皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?

akechi

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三章 小蘭(シャオラン)の活躍

宴での惨劇②

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この世界には霊気を操れる者が少数存在する。その者達は“神族”と呼ばれており長命であるのが特徴だ。

陽蘭国にはその神族が多く存在する。皇帝陛下をはじめ皇族や王達、一部の貴族は神族なのだ。小蘭も神族なので毒は効かず死にはしないが、苦しみは味わう事になる。

「猛毒です。歪茸(イビツダケ)という茸です。森に入れば何処にでも生えていますので、鍋の中に入っている茸を調べて下さい!他にも毒に当たった者がいるかもしれません!」

吐血したあとすぐに落ち着いた小蘭は、もう立ち上がれるくらい回復していた。

「神族以外が食べてしまったら死んでしまう可能性が大きいです。解毒剤を急いで準備します!」

皇宮医官達が忙しく動いている中、小蘭は第二皇子の龍麒や王達と話し合っていた。

「小蘭、大丈夫か?」

「父上、私は大丈夫ですが他に症状が出ている者はいないのですか?」

心配する司炎に疑問を投げかける小蘭。

「ああ、鍋を全部調べたが歪茸は混入していなかった。お前を狙った犯行の可能性がある」

「はっ!大胆なのか馬鹿なのか。今回の件は皇族を巻き込んでの暗殺未遂だ。徹底的に調べるぞ」

黒麗蘭がそう言うと同時に現れたのは、黒家の密偵部隊だ。

「良いか?怪しい者は徹底的に調べろ」

「「「はっ!」」」

主からの指示を受けた密偵部隊はすぐに消えた。



「揚揚様、本当に大丈夫でしょうか?」

「あの者は神族なの!?あり得ないわ!」

女官長の揚揚は驚きを隠せないでいた。まさかあの女官が神族だとは思ってもみなかったからだ。神族は位が高い貴族や皇族に多いので、女官が神族なんて今までも見たことも聞いたことがなかった。

揚揚と苦楽を共にしてきた女官二人は、今回の“事件”にも関わっていた。だが、女官が倒れたくらいでこんなに大騒ぎになるとは思わなかった。

「バレはしないわ。それに犯人は“用意”しているから大丈夫よ」

内心は恐ろしくて堪らないが、長年皇宮に勤めているだけあり、様々な修羅場を経験してきたので度胸だけはあった。



皇帝陛下である龍飛の前に一人の女官が拘束されて来た。まだ十代半ばの少女で、顔面蒼白で今にも倒れそうだった。

「お前が運んできたものを食べて小蘭は倒れたんだが、何か言う事はあるか?」

「あ⋯」

少女がブルブルと震えながらもとある人物をチラリと見たのを龍飛や護衛長の霧柔は見逃さなかった。

「お前が歪茸を入れたのだな?」

「⋯⋯はい⋯⋯」

涙を流しながらも認めた少女。

「動機は?何故に小蘭を狙ったのだ?」

「⋯⋯それは⋯」

認めはしたが、動機が全くない女官を見て龍飛は考え込んでいた。そこへ紅州王が戻って来たので、龍飛は彼に耳打ちをする。

「他にいますね」

「ああ、この女官は何者かに脅されているのだろう」

皇帝と紅州王に見られて生きた心地がしない少女は、ただの雑用係の下級女官であった。だが、自分の運命が変わったのは数時間前、何故か女官長の揚揚に呼び出された少女は信じられない事を言われた。

『この茸を入れたものを小蘭に持っていきなさい』

茸はすぐに“歪茸”だと気付いた少女は恐ろしくなり断った。だが、冷酷で狡猾な揚揚は笑顔のまま残酷な事を言った。

『田舎の家族がこのまま元気に過ごしてほしいなら言う事を聞いたほうがいいわ。一番下の弟はまだ3つでしょう?』

自分が何も言わずに犯人として処刑されれば、揚揚が大金を田舎の家族に送ってくれるという。もし自白したら家族を皆殺しにすると究極の選択をしてきたのだ。どちらにしても自分は殺されるならと泣きながら受け入れたのだった。

