転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi

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11章 アレクシアと波乱のお披露目会

閑話 蛇は豆に翻弄される①出会い編

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辺り一面を見渡しても全てが真っ暗闇だ。

母親である阿修羅を中心に、魔国や獣人国、そしてエルフ族が協力した連合軍によって封印された“破滅の邪蛇神”。反撃する余力はあったが、もう暴れ回るのも疲れたしそろそろ眠りにつくのもいいかなとあえて封印された。

“穢れた子”“破滅をもたらす禍の子”と生まれた時から言われ続け、誰も近寄らず、蔑みの目を向けられ続けた。母親の阿修羅だけは普通に接してくれたが、兄弟達からは壮絶な虐待を幼い頃から受けていた。

ある日、唯一自分を怖がらずに懐いてくれた大切な友達である子犬のポンタを目の前で無惨に殺されてしまった時、何かがプツンと切れる音がした。そして気づいた時には、東国の大半が半壊している壮絶な光景であった。

これは自分がやったのか?何故兄が血塗れで転がっているのか?

疑問に思っていると、顔面蒼白の母親が自分に駆け寄って抱きしめた。だが、不安や恐怖という感情よりも何故か怒りが込み上げてきてどうしようもない。

そして思った。

“破壊すればいいんだ”と。




何万回目になるのか、昔の事を思い出して乾いた笑みを浮かべていた時だった。

「何やってんでしゅか?」

聞こえるはずがない幼子の声に驚いて目を開けると、あり得ない事に眩い光が差し込んでいた。

「⋯⋯今、幼子の声がしたと思ったが⋯気のせいか?それにこの光は⋯!?」

「ここにいましゅよ!失礼なやちゅだ!⋯⋯あんた誰でしゅか?」

声がした下の方を見ると、漆黒の髪をお団子にした真紅の瞳の幼い女の子がこちらを見て立っていた。派手な赤い着物が印象的だが、今はそれどころじゃない。

「何で封印が解かれたんだ?」

この封印は母親である阿修羅しか解けないはずなのに、目の前にいる幼子が破かれた封印札を持っていた。視線に気付いた幼子はスッと封印札を後ろに隠して口笛を吹いているが、残念な事に鳴っていない。

「お前は何者なんだ?お前が⋯封印を解いたのか?」

「あたちはアリアニャ!あちゅらばあから逃げてたらおもちろそうな部屋があったから入って⋯⋯紙を破りまちた!」

悪びれる事なく、何故かドヤ顔で報告するアリアナという幼子に呆れてしまう。

「はあ??」

「おお!アリアナよ!ここにおったか⋯ってここなんかやばくない?」

そこへやって来たのは幼子と同じような派手な老人だが、気配すら感じなかったので驚く。

「ミル爺!大変でしゅ!あたち、ふーいんを解いちゃいまちた!!」

アリアナが破れた封印札をミル爺と呼ばれた派手な老人に見せた。

「これは“破滅の邪蛇”を封印していた⋯。アリアナ、綺麗に伸ばしてまた貼るんじゃ!」

「“しょーこいんめちゅ”でしゅね!!」

お馬鹿な会話を聞いていた“破滅の邪蛇”だが、そこへ母親である阿修羅が複数人の兵と共に駆け込んできた。そして自分と目が合い息を呑む母親と、恐怖で震えている兵達。その場が緊迫した空間に⋯ならなかった。

「母⋯上?その眉毛はどうしたんですか?俺が封印されている間にそれが流行ったんですか?」

気の強い美人だった母親の眉毛が信じられないくらい太くなっていたのだ。何を話そうか迷っている暇もなく笑いが込み上げるのを必死に抑えていた。

「これは⋯そうだわ!おちび!出てきな!よくもこんな眉毛にしたわね!?」

白髪を一本に纏め、紫色の瞳は宝石のように綺麗な見た目が三十代くらいの美女、阿修羅がミルキルズの背後に隠れたアリアナを見つけて怒りをぶつける。紫の着物を着て、髪には豪華な髪飾りを身につけているその姿は物凄い高貴な身分の者だとすぐに分かる。

「ばあ、綺麗でしゅよ⋯⋯ぷっ」

「笑ってるでしょうがああーー!!」

幼子を追いかけ回す母親を見て、開いた口が塞がらない。激しい性格は昔のままだが、東国の女王である母親がこんなにも取り乱す事など今まで無かった。今も封印から目覚めた“破滅の邪蛇”をまるっと無視して、幼子を追いかけ回している。

