皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi

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三章 小蘭(シャオラン)の活躍

いざ狩りへと出発します!①

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あの災難から数日後、皇帝主催の狩りの日がやって来た。

小蘭(シャオラン)は白風(バイフォン)と共に朝早くから“龍護宮”内の皇帝陛下の執務室前に立っていた。まだ女官長である揚揚(ヨウヨウ)や宦官である顔太監もいない夜明け三時だ。

皇帝付きの従者や近衛兵士達は朝方に現れた女官を怪訝そうに見ていたが、二人の横にいる人物に気付いた瞬間に何も言えなくなる。

「こんなに早く父上に何の用だ?」

第二皇子である龍麒(ロンキ)が小蘭に問うが、龍麒も小蘭に無理矢理起こされたのだ。正式には子猫姿の天ちゃんにだが。

『ニャ~』

龍麒に抱っこされている天ちゃんはと言うと気持ち良さそうに眠っていた。

「早く起こして早く出発するのよ!」

「「⋯⋯」」

小蘭が興奮気味に宣言するのを、ただただ呆れて見ている龍麒と白風。

騒ぎに気付いたのか、執務室から徹夜で政務を行っていた皇帝陛下である龍飛(ロンフェイ)と大長秋である高青(コウラン)が出てきた。

「お前⋯まだ三時だぞ?」

「楽しみで眠れないとは⋯子供ですか?」

呆れた表情で小蘭を見ていた二人は、ここで待たせるわけにもいかずに取り敢えず三人を中へ入れた。

「あ、他の人もすぐに来るよ!」

小蘭の言葉に、白風も苦笑いしか出ない。

「他のだと?聞きたくないが⋯誰の事だ?」

龍飛が恐る恐る聞こうとした時だった。外が騒がしくなり、扉が開いたと思ったら皇帝の許可なく続々と大物達が入って来たのだ。

「小蘭、来たぞ」

緑州王、緑光海(リョク・コウカイ)は小蘭しか見えていないようにやって来た。まるで皇帝である竜飛や第二皇子の龍麒などはいないとばかりの態度に怒り以上に呆れるしかない。

「小蘭は朝早いですね~?」

黒州王、黒麗南(コク・レイナン)は大事な姪のはた迷惑な行為を何故か誉めていた。その背後から白州王の嫡男である英雄白風雷(ハク・フウライ)と、青州王の嫡男である英雄青栄樹(セキ・エイキ)もやって来たのを見てもはや苦笑いしか出ない龍飛と高青。

「皆んな!今日から三日間頑張るぞ!!」

元気に宣言した小蘭は頭を抱える龍飛を机に連れて行き、執務を早く終わらせるように横で煽り始めた。

「早く!皆んな集まってくれたのに執務が終わらないなんて駄目でしょ!?」

「お前が勝手に集めたんだろう!?こっちは寝ずの執務なんだ!全く⋯」

ブツブツ言いながらも手を止めさせてくれない鬼畜な小蘭を、微笑みながら見守る周りを見て龍飛は諦めるしかなかった。高青は女官に指示して王達や龍麒の為にお茶を準備していた。

それで呼ばれた女官長である揚揚(ヨウヨウ)や顔(ガオ)太監は、勢揃いした王達や第二皇子を見て一気に緊張感が高まり、一緒にいた皇帝付きの女官達も滅多に無い王達の勢揃いに冷や汗が出ていた。が、皆の視線はすぐに皇帝陛下の横にいる女官に向けられた。

「そこ間違えてる!」

「ああ?⋯⋯まさかお前に訂正されるとは、俺も疲れてるんだな」

「⋯⋯。それ私を馬鹿にしてる?」

「⋯⋯」

皇帝陛下の執務机の横に座り、不敬にも何やら文句を言っている姿に怒りを通り越して呆れてしまう揚揚や女官達だが、王達や龍麒は何も言わずに出されたお茶を飲みながら談笑している。この空間がとても異様に感じる揚揚は顔太監に視線を向けるが、あからさまに逸らされてしまった。

「全く!本当に集まってるわ!!」

そこへ現れたのは第二皇女である蓉花(ヨウホワン)だった。文句は言っているが、どこか嬉しそうだ。そんな蓉花が小脇に抱えているのは第三皇子である龍朱(ロンシュウ)であった。

「父上ー!皆様ー!おはようございます!!」

小脇に抱えられていても人一倍元気な龍朱は、物怖じせずに父親である龍飛に駆け寄って行く程には慣れてきたのだ。

「おー!蓉花と龍朱か!!お前達も朝早くに起こされたのか!?」

嬉しそうに手を振る龍飛だが、小蘭が無理矢理に筆を持たせて催促していた。

「手は動かして!」

「⋯⋯」

そんな父親を見て不憫に思う蓉花だが、面倒ごとに巻き込まれたく無いのでスルーするというスキルを覚えた。龍朱は嬉しいそうに小蘭に抱きついたが、それを見ていた緑光海の顔が険しくなる。

