皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi

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三章 小蘭(シャオラン)の活躍

狩りが始まりました!①

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狩りの準備会場は貴族と王達、そして皇族と三ヶ所に設けられていた。

今回は五大名家も勢揃いで参加するので貴族達は緊張を隠せないでいた。だが、それ以上に目立つ存在がいた。ただの女官と聞いていたが、狩り専用の軽装をして第三皇子の龍朱(ロンシュウ)と、第二皇女の蓉花(ヨウホワン)と共に準備している可憐な女子だ。名は小蘭(シャオラン)と言うらしい。

皇族と共にいるのも驚きだが、さらに五大名家の王達とも行動しているではないか。

「小蘭~!楽しみだね~?」

「ねぇ~?天使ちゃん、眠くない?」

「うん!眠くないよ!」

肘や膝にサポーターを着けてあげながら、小蘭は龍朱を甲斐甲斐しく世話していた。

「蓉花様は眠くない?」

「私も!?眠くないわよ!!狩って狩って狩りまくるわよ!!」

そう、蓉花は乗馬の才能以外にも弓術の才能もあった。一発で標的を射抜いた時は、小蘭と第二皇子の龍麒(ロンキ)は共に開いた口が暫く塞がらなかった。

「貴族の中には有力候補はいないの?」

「ああ、俺が見た中では四人いるな」

蓉花の問いに答えたのは龍麒だ。一人目は青州の貴族であり青栄樹の腹心でもある紫家の嫡男、紫姜夜(シ・コウヤ)は今年で十八になる真面目な青年だ。二人目は紅州の貴族であり例の江家嫡男、江凛煌(コウ・リンコウ)で今年で十七になる寡黙で大柄な青年だ。三人目は黒州の貴族である幽家の若き当主である幽袁煕(ユウ・エンキ)伯でまだ二十四になったばかりだ。

そして最後は白州にある眉家の長女、眉玲華(ミ・レイカ)であり今年で十八になる男勝りのジャジャ馬として有名だった。戦にも参加したいと志願したが、白州王から独りよがりの行動を指摘され許可が降りなかったかなりの問題児だ。

そんな玲華が父親を伴って王達の元へやって来た。父親は文官なので狩りには参加しないが、娘が心配で一緒に参加したのだ。気の弱そうな父親である眉家当主は、王達を前にして緊張で滝のように汗が流れていた。

「あ⋯この度は⋯ご参加⋯あの⋯お会い出来て光栄です!」

意味不明な挨拶をしてしまう眉家当主に、娘である玲華は呆れてしまう。

「ああ、眉家当主か。頑張ってくれ」

白州王の嫡男である白風雷(ハク・フウライ)が軽く挨拶したが、他の王達は小蘭を囲んで談笑していた。

「大熊と大猪は絶対狩るし!もしいければ大蛇も狩るわ!!」

そう宣言する小蘭に、龍朱が”凄ーい!!“と大興奮している。

「父上、あの子は何者なの?見た事がない令嬢よ?」

そんな光景を見ていた玲華が滝汗を流す父親に疑問をぶつけていた。

「ああ、令嬢では無い。皇帝付きの女官らしいぞ」

「はあ!?なんで女官が参加してるの!?皇帝陛下に認められた貴族だけが参加できる由緒ある祭事よ!?」

「そう言われてもなあ⋯」

物凄い形相で怒る娘に尻込みしてしまう眉家当主。陣地に戻って来た玲華を取り巻くのはガラが悪い貴族の子息達で傲慢さが顔に滲み出ている連中だ。

「あの可憐な女子はただの女官なのか!?」

「ええ、皇帝付きの女官らしいわ!なんで参加してるのかしら!?しかも王達や皇子、皇女とも親しいみたいだしね!」

「陛下か⋯龍麒殿下の妾かもしれないな?あまり近付かない方がいいぞ?」

子息達は関わらない方がいいと助言するが、玲華はチヤホヤされるあの女官が面白くない。

「兎に角!私が優勝するわ!!」

そう宣言した瞬間、皇帝陛下がやって来たので貴族達は跪いた。王達も軽装になり弓を持って準備万端だ。そこへ高青(コウラン)がやって来て狩りの始まりの鐘を鳴らした。

鐘の音を合図に各々が馬に乗り森へと入って行く。皇帝である龍飛(ロンフェイ)も護衛長である霧柔(ウールアン)と共に森へと入って行き、龍麒は白風雷や青栄樹と一緒だった。そして小蘭は龍朱を乗せ、蓉花皇女と共に森へと入って行ったのだった。

「楽しみだなー!」

「ふふ!天使ちゃんの為に大猪を狩って夕飯は豪華な猪鍋よ!!」

「わーーい!!」

今から涎を垂らす勢いの小蘭と龍朱に呆れながらも、蓉花もやる気満々だった。少し進むと何やら蠢く物体を発見した小蘭は急いで弓を持ち軽々と引いた。

「ああ、普通の猪か~」

「いやいや!普通じゃ無いから!」

「凄ーーい!!猪鍋ーー!!」

そこに倒れていたのは熊かと思うくらい大きい猪だったので、蓉花は驚いていたが龍朱は大興奮だ。猪を袋に入れて待機していた従者に渡した小蘭一行は、奥へと進んで行く。するとかなり大きな熊が川の水を飲んでいた。

