皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi

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三章 小蘭(シャオラン)の活躍

宴での惨劇①

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眉玲華や貴族子息達が拘束され、皇帝陛下の怒りが収まらない中で、他の貴族達には緊張感が漂っていた。

「この後の宴は大丈夫だろうか?」

「全くいい迷惑じゃ!こんな日に不正を行うなど眉家の娘は愚か者じゃな!」

眉玲華の父親であり眉家の当主の眉盛胡(ミ・セイナン)伯は、娘が起こした事件で皆の非難の中心にいた。

「旦那様、如何いたしますか?奥様に知られたら大変なことになります」

側近である男が頭を抱えたままの盛胡に耳打ちする。

「ああ、分かっている。こうなったら白家に助けを求めるしかあるまい⋯」

「宴の席だと動きやすいかと思います」

「そうだな。陛下を説得してもらおう」

盛胡と側近は宴の時間まで静かに待つとした。



「猪鍋は初めて食べます!」

「そうね。自分達が狩った猪を食べるなんて凄いわ!」

皇族のテントでは、宴まで待てずに大興奮する第三皇子の龍朱(ロンシュウ)と第二皇女の蓉花(ヨウホワン)を見て、やっと怒りが収まりつつある皇帝の龍飛(ロンフェイ)は、小躍りする二人を愛おしそうに見つめていた。

そこへ冷茶を持ってやって来たのは女官長の揚揚(ヨウヨウ)と数人の女官達であった。

「女官長、小蘭はどうしたのだ?」

「はい。小蘭は紅州王から呼ばれて向かいました」

女官長の話を聞いた龍飛は、徐に立ち上がると護衛長の霧柔(ウールアン)と共にテントを出て行ったのだった。

残った蓉花と龍朱が仲良く話しているのを見る第一皇女である美芭(ビーファ)の視線は冷たい。そんな美芭に気付いた女官長の揚揚が含みある笑顔を浮かべて近づいて行く。

「美芭様、うちの女官が失礼を致しました」

「⋯あの小蘭という女官が現れてから全てがうまくいかないわ。それは貴女もでしょう?」

「どうにかしたいのですが、あの子には何故か大き過ぎる後ろ盾がいますので⋯」

「今回の宴、使えるかもしれないわね」

そう言って綺麗な笑みを浮かべる美芭に、揚揚も意地悪い笑みを浮かべたのだった。



「あー!負けた!悔しい⋯明日は大蛇と大熊を十頭ずつ狩ってやる!!」

女官の小蘭は王達のテントで、恐れ多くも大の字になり不貞腐れていた。テントに入ってくる従者や女官達は小蘭を見てギョッとしては、見て見ぬふりしていた。

「小蘭、今回は飛んだ災難だったな。馬鹿はどこにでもいるんだ」

緑州王である緑光海が小蘭を励ましている。

「今回の件でも分かったろう?女官は辞めて紅家に帰って来い」

「嫌です」

紅家に帰りたくない理由は他にもあるのを、紅司炎も他の王達も分かっているので、これ以上は何も言わない。小蘭はやっと起き上がり、王達の為に準備されたお菓子を我が物顔で食べ始め、畏れ多くも黒麗南がお茶を入れてやり、それを当たり前のように受け取り飲んでいた。

「お嬢様、あれは酷いです!女官の意味を分かってるのですか?」

一番奥に座っていた紅星花(コウ・セイファ)と侍女の珊瑚は、小蘭の態度を見て顔を顰める。

「父上が許しているのよ。私に何か言う権限はないわ」

「ですが⋯!!」

珊瑚は小蘭にも嫉妬していた。普段は無表情で顔色一つ変えない紅司炎だが、小蘭の前では感情を露わにして、笑顔を向けるのだ。なので憎たらしくもあり、羨ましくもあった。小蘭になりたいと何度思った事か。

そこへ皇帝である龍飛が霧柔と共にやって来たので、皆が立ち上がり一礼する。星花もこんなに近くで皇帝陛下を見る機会が無かったので緊張していた。近くで見る皇帝龍飛は勇ましく精悍な顔立ちであった。つい見惚れてしまう星花だが、龍飛はそんな彼女に気付くこともなく、やけ食いする小蘭を見て苦笑いしていた。