「一体何があったんだ?」

「“破滅の邪蛇”、わしの曾孫が封印を解いてしまった。また暴れ回るのか?それとも大人しくまた封印されるか?」

派手な老人、ミルキルズが自分に問いかける。

(暴れるか⋯。どうせまた蔑まれ、恐れられるだけだ。ここは大人しく封印されるか)

ミルキルズは穏やかな話し方だが、母親である阿修羅よりも強いのだろうと何となくだが感じられた。

「ああ、封印してくれ」

「何ででしゅか?せっかく自由になったんでしゅよー!」

アリアナが自分に近づいてきてそう問いかけた。

「俺はたくさん悪い事をしたんだ。皆にも嫌われてる。俺が封印されればこの国は平和なんだ」

「あたちもたくさん悪戯して怒られてましゅよ!⋯⋯はっ!?あたちもふーいんされちゃいまちゅ!」

アリアナの言葉に、”破滅の邪蛇“と呼ばれる夜叉は苦笑いする。

「お前は封印されない。俺はたくさんの人を傷つけたんだ。実の兄も殺した。でも後悔はしていない」

何故か幼子であるアリアナに夜叉がぽつりぽつりと本心を話し始めた。

「⋯⋯。本当の親はあたちを殺そうとしまちた。でもジジイがたちゅけてくれまちた!」

「この爺さんか?」

「違いまちゅ!もっと若いジジイでしゅ!」

「⋯⋯?」

夜叉は意味が分からず、横にいるミルキルズに説明を求める視線を送った。

「ああ、わしの孫の事じゃ!この可愛いアリアナを助けて、今はこうして一緒に竜の里で暮らしてるわい!」

「竜!?⋯⋯あんたは竜族か?」

「そうでしゅよ!ミル爺は偉い爺さんなんでちゅ!あたちは人族でしゅが”最強の悪童“って呼ばれてましゅ⋯⋯どういう意味かわからないでしゅがカッコいいから良いでしゅ!!」

ミルキルズが答える前に、アリアナがドヤ顔で話し始めた。

「”最強の悪童“じゃと!?そんな可愛いものじゃないわ!!”最悪の悪魔“じゃ!この馬鹿娘が!!」

阿修羅がアリアナの首根っこを掴み怒り心頭だった。

「シャーーー!!!」

「威嚇しても無駄じゃ!」

「ガオーーー!!!」

「咆哮(ほうこう)も無駄じゃ!!」

馬鹿な言い合いをする阿修羅とアリアナだが、ミルキルズはそんな曾孫を微笑ましく見守っている。

「ミル爺!たちゅけて!あちゅらばあを食べてちまいなちゃい!」

「えー?わしにも好みが⋯」

「この馬鹿者どもが!全く!」

アリアナがミルキルズにあり得ない事を言い、ミルキルズもそれに応えようとするので、阿修羅は頭を抱えてしまう。兵士達も相手が竜族なので動こうにも動けずにいた。

「あんたの名前は何でしゅか!」

「あ、ああ。夜叉だ」

いきなり自分に話しかけてきたアリアナに対して、何故か素直に答えてしまう。

「この国が嫌いでしゅか?」

「⋯⋯ああ。嫌いだ。大嫌いだ!」

夜叉の心からの叫びを、阿修羅はただただ黙って聞いていた。

「じゃあ、あたちの”シャテー“になりまちゅか?」

「シャテー?⋯⋯⋯まさか舎弟の事か?」

「だからそう言ってましゅよ!お馬鹿なやちゅだ!」

「⋯⋯⋯」

辛辣な言葉だが、何故か不愉快にならない。

「あちゅらばあ!やちゃはあたちがシャテーにしゅる!!文句があるならかかってこいでしゅ!」

そう言って急いでミルキルズの背後に隠れるアリアナ。阿修羅が何も言わない代わりに兵士達が騒ぎ始めた。

「何を勝手な事を!そいつは天災だぞ!?」

「天才?⋯⋯そんな風には見えまちぇんが⋯?」

「この姿を見ろ!悍ましいあの目も褐色の肌も東国に生まれた忌子の証だ!」

兵士の叫びに、夜叉は悔しくても本当の事で何も言えない。アリアナも夜叉をじっと見つめている。居た堪れなくてまた封印を頼もうと思った時だった。

「この目の何が悪いんでしゅかー?悪の親玉みたいでかっこいいでしゅ!あ、でもぼちゅ(ボス)はあたちでしゅよ!」

アリアナは何気なく言ったかもしれないが、夜叉は自分が涙を流していることに気付いたのだった。



そして夜叉は小さな恩人アリアナに救われたのだ。


その後の話はまたいつか⋯






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