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ぼっちー世界の声を集める!?
395日目:風の回廊、見えない賑わい
しおりを挟む異世界に転移したらぼっちでした~観察者ぼっちーの日常~
395日目:風の回廊、見えない賑わい
こんばんは、ぼっちーです。
積み石の道を越え、いよいよ山脈の懐(ふところ)へと入っていきます。
標高が上がり、周りの植生も背の高い木から、低木や苔類へと変わってきました。
そして、この辺り特有の地形なのか、両側を高い崖に挟まれた細い一本道――まるで「回廊」のような場所に出ました。
崖が喋る場所?
「……ねえ、ぼっちー。さっきから、誰かとお話ししてる?」
フードの中から顔を出したモフが、不思議そうに耳をそばだてています。
もちろん、ここにはぼくたちしかいません。
しかし、耳を澄ませてみると、確かに聞こえるのです。
「ザワザワ……」「ヒソヒソ……」「ワハハ……」
それは風の音なのですが、ただの風切り音ではありません。
岩肌の複雑な凸凹や、無数に開いた小さな穴に風が通り抜けることで、まるで大勢の人が会話しているような、不思議な雑音(ノイズ)を生み出しているのです。
「すごい。ここは『音の交差点』みたいだ」
目を閉じると、どこか遠くの街の市場にいるような、あるいは祭りの後のような、懐かしい賑わいの中にいる錯覚に陥ります。
空腹の空耳、あるいは遠くの記憶
「ぼっちー! あっちから『ジュージュー焼ける音』と『いただきます!』って声が聞こえるよ!」
モフは相変わらず、風の音の中から「食」に関する周波数だけを器用に拾い上げています。
でも、今日ばかりは、それを単なる空腹の幻聴と笑い飛ばせません。
この風は、どこから吹いてきたのでしょうか。
あの「石壁の街」の熱気を含んでいるのかもしれませんし、もっと遠くの、名前も知らない村の笑い声を運んできたのかもしれません。
岩肌が反響させる音は、風が旅してきた場所の「記憶の再生」のようにも思えます。
「……うん。確かに、楽しそうな声に聞こえるね」
ぼくもモフの言葉に同意しました。
姿は見えなくても、世界中のどこかで、誰かが美味しいものを食べて笑っている。
そんな当たり前の幸せが、この風を通じて伝わってくる気がしたからです。
風の贈り物
しばらく風の音に聞き入っていると、強風と共に、崖の上から何かがヒラヒラと舞い落ちてきました。
それは、透き通るような薄い羽を持つ、見たこともない植物の種でした。
「わっ! きれいな羽根!」
モフがジャンプしてキャッチします。
種は風に乗って、遠い場所からこの回廊を通って運ばれてきたのでしょう。
「この種も、旅をしてきたんだね」
モフは種をそっと地面の苔の上に置きました。
「ここなら、フカフカで気持ちいいよ。ゆっくり休んでね」
風は音だけでなく、小さな命や、次の季節へのバトンも運んでいます。
この回廊は、ただの通り道ではなく、世界中の「何か」が行き交う、大切な血管のような場所なのかもしれません。
今日のまとめ
* 両側を崖に挟まれた「風の回廊」に入った
* 岩肌が風を反響させ、人々の話し声のような不思議な音を聞いた
* 風の音が運ぶ「見えない賑わい」に、遠くの世界との繋がりを感じた
* 遠くから飛んできた種を、モフが優しく迎えた
目に見えるものだけが全てじゃない。
耳を澄ませば、この世界はこんなにも豊かな「声」で満たされているんですね。
ぼっちー今日のひとこと
「風の音が『おかえり』と言ってくれている気がして、知らない場所なのに実家のような安心感がありました」
プロフィール
* 名前:ぼっちー(風の音に含まれる様々な感情や記憶に思いを馳せ、耳を澄ます観察者)
* 相棒:モフ(風の中に「ご馳走の気配」を感じ取りつつ、旅する種に場所を譲った優しい相棒)
* 今日の記録:風の回廊/自然の会話音/風の記憶/飛来する種
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