異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g

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ぼっちー冒険記作家になる!?

258日目:新しい“読者”との出会い

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異世界に転移したらぼっちでした~探検者ぼっちーの日常~

258日目:新しい“読者”との出会い


こんばんは、ぼっちーです。

昨日、ぼくははじめて“出版契約”というものを交わしました。
旅の記録を誰かに“伝える”という選択をして、
印刷工房で“著者印”までいただいて、モフにはおやつ券が出ました(なぜ!?)。

正直、まだ実感がわかないです。
だって、ぼくの書いたものを“読む人”が、本当にいるなんて――。

……そんな気持ちで今日も工房を訪れたぼくに、
さっそく、その“読む人”との出会いが待っていたのです。


ちいさな来訪者

「もふー……(訳:今日のベルガルドは、ちょっと肌寒いね)」

「そうだね。あ、でも手袋まではいらないかな。モフ、風邪ひかないように――」

「……あのっ!あのっ……ぼっちーさん、ですか……!?」

びっくりして振り返ると、そこにいたのは、
両手で大事そうにノートを抱えた、小さな女の子でした。たぶん10歳くらい。

栗色の髪、まるい眼鏡、そしてちょっと大きめのマント。
工房の受付の人が「待ってたよ」と言って、ぼくに向けてにっこり。

「え、あ、ぼく……ですけど……?」

「わぁ……ほんとに、いた……!モフさんも、ほんとに、いる……!」

「もふぅ?(訳:知り合い?)」

どうやら彼女は、印刷工房の試し刷り用に配布されたぼくの旅記録(抜粋版)を読んで、
「この人に会いたい!」と思って、ひとりでここまで来たんだそうです。

名前は、リネアちゃん。

町の北区画にある“小さな記録学校”に通っていて、
将来の夢は“冒険記録士”になることなんだって。


“読み手”がいるということ

リネアちゃんは、ノートを開きながら一生懸命話してくれました。

「ぼっちーさんが、森で寝袋をなくしたときの話、すっごく好きで……!
あの“落ち葉のベッド”の描写、何回も読みました!」

「わ、わあ……そんなに……?」

「それで……私も、記録を書いてみたんです!」

そこには、子どもらしい字で書かれた、彼女自身の“冒険ごっこ”の記録がありました。

空想のダンジョン、石でできたドラゴン、校庭の木を“聖なる樹”と呼んで、
仲良しの猫と一緒に探検する話。ページのすみには、猫のイラストつき。

「これ……すごくいい。世界が見えるっていうか、ちゃんと旅してる感じがするよ」

「ほんとに……!? ぼっちーさんにそう言ってもらえるなんて、夢みたい……!」

なんていうか、
“記録する”って、ぼくにとっては自分のための行為だったんです。

でも、“誰かが読んでくれる”ことで、
その記録が“誰かの夢になる”ことがあるんだな、って……初めて思いました。

「もふもふっ(訳:ぼっちー、目がちょっとうるうるしてるよ)」

「し、してないよ!ちょっと風が目に入っただけ!」


伝わることの重さと喜び

「……ぼっちーさん、あの、“水の遺跡”って、ここのことですか?」

リネアちゃんが差し出したのは、ぼくが前に書いた“水の神殿跡”の挿絵。

「えっ、よく分かったね……!」

「うちの学校、遠足でそこに行ったことがあるの。
でも、ぼっちーさんの記録を読んだら、“違う場所”みたいに感じて……!」

ああ、そうか。
同じ場所でも、“誰かの目”を通して見ると、こんなにも違って見えるんだ。

そして、ぼくの記録が、その子の目に“違う風景”を届けてる。

それって――

「すごいことだ……」

自分が書いたものが、“だれかの旅になる”こと。
それが、こんなにも温かいなんて、思ってもいませんでした。


モフ、まさかのサイン会(?)

「ねえ、モフさん……これ、サインくださいっ!」

「もっふ!?(訳:ぼく!?え!?)」

リネアちゃんはノートのすみっこに、モフの肉球スタンプをお願いしてきて――

「モフ、それおやつじゃないよ!インクだからね!?」

「もふぅん……(訳:いっちょやってやるか)」

結果、モフの“サイン”はちょっと斜めにずれた肉球スタンプになりました。
でも、リネアちゃんは大喜び。
「一生の宝物ですっ!!」って、何度もお礼を言って帰っていきました。


ぼっちー今日のひとこと

「“書く人”の向こうには、“読む人”がいて――その距離が、物語になるんだ」


プロフィール

・名前:ぼっちー(初めての読者に出会った探検者)
・相棒:モフ(肉球サイン職人として覚醒)
・今日の記録:ちいさな読者/届ける記録/読む人の世界


次回は
リネアちゃんとの出会いに刺激を受けて、モフがまさかの提案!?
「ぼくも記録書く!モフの冒険記!」
いや、文字書けたっけ!? まさかの展開、モフの冒険記出版プロジェクト、始動……?
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