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走る
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雄太は走った。とにかく走った。走る中でも、考えないようにしていたことがどんどんと出てきてしまう。
もし、このまま別れてしまうなんてことになったらどうしよう。このままじゃ、喧嘩したまま、理不尽にキレたままお別れになちゃう。感謝の一言も言えてないのに。ごめんなさいの一言も言えてないのに。
走っている筈なのに、家までの道が雄太には余りにも長く感じる。赤信号が無限に続くように感じる。
走る。とにかく走る。がむしゃらに走る。
もう嫌だった。推しの時と同じ後悔はしたくなかった。
母ちゃんと、もっと、思い出を作りたい。
ふと見上げると、家についていた。
急いで扉を開ける。靴を脱ぎ捨て、家に入っていく。部屋から出てきた父ちゃんが出てきた。
「母ちゃんは! 大丈夫なのか!」
「雄太、まずはリビングに行きなさい」
雄太は、言われた通りリビングに向かった。リビングの扉を開ける。
先ずはじめに飛び込んできたのは、美味しそうな料理の匂いだった。そして楽しそうな鼻歌。雄太にとって聞きなれた鼻歌だった。音の元に目を向ける。
そこには、母の姿があった。
「もう! 遅い! でも、私が倒れたって言っただけで三分で帰って来るなんてすごいわね? もしかして帰ってた?」
にこにこと笑いながら、自分のことを待っててくれた。そこにいるのは、いつも通りの母ちゃんの姿だ。
雄太はそのことが何よりも嬉しくて、そして心の底から安心して。
雄太の目には大粒の涙で溢れていた。
「雄太ごめんなさい? そんなに驚かせたかしら? もしかして、なんかつらいことでもあったの?」
それを聞かれた瞬間、雄太はダムが決壊したかのように話し出した。母はそれをしっかりと聞いてあげていた。
推しが死んじゃったこと。最初は訳が分かんなくて、不安になって、心の制御ができなかったこと。ホントに死んだって理解したとき、もっと思い出を作りたいって思ったこと。とりとめもないことまで全部話した。
最後に母さんに伝えたいことがある、と雄太は母さんに言った。
「お母さん。朝喧嘩したの、謝れてなかったから」
「うん」
「お母さん、ごめんなさい。いつもありがとう」
失わずに気付けて良かった。
もし、このまま別れてしまうなんてことになったらどうしよう。このままじゃ、喧嘩したまま、理不尽にキレたままお別れになちゃう。感謝の一言も言えてないのに。ごめんなさいの一言も言えてないのに。
走っている筈なのに、家までの道が雄太には余りにも長く感じる。赤信号が無限に続くように感じる。
走る。とにかく走る。がむしゃらに走る。
もう嫌だった。推しの時と同じ後悔はしたくなかった。
母ちゃんと、もっと、思い出を作りたい。
ふと見上げると、家についていた。
急いで扉を開ける。靴を脱ぎ捨て、家に入っていく。部屋から出てきた父ちゃんが出てきた。
「母ちゃんは! 大丈夫なのか!」
「雄太、まずはリビングに行きなさい」
雄太は、言われた通りリビングに向かった。リビングの扉を開ける。
先ずはじめに飛び込んできたのは、美味しそうな料理の匂いだった。そして楽しそうな鼻歌。雄太にとって聞きなれた鼻歌だった。音の元に目を向ける。
そこには、母の姿があった。
「もう! 遅い! でも、私が倒れたって言っただけで三分で帰って来るなんてすごいわね? もしかして帰ってた?」
にこにこと笑いながら、自分のことを待っててくれた。そこにいるのは、いつも通りの母ちゃんの姿だ。
雄太はそのことが何よりも嬉しくて、そして心の底から安心して。
雄太の目には大粒の涙で溢れていた。
「雄太ごめんなさい? そんなに驚かせたかしら? もしかして、なんかつらいことでもあったの?」
それを聞かれた瞬間、雄太はダムが決壊したかのように話し出した。母はそれをしっかりと聞いてあげていた。
推しが死んじゃったこと。最初は訳が分かんなくて、不安になって、心の制御ができなかったこと。ホントに死んだって理解したとき、もっと思い出を作りたいって思ったこと。とりとめもないことまで全部話した。
最後に母さんに伝えたいことがある、と雄太は母さんに言った。
「お母さん。朝喧嘩したの、謝れてなかったから」
「うん」
「お母さん、ごめんなさい。いつもありがとう」
失わずに気付けて良かった。
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