうどベッドの周りに脱ぎ散らかされた服や靴を片付けているところだった。
ボトムスだけを身につけたその姿は昔のような幼さは無く、大人の男として仕上がったものだった。
(俺の知らない間にこんなに大きくなってるんだもんなぁ…。年齢的は俺から見ればまだまだ子供だけど…もうそんなことは言えないかもしれない…。あ、あれって…)
ふとルークが後ろを向いた際に、その広い背中につけられたいく筋ものの赤い傷が目に入る。自分の知らない間に怪我でもしたのかとノアは首を傾げた。
「なぁ、ルーク。俺の知らない間に怪我でもしたのか?」
「怪我…ですか?ここ最近は戦闘もほとんどありませんし、怪我らしい怪我はしていないはずですが…」
「いや…背中に何かにひっかかれたみたいな傷があるから、ちょっと気になっただけなんだけど…痛くはないのか?」
そこまで言うと、ルークは合点が言ったようにうんうんと何度も頷いた。その行動に意味のよくわかっていないノアはますます困惑顔になる。
「あぁ、それはいいんですよ。名誉の勲章というものです」
「名誉の勲章?背中の傷が?」
「なにしろ愛する人が必死に自分を求めてくれたが故の傷なのですから。これを喜ばずして何になります?」
その言葉の意味を理解すると同時に、ノアは急に顔を真っ赤にしてシーツに隠れてしまった。
「うぅー…お、お前…それ早く治せよ!」
「嫌です。せっかくノア様からいただいたものなのですから、時と共に消えてしまうまではこのままにしておきます。ですが…僕としては消える前にまた付けていただきたいですね」
「そ、それは…要相談ってことで…」
「それでは、その時はまたご相談させていただきますね。それよりも…そろそろあなたの可愛らしいお顔を見せてくださらないのですか?」
ぎしりとベッドが音を立てて傾き、ルークが腰掛ける気配がする。ノアはしばらくの間固まった後、シーツから顔だけをそろそろと出した。
それを狙い澄ましたかのようにノアの額には口づけが落とされる。
「ふふっ出てきていただいてありがとうございます。それに痕という意味ではノア様の方が多いと思いますよ?」
今はシーツには隠れているものの、ノアの身体には傷痕すら気にならないほどに赤い痕が全身に付けられていた。
「こ、これはまぁ…痛くはないし…。ルークに付けられたものだから…」
「途中から付けて欲しいと強請っておられましたからね」
「は、恥ずかしいこと思い出させるなよ!間違ってはないけど…。そ、それと…ルーク!」
顔は依然真っ赤なままで顔だけしか出ていない状態だったが、ノアはまっすぐとルークの瞳を見つめた。
「お、俺もお前のこと…あ、あ…あぅ……ぁぃ…してる……から…。その、これからも…よろしく頼む………」
消え入りそうな声だったが、どうやらちゃんとルークの耳には届いていたらしい。ルークは笑みを浮かべるとシーツごとノアを抱き締めた。無言で視線が合うと、自然と唇が重なる。
穏やかな日差しの中、2人は離れる時間を惜しんで睦み合っていた。
「途中で止めるのは嫌だとおっしゃって無理をされたのはノア様でしょう。メルトから貰ってきた特別な薬ならありますよ。なんでもありとあらゆる外傷に即効性があるそうです。その代わり、この世のものとは思えないくらい苦いらしいですけれど」
「嫌だぁ……」
「それなら仕方ないですね。効き目は遅いですが普通のお薬と温かい紅茶で我慢してください」
「飲むぅ……」
「お砂糖とミルクはいつもより多めで入れておきますね」
翌朝、ノアは無事にベッドの上で屍になっていた。夜通し喘いだ喉はガラガラになり、腹の中には未だに何かが入っているような気がするし、腰も痛い。生まれたての子鹿のようになった足では上手く立つことすらできず、薬が効くまで出発を延ばすことになった。
「ごめんなぁルーク…お前の仕事もあるのに色々させて…」
「今の僕は魔王補佐兼側近ですから。ノア様より優先する事項なんてありませんよ」
ノアが意識を飛ばしている間にサラサラになっていたシーツに包まると、少し体温よりもひんやりしたそれが心地よくてまた眠ってしまいそうになる。
なんとなく起きる気にもなれなくて、ゴロゴロだらだらとベッドの上を移動していたが、ふとルークの方を見るとちょうどベッドの周りに脱ぎ散らかされた服や靴を片付けているところだった。
ボトムスだけを身につけたその姿は昔のような幼さは無く、大人の男として仕上がったものだった。
(俺の知らない間にこんなに大きくなってるんだもんなぁ…。年齢的は俺から見ればまだまだ子供だけど…もうそんなことは言えないかもしれない…。あ、あれって…)
ふとルークが後ろを向いた際に、その広い背中につけられたいく筋ものの赤い傷が目に入る。自分の知らない間に怪我でもしたのかとノアは首を傾げた。
「なぁ、ルーク。俺の知らない間に怪我でもしたのか?」
「怪我…ですか?ここ最近は戦闘もほとんどありませんし、怪我らしい怪我はしていないはずですが…」
「いや…背中に何かにひっかかれたみたいな傷があるから、ちょっと気になっただけなんだけど…痛くはないのか?」
そこまで言うと、ルークは合点が言ったようにうんうんと何度も頷いた。その行動に意味のよくわかっていないノアはますます困惑顔になる。
「あぁ、それはいいんですよ。名誉の勲章というものです」
「名誉の勲章?背中の傷が?」
「なにしろ愛する人が必死に自分を求めてくれたが故の傷なのですから。これを喜ばずして何になります?」
その言葉の意味を理解すると同時に、ノアは急に顔を真っ赤にしてシーツに隠れてしまった。
「うぅー…お、お前…それ早く治せよ!」
「嫌です。せっかくノア様からいただいたものなのですから、時と共に消えてしまうまではこのままにしておきます。ですが…僕としては消える前にまた付けていただきたいですね」
「そ、それは…要相談ってことで…」
「それでは、その時はまたご相談させていただきますね。それよりも…そろそろあなたの可愛らしいお顔を見せてくださらないのですか?」
ぎしりとベッドが音を立てて傾き、ルークが腰掛ける気配がする。ノアはしばらくの間固まった後、シーツから顔だけをそろそろと出した。
それを狙い澄ましたかのようにノアの額には口づけが落とされる。
「ふふっ出てきていただいてありがとうございます。それに痕という意味ではノア様の方が多いと思いますよ?」
今はシーツには隠れているものの、ノアの身体には傷痕すら気にならないほどに赤い痕が全身に付けられていた。
「こ、これはまぁ…痛くはないし…。ルークに付けられたものだから…」
「途中から付けて欲しいと強請っておられましたからね」
「は、恥ずかしいこと思い出させるなよ!間違ってはないけど…。そ、それと…ルーク!」
顔は依然真っ赤なままで顔だけしか出ていない状態だったが、ノアはまっすぐとルークの瞳を見つめた。
「お、俺もお前のこと…あ、あ…あぅ……ぁぃ…してる……から…。その、これからも…よろしく頼む………」
消え入りそうな声だったが、どうやらちゃんとルークの耳には届いていたらしい。ルークは笑みを浮かべるとシーツごとノアを抱き締めた。無言で視線が合うと、自然と唇が重なる。
穏やかな日差しの中、2人は離れる時間を惜しんで睦み合っていた。
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