「将来的に詰んどくべきか?」

「怖い事を言わないでよね!?天使ちゃんを傷つけたらあんたを天ちゃんの餌にするから!」

『ニャ~?』

小蘭の発言に“不味そうだから嫌だ”と言ってそうな天ちゃんの鳴き声に気付いた龍朱は目を輝かせて近づいて行く。龍麒の膝で眠っている天ちゃんに興味津々だった。

「うわー!猫さんだー!」

そんなまったりした空間で、揚揚だけは信じられない光景を見ていた。第二皇女の蓉花が傲慢で我が儘なのは有名な話で、父親である皇帝にも兄である龍麒にも疎まれて孤立していたはずだ。なのに馬へ乗る練習をするのをきっかけにガラリと人が変わったのだ。それは第三皇子である龍朱も同じだった。臆病でいつもビクビクしていた幼子が、今は物怖じしない性格になり蓉花とも龍麒とも仲が良くなっていた。

(この数日で一体何があったの⋯やはりあの女官が関わっているはずよ)

「あ、そう言えば父⋯紅州王は?寝坊ですか?」

「寝坊ってお前⋯まだ四時だぞ?」

小蘭の発言に苦笑いする龍飛だが、一番にやって来そうな紅州王が顔を見せていない事を気にはなっていた。





「父上!私も連れて行って下さいませ!!」

屋敷を出てこうとした紅州王こと紅司炎は、長女である紅星花(コウ・セイファ)に引き止められていた。紅司炎の背後には家令である葉雲(イエウン)が控えていて苦笑いを浮かべていた。

母親似の庇護欲を掻き立てるような儚げな顔立ちで、茶色がかった黒髪を地味に纏めて、身軽に動けそうな軽装をしていた。そんな彼女は今、父親である司炎に狩りへの参加を願い出ていた。皇帝主催の狩りには名門貴族はこぞって参加するので、有能な殿方も当たり前に参加する。

紅家は毎年参加していなかったが、今年は何故か参加を表明していた。紅家以外にも黒家や白家、緑家も参加していなかったが今年は参加を表明して貴族間では大騒ぎであった。青家は参加していたが、嫡男である英雄青栄樹の参加は今までなかった。

「麗蘭も参加すると母上から聞きましたわ!ならば姉である私も参加していいはずです!馬にも乗れますし、狩りも得意です!」

「あの女⋯余計な事を⋯。参加するのはいいが、一つ条件がある。麗蘭に関わるな、そして話しかけるな。いいな?」

「⋯⋯はい。」

冷たい視線のまま星花に吐き捨てるように言い放つと、時間を無駄にしたと言いながら屋敷を後にしたのだった。星花は今までの儚げな様子が嘘のように顔を歪ませて近くにあった花瓶を思いっきり割った。

(麗蘭⋯絶対に許さない!戦場で死ねばよかったのに!!)

そんな星花を冷たい視線で見つめる複数の人影があった。

「相変わらず憎たらしい小娘だな。狩りで麗蘭様に何かするつもりかもな」

「なら今すぐに殺しちゃいますか?司炎様も別に何も言わないだろ!」

「止めておけ。あんな女、殺す価値もない」

其々に見目が麗しい三人の男達だが、周りからは見えていない様だった。皇族と言っていいほどに気品ある男、野生的な雰囲気が魅力的な男、冷静沈着な貴族風の男。三人は人間離れした美貌と、霊気を漂わせていた。


遅れてやって来た紅司炎と共に、四時半には皇宮の正門前に集まり準備している。皇帝陛下が現れたのもあるが、五大名家が勢揃いしている光景は圧巻で貴族達の緊張は半端無いものであった。貴族達は一斉に跪き、皇帝陛下や王達を出迎えた。

「楽にしてよい。各自準備をしてくれ」

皇帝の一言で貴族達は準備を始めた。そして皇帝付きの女官である小蘭はというと、早速だが厳つい黒馬に軽々と乗り背中には愛用の弓を背負っていた。その横では第二皇女である蓉花もここ数日で仲良くなった赤馬に乗っているが緊張しているのかいつもの元気が無い。

「蓉花様!いつもの意地悪い感じがないですね!」

「な!相変わらず失礼ね!!今日は殿方に負けないくらい狩って狩って狩りまくるわよ!!」

「わーい!楽しみだなー!」

一番元気で嬉しそうな第三皇子の龍朱は小蘭と一緒に乗っていた。そんな光景を見ていた貴族達は、見たこともない可憐な女子に釘付けになっていた。だが、揚揚や女官達はというと憎しみを込めた目で小蘭を見ていた。

「白風(バイフォン)、なんで馬に乗らないの!?」

「私はあくまで女官として同行するから。狩りは貴女に任せるわ」

面倒事を避けるように白風は棄権表明した。

「そう?ライバルが一人減ったから⋯あとは龍麒だけね」

「いやいや、王達がいるでしょ!?」

自信満々の小蘭に蓉花が釘を刺した。

「ふふ⋯光海は買収するとして、父上はまぁいい手を考えてるし⋯」

「そこらの悪徳貴族と変わんないわね!?何よ買収って怖い怖い!」

フフフと笑う小蘭と、怖いー!と叫んでいる蓉花をキャッキャしながら見て笑う龍朱。そんな微笑ましい光景に水を差す連中がやって来たのだった。











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