「そんなに食べると太るぞ?」

「龍麒と鍛錬するから大丈夫。あれ?そう言えば龍麒は?」

「ああ、栄樹と風雷と共に狩った猪を解体している」

大きな獲物を解体するには時間がかかるので、慣れている龍麒達が指導しながら解体しているらしい。

「猪鍋を天使ちゃんと蓉花様にも食べてもらいたいから楽しみだな!」

素直な小蘭に皆が笑顔を向ける中、星花と珊瑚の視線は冷たい。

「陛下、いえ伯父上。挨拶を申し上げます」

星花は珊瑚と共に龍飛の元へやって来て綺麗な礼をする。

「ああ、紅家の長女か」

「妹は礼儀作法を学んでおらず失礼な態度を⋯申し訳ありません」

星花の発言に、龍飛をはじめとして王達も顔を歪めた。

「お前がぬくぬくと礼儀作法を学んでいる時、こいつは国の為に命懸けで戦っていたんだぞ?」

「⋯確かに妹は英雄です。ですがあまりにも目上の者に対する態度が酷いので姉としては⋯」

「星花、下がれ」

父親である紅司炎に怒りの眼差しを向けられ、星花はそれ以上何も言えずに悔しそうに一礼すると席に戻って行った。

「姉ねぇ~?」

小蘭は呆れたように星花を見ていた。小蘭は義母と異母姉の星花とは折り合いが悪く、離れで暮らしていた。父親である紅司炎も本邸にいる事は少なく、小蘭と共に離れで生活していた。家令である葉雲(イエウン)が屋敷を纏めていたので特に問題はなかった。

だが、義母は嫉妬深く、夫である司炎の近くにいる女官にすら嫉妬しては追い出してしまうほど気性が荒かった。なので自分以外の女が産んだ小蘭は目に敵であったが、小蘭を傷つけようとした者の悲惨な末路を見た義母はそれから目立った嫌がらせはしなくなった。

「あの女の娘だろ?陰険な所がそっくりだな」

「おい、その女は朕の妹だぞ?」

緑光海の失礼な物言いに苦笑いする龍飛だが、確かに気性が激しい妹なので否定できない。

「紅家に嫁げないなら死ぬと大騒ぎしたイカれ女だ」

黒麗蘭も負けていない物言いに、龍飛は居た堪れない。紅司炎が黙ったままで何も言わないのを見て星花は怒りに震えていた。実母をここまで悪く言われては流石に黙っていられないので、反論しようとするのを珊瑚に止められた。

「お嬢様。相手は王達です。お怒りは分かりますが、今は我慢して下さいませ」

「⋯⋯。確かに母上は嫉妬深いわ。でもそれは父上が冷たくするからよ。たとえ愛していなくても妻よ?正妻にあんなに態度をとるのは世間的にもいい事では無いわ」

星花の言い分を聞いている珊瑚だが、心の奥底では嘲笑っていた。

(司炎様は私のものよ)

珊瑚は熱い視線を紅司炎に向けていた。




そして夕方になり大々的な宴が始まろうとしていた。

貴族達は席につき、王達もやって来て席についた。そこへ女官達が料理やお酒を運んできた。宴の席の中心には複数の大鍋が並べられ、いい匂いを漂わせていた。暫くして皇帝陛下と、皇子や皇女達がやって来たので、一同が一斉に立ち上がり一礼する。

「皆の者!今日は猪鍋を用意した!思う存分に楽しんでくれ!」

皇帝の挨拶と共に宴が始まった。

小蘭は大猪を狩った功労者として宴に参加していた。しかも蓉花と龍朱に挟まれた皇族席であり、貴族達を驚かせていた。

「天使ちゃん!どう?」

「美味しいーー!幸せー!」

ニコニコしながら猪肉を頬張る龍朱に、小蘭は満足して自分も食べ始めた。

「おお、龍麒!なかなか良い味だよ!!」

嬉しそうな小蘭を見て嬉しそうに笑う龍麒。蓉花も“何これ!?美味しいわ!!”と美味しさに驚いていた。王達も龍飛と談笑しながら穏やかな時間が過ぎて行くはずだった。

猪鍋を美味しそうに頬張っていた小蘭だったが、急に動きが止まり持っていた皿と箸を落とした。それにいち早く気付いた蓉花と龍朱が心配して近寄ろうとしたのを小蘭が止める。

「父上ー!小蘭が苦しそうです!」

龍朱が半泣きしながら龍飛に訴えた。それが聞こえたのか王達が立ち上がり小蘭の元へ駆けつけたと同時に小蘭が急に吐血した。

「おい!しっかりしろ!!」

龍飛が苦しそうな小蘭に声をかける。その場は騒然となり護衛兵士達が急いで宴の場を囲む。

「多分⋯⋯毒⋯」

苦しそうにそう告げる小蘭を抱き抱えた龍麒は、急いで医官の元へ向かう。それを王達が追いかけ、皇帝である龍飛が女官や従者を全て宴の場に集めたのだった。


















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