ただ家族に楽な生活をして欲しくて皇宮の下級女官として働いてきた。嫌なことばかりで楽しみもなかった少女はせめて家族にはお金を残したかった。

そして少女は犠牲になる事を選んだのだった。



「あなたがやったのならこれは大罪よ?皇族がいる席で毒を混入したのなら一族皆殺しの大罪なのは分かってる?」

そこへ現れたのは回復した小蘭であった。小蘭の話を聞いた少女は目を見開き驚いていた。

「そんな⋯私だけじゃないんですか?家族は関係ありません!」

「動機も言えないようじゃ家族を拷問にかけて無理矢理にでも聞くしかないな」

黒州王の非情な命令に少女はパニックになっていたが、そこへ女官長の揚揚が現れた。

「陛下。この者は歳の近い小蘭が優遇されるのを妬んでいたという話を聞きました。これは私の監督不足です!申し訳ありません!!」

「女官長、絶妙なタイミングでやって来たな?」

緑州王が含みのある言い方をした。

「そうだな。まるで何か言われるのを止めるようなタイミングだ」

緑州王と黒州王の鋭い視線に、揚揚は冷や汗が止まらない。

「“誰か”に脅されているの?家族を殺すとか?」

小蘭の発言に少女は顔を上げた。そして少女と目が合った小蘭は笑顔で頷いた。

「家族は何処にいるの?」

「⋯⋯あ⋯青州の陽平(ヤンピン)です⋯農業をして生計を立てています!助けて下さい!」

「栄樹!」

「ああ、文を出して至急対応する」

青州王の嫡男である青栄樹が動き出した。

「家族の事は心配しないで。あなた名前は?」

「あ⋯うぅ⋯流倻(ルーヤー)⋯」

小蘭の優しい声色に安心したのか、今まで我慢していた涙が溢れてくる少女。

「誰が流倻に指示したかが問題よね?ねえ、女官長?」

小蘭に鋭い視線を向けられた揚揚は、表面上では冷静を装っているが内心はひどく焦っていた。

「流倻よ。朕に正直に答えてくれるか?」

皇帝である龍飛の言葉に、流倻は泣きながらもはっきり頷いた。

「お待ち下さい」

緊迫した状況の中、優雅にやって来たのは第一皇女である美芭であった。空気を読まない行動に、皇帝である龍飛を始め、王達や小蘭はあからさまに顔を顰めた。

「美芭、今は口を出すでない」

「父上、この事件の犯人ですが心当たりがあります」

美芭はそう言うと、女官長である揚揚をはっきりと見た。

「宴が始まる前に偶然見てしまったんです。女官長がこの者を脅していました」

それを聞いた揚揚の顔色が変わった。

「なっ!美芭様!!何を言っているのですか!?陛下、あり得ません!私には動機がありません!!」

必死に無実を主張する揚揚とこちらも関わりを疑われたくないので必死な美芭皇女。

「愚かな!今はこの流倻が唯一信用できる証人だ!朕の断りもなく話すな!!」

立ち上がり怒りを露わにする龍飛の迫力に、揚揚も美芭も顔を真っ青にする。今までここまで怒った皇帝を見たことがなかった揚揚は酷く焦っていた。たかが女官の事でここまで大事になるとは思っていなかったからだ。

「前任の明月女官長の方がまだマシだったな。ここまで馬鹿ではなかった」

「ああ、皇帝陛下が主催する場で毒を持ったら皇帝暗殺を疑われるのは当たり前だろう」

黒州王と緑州王の会話が聞こえてきて、揚揚は自分がどれだけ愚かだったか今頃気付いたのだ。

「流倻、正直に答えて大丈夫だ。家族は朕が責任を持って守ると約束しよう」

「うぅ⋯ありがとうございます⋯」

龍飛の優しくも逞しい言葉に安心した流倻は、揚揚率いる女官数人に囲まれて、家族を殺されたくなければ小蘭に歪茸を食べさせろと命じられた事。そして罪を受け入れて死ねと脅された事を涙ながらに訴えた。

「小蘭様⋯申し訳ありませんでした!!貴女に毒をもったのは事実です!!罪は償います!!」

小蘭に対して涙ながらに謝罪する流倻と、顔面蒼白になっていく揚揚率いる女官達。美芭はというとどう逃げ切るかを考えている。

「卑劣極まりない!!女官を纏める立場でありながらこのような愚かな事をするとは!!女官長とそこの三人の女官を今すぐに拘束せよ!!」

揚揚達が命乞いする姿を冷たい視線で見下ろす龍飛や王達。小蘭はというと流倻を懸命に慰めていた。

「貴女は悪くないわ。私でも同じ事をした。家族を守る為に死を選ぶなんて勇敢だし誰でも真似できる事じゃない」

「うぅ⋯小蘭様⋯」

「この者も暗殺犯ですわ。誰か!拘束して!」

またしても空気の読めない行動をとる美芭皇女に、怒りの視線を向ける小蘭。

「皇女。あんたは少し黙ってて頂けますか?」

「なっ!」

女官である小蘭の女子とは思えない威圧に恐怖を覚えてしまう美芭。

「流倻の処罰は陛下がお決めになる事です。関係のない者が口を出す事じゃないですよ?」

「小蘭の言う通りだ!いい加減に黙らないか!!引っ込んでおれ!!」

龍飛の怒号が美芭を襲う。これ以上は危険とやっと気付いた美芭は悔しそうに一礼して去って行ったのだった。
















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