「蓉花様!あれを狙いますよ!私が足を狙いますので、頭を狙って下さい!かなり大物ですよ!」

あまりにでかい熊に龍朱も緊張気味だが、蓉花は静かに頷き、弓を持ちながら熊の額を狙う。そして小蘭は熊の前足を二本の矢で同時に狙い、見事に命中すると、熊は咆えながらも倒れた。その瞬間に蓉花が額に見事に命中させ熊はしばらく蠢いた後に絶命した。

「蓉花様!やりました!!」

「ええ⋯ええ!!やったわ!!」

蓉花は達成感でいっぱいだった。龍朱も万歳して喜んでいて、近くに待機していた従者もあまりの大物に驚愕していた。

三人は馬から降りて、全長三メートルはある大熊を見に行く。

「これを狩ったのね⋯⋯凄いわ」

実感が湧いてきた蓉花は腰を抜かしてしまう。龍朱もかなりの大物に”優勝だね!“と小躍りしていた。従者も十人がかりでやっと運べる大きさに苦笑いしか出ない。そこへ騒ぎを聞きつけた龍飛が護衛長の霧柔と共にやって来た。

「おいおい!とんでもない大物を狩ったな!?」

「父上!!今日は猪鍋と熊鍋ですよ~!」

「蓉花も凄いな!朕は驚いたぞ!?」

小躍りしている龍朱に皆がほっこりしている中、蓉花にも嬉しそうに声をかける龍飛。

「は、はい!ありがとうございます!!」

父親に褒められてこの上なく嬉しい蓉花は小蘭に感謝していた。小蘭に出会わなけれな今も誰からも疎まれる我が儘で傲慢な皇女だっただろう。自分に自信がつくと周りの嫌な者など気にならなくなった。

「陛下は何を狩ったの?」

「ああ、大猪だけだ。不調だな!」

「いやいや!大猪だけでも凄いですよ!?」

小蘭と龍飛の会話に呆れてしまう蓉花だが、そこへ近づいてくる集団があった。眉玲華と貴族子息が数人こちらに向かって来て特に玲華は小蘭を睨んでいた。玲華は馬から降りると皇帝陛下である龍飛の前に跪いた。

「陛下、この大熊は私が狩ったのです!ですがこの者と蓉花皇女が割り込んできて横取りしました!!」

「なっ!?」

玲華のあまりの横暴に怒りを露わにする蓉花皇女と、嘘だ!と激おこの龍朱殿下。小蘭は冷静に目を細めてながら玲華の動向を見守っている。

「ほう?確か眉家の長女だな?」

「はい!私と背後にいる者達で協力して狩りました。そこへこの女官と皇女がやって来て手柄を奪われました!!証人もいます!」

そう言うと、玲華は大熊の周りにいる従者達を見た。すると従者達は平伏しながら信じられない事を言い始めた。

「確かに玲華様が狩ったのを見ました!なのに⋯この女官と皇女が現れて手柄を横取りしていました!」

何だとー!?と激おこの龍朱を抑え、小蘭は蓉花に目配せした。それに気付いた蓉花は頷き深呼吸していた。

「証人がこんなにいるのにこの女官と蓉花が横取りしたというのか?」

「蓉花皇女が黙っていないと命はないと私達とこの者達を脅してきて⋯」

涙ながらに訴える眉玲華に、呆れ果ててしまう蓉花。

「あー、くだらないお芝居は終わりましたでしょうか?」

小蘭は呆れた口調で、眉玲華と取り巻き達を見た。

「お芝居ですって!?あなたが横取りしたのでしょう!?」

あまりの無礼に怒り心頭の眉玲華だが、龍飛と護衛長である霧柔の視線は冷たい。背後にいる子息達も嫌な予感がして一歩ずつ下がっていこうとしたが、皇帝陛下の護衛兵士達がすでに取り囲んでいた。

「じゃあ、大熊に刺さっている矢を見て下さい。これは本当に貴女の放った矢ですか?」

小蘭が大熊の前足に刺さった矢を抜いた。その矢尻は何故か紅かったのだ。他の者達は普通の矢だが、小蘭の持っている矢尻は紅い。

「そ⋯そうよ!私の矢よ!それが何よ!?」

「この紅い矢は紅州王の矢だ。大熊に刺さった額の矢は黄金だ。黄金の矢は皇族である黄家の証だ、つまり蓉花の矢という事だ」

怒りのこもった龍飛の言葉に、眉玲華を始めとして従者や貴族子息達はどんどんと顔面蒼白になっていく。

「私が紅州王に頼んで矢をお借りしたんです。嘘だと思いなら紅州王に聞いて下さい」

「何で⋯何であんたなんかに紅州王が矢を貸すのよ!嘘をつかないで!そうよ⋯盗んだのね!?」

「まあ、私の事は良いですけど皇族である蓉花皇女を陥れるとは命が惜しくないんですね?」

小蘭は呆れながら龍飛を見た。

「全く愚かな者達だ!!今日の狩りは終わりだ!!皆を集めよ!そしてこの者達を捕らえよ!!」

「は!」

霧柔は部下に指示して眉玲華と貴族子息、そして従者達を捕らえたのだった。


















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