転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi

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10章 アレクシアと愉快な仲間2

ダジル伯爵の困り事①

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「む。何がおかしいんだ?」

絶対零度のルシアードが我が儘三人娘を鋭い視線で睨み付けた。

「「「あ⋯も⋯申し訳ございません!」」」

ガタガタと震えながら平伏す三人は、失神寸前であった。皇帝陛下をこんなに間近で見たことが無かったが、背筋が凍るほどの威圧感に今にも押し潰されそうであった。

「父上、結婚前の小娘達を怖がらせたら可哀想でしゅよ。このままでは男性不信になっちまいましゅ」

「小娘って⋯ちんちくりんが何を言ってるんだ?」

アレクシアの発言に呆れるアランカルト。

「む。嫌がらせをされたんじゃないのか?」

「こやつらはシアの舎弟でしゅ!!」

何故かドヤ顔のアレクシア。

「「「えー!?」」」

「何か文句があるんでしゅか!我が儘三人娘!首スパーン!か舎弟!のどちらかでしゅよ!!」

「「「舎弟!でお願いします!!」」」

三人はアレクシアに向けて綺麗に一礼した。

「空気が読める子達じゃな!」

「⋯中庭にいる者達、これに用ですか?」

ミルキルズがそんな三人に感心しているが、アランカルトは気になっていた事を素直に口にした。

「だからこれって失礼でしゅね!あとでボコボコにしましゅ!」

プンスカと怒るアレクシアだが、中庭いる者達の存在には気付いていた。だが、敵意も無く、逆にアレクシアを心配しているような感じだったのであとで声をかけようと思っていた。

皇帝であるルシアードが中庭にいるダジル伯爵と品のある貴婦人に視線を移した。気付いてはいたが、明日謁見する予定だったので敢えて声をかけなかったが、アレクシアが彼らの方へ歩いて行くので仕方無しに後を追った。

ダジル伯爵と貴婦人はこちらにやってくるアレクシアとルシアードを見て、急いで跪いた。

「「ルシアード皇帝陛下、アレクシア皇女殿下」」

「謁見は明日のはずだが、何故皇宮にいるんだ?」

ルシアードの堂々とした風格と威圧感に、一気に緊張感が漂う。

「は!ローランド公爵にお会いしたくお待ちしておりました」

「兵をどのくらい派遣できるかなどをご相談したく⋯勝手な行動を取り申し訳ございません」

話を聞いていたアレクシアが二人の前までやって来た。

「兵とは物騒でしゅね?魔物でもでまちたか?それとも賊でしゅか?」

「む。確か一人の男が暴れていると書状には書いてあったな」

「はい。一人なのですが、とてつもなく強く⋯我が領の兵士達では全く歯が立たずにこうして皇宮に救援を求めに参った所存です」

ダジル伯爵の切羽詰まった訴えに、貴婦人も深く頷いていた。

「魔物も逃げ出してしまうくらい恐ろしい男です。それにおかしな事を言い⋯町民の子供を人質にしているので下手に動けない状況です」

「子供を人質でしゅと!?何て卑怯な!!子供は無事なんでしゅか!?」

「はい。危害を加えるどころか我が子のように扱っていて⋯」

貴婦人の説明を聞いたアレクシアはルシアードを見た。

「子供が心配でしゅ!父上、ここの領地へ転移できましゅか?」

「ダジル領には何度か行った事があるから大丈夫だ」

ルシアードの転移で行けると分かりアレクシアはすぐに動き出した。

「よし!ささっと行って解決しましゅよ!ミル爺にアランカルト!行くぞーー!!」

「おお!わしも手伝うぞ!」嬉しそうなミルキルズ。

「はぁ⋯」溜め息しか出ないアランカルト。

「父上は駄目でしゅよ!ロイン伯父上を止める役目がありましゅ!」

「何故だ!お前一人で何かあったらどうするんだ!」

「⋯⋯。この二人がついていて何かあると思いましゅか?」

「⋯⋯」

何も言えなくなるルシアード。

そんなルシアードを見ていたダジル伯爵は、ルシアードの例の噂が本当だったと認めざるを得なかった。このやり取りを見ていたらアレクシア第四皇女を溺愛しているのは誰が見ても明らかだった。

「すぐに帰って来ましゅから皆を足止めしてて下しゃいな!」

「む。どうすればいいんだ?」

「うんちが長引いているって言って下しゃい!」

「む。わかった」

それを聞いていた我が儘三人娘と貴婦人はやはり我慢ができずに吹き出してしまった。

「あ、我が儘三人娘は解散でしゅ!また遊びましょう!」

アレクシアの満面の笑顔に、我が儘三人娘も笑顔になりそして頷いたのだった。



「じゃあ、行って来ましゅ!」

「あの、兵はどうなったんでしょうか?アレクシア様と執事だけですか?」

不安で仕方がないダジル伯爵達はルシアードに訴える。

「ああ、俺や兵が行かなくても三人で十分だ。行けば分かる」

ルシアードがそこまで言うので、これ以上何も言えない二人は不安が拭えないまま領地に帰る事となった。

「俺が転移で連れて行く」

ルシアードがそう言いながら準備に入る。

「帰りはシアが転移で皇宮に戻りましゅ!」

「あ⋯アレクシア皇女は転移魔法が使えるのですか!?」

驚くダジル伯爵。

「あい。普通でしゅよ」

アレクシアの答えに開いた口が塞がらないダジル伯爵となぜかルシアードがドヤ顔をしていた。

そしてアレクシア達はルシアードの転移魔法でダジル領へ向かったのだった。



アレクシアは一瞬の浮遊感と眩い光に慣れているが、ダジル伯爵と貴婦人は少しふらつき、目を開けるとそこは慣れ親しんだ我が領地だった。ルシアードはアレクシアに追い立てられ惜しみつつも皇宮に戻って行った。

「で、その男はどこにいるんでしゅか?」

「森の奥にある狩猟小屋に立て籠っています。この領地に来た時は気の良い男でした。ですが、人質にとった子供を見た瞬間に人が変わったようになってしまった。その子の名はサナなのですが急に“アリアナ”と呼び出して⋯」

ダジル伯爵の話を聞いたアレクシア、ミルキルズ、アランカルトは衝撃を受けた。

「ア⋯アリアナって言ってるんでしゅか?」

「ええ、それに意味不明な事を言い出して⋯“俺は竜族だ”“アリアナは里に帰すんだ”とずっとそればかり」

「竜族で今いないのは一人だけじゃ」ミルキルズが考え込む。

「ええ、彼の方じゃないですか?」アランカルトも分かっているみたいだ。

「ダジル伯爵、今しゅぐに連れて行って下しゃい!」

涙を流しているアレクシアの姿に驚きながらも、ダジル伯爵と貴婦人は森へと案内する。

「弱いが気配はする。かなり弱っているのう⋯邪竜化が進んでいるからかもしれん。わしと同じじゃ⋯自分を弱らせて邪竜化を防いでいるんじゃな。だが、その子を見て一気に邪竜化が進んだんじゃ」

「ええ、彼の方はアリアナを我が子のように可愛がっていましたからね。死に目に遭えずに酷く落ち込んでましたから、旅に出ると聞いた時は遂におかしくなったのかと思いましたが⋯死ぬつもりだったんですね」

「馬鹿でしゅ!ロウ爺やロウリヤしゃん、孫のロウだっているのに⋯うぅ⋯うわーーん」

泣き出したアレクシアをミルキルズが抱きしめる。アランカルトは黙ったまま二人を見つめていた。

泣き止まないアレクシアを抱っこしたミルキルズとアランカルトは、未だに訳がわからず困ったままのダジル伯爵の案内で沢山の兵が囲んでいる狩猟小屋に到着したのだった。




















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