失禁怪盗は誘い受け

カルキ酸

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おしっこ我慢をする怪盗

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 護送車の中で、その怪盗と香坂刑事は対面で席についていた。怪盗は、頻繁に足を組みかえながら、手錠を引っ張ったり手首を回してみたりしていて、車内には鎖同士が当たる音だけが響いていた。

「何度やっても無駄だ。お前のために作った特別な手錠だからな。外して逃げられると思うなよ」
香坂刑事は腕を組み、まっすぐ怪盗を見据えながら言う。
「はは、ついに私もお終い、というわけですね」
怪盗は手錠をかけられた自分の手首を見つめながら呟いた。
「ところで香坂刑事、いつ頃になったら着くのでしょうか」

 怪盗は、組んだ足を戻し、しばらくじっとさせた後、再び足を組んだ。

「さぁ・・・美術館から留置所までは60km離れていたはずだが」
あと何分くらいだろうか、と思いながら、香坂刑事は鉄格子の窓の外をちらりと見た。

「では・・・あと1時間くらいですね」
はぁ。と小さなため息をつきながら、怪盗は腕時計を見る。
「観念するんだな」
香坂刑事は両手をソファにつき、軽く後ろに伸びをした。
「いえ・・・そうではなく・・・」
バツの悪そうに目線を逸らしながら、怪盗は口ごもる。
「なんだ?」
苛立ちながら香坂刑事は尋ねる。
「・・・なんでも」
つられて怪盗も不機嫌そうに俯いた。

 ガタン、と護送車が揺れる。山奥にある留置所までの道は悪く、頻繁に揺れていた。怪盗は、座り直すように小さく動きながら、困ったように運転席のほうを見た。その黒い瞳には、焦りと羞恥の色が宿る。
 というのも、護送車に乗せられる前からずっと、彼は尿意を感じていたからだ。1時間ほどこうして移動しており、我慢も限界に近付いていたが、なかなか言い出せずにいたのだった。更に、ガタガタと揺れる車の振動が妙に膀胱を刺激し、足を組む振りをして押さえてはいるのだが、尿意は強まるばかりで、最悪の展開が脳内によぎる。


「あ、あの」
ついに怪盗は重い口を開く。香坂刑事が彼の伏せがちな目を見る。
「トイレに・・・行きたいのですが」
香坂刑事は、黙って怪盗を見つめる。車から降りて、逃げるための口実だろうか。
「我慢しろ。あと40分くらいだ」
「・・・う」
怪盗は、足を閉じて、ぎゅっと力を込める。

「も、もう・・・あの、我慢、出来ないんですよ」
「・・・逃げるために言ってんじゃないだろうな」
 演技かもしれない。香坂刑事は、怪盗を睨みつけた。足を、もじもじさせながら彼は一気に頰を赤らめる。
「逃げませんよ。・・・何ならするところ、見てていいですから」
「見たくねぇよ」
「・・・駄目、ですか」
縋るように怪盗は見つめる。その端整な顔立ちと色気のある表情に、香坂刑事はドキリとする。

 上からは、怪盗が何を言っても留置所に着くまでは車を止めるなと命じられている。
 事実、不審な動きをしないか見張るために、こうして2人きりで車内にいるのだった。運転している警察官も、怪盗が「トイレに行きたがっているから止めてくれ」と言っても怪しんで止めてくれないだろう。
 だが、嘘ではなく、本当にトイレに行きたいのなら、相手がいくら世間を騒がせた有名な窃盗犯とはいえ、可哀想だ。

 香坂刑事が悩んでいる間にも、怪盗は必死におしっこを我慢をしていた。下腹部は張り、ペニスの先端にまで甘く冷たい痛みが走る。
 出る。出ちゃう。もう漏らしてしまう。いや、駄目だ。こんな所で漏らすわけにはいかない。はやく着いてくれ-・・・・・・。

 他に何も考えられないほどに追い詰められながら、下腹部に力を込める。ガタン、と揺れる音に、涙が出そうになる。
「ま、待ってろ、今、バケツか何かを・・・」
香坂刑事は車の揺れに手をつきながらも立ち上がり、慌てて何かないかと辺りを見渡した。

「・・・っ」
 怪盗は祈るように天を仰いだ。今にも泣きそうなほどに呼吸を震わせながら、内股に潜り込ませた手で股間をぐいぐい押さえる様子に、香坂刑事は罪悪感を感じる。演技なんかじゃない、本当に我慢してたのか。

「お、おい。ちょっと車止めてくれ」
運転席のほうに香坂刑事は叫ぶ。
「え?」
ミラー越しに運転していた警察官が尋ねる。


「・・・ぁあっ!」
急ブレーキが掛かると同時に小さな悲鳴が聞こえて、香坂刑事は振り返る。
「あ、いやっ!み、見るな・・・」
 怪盗は、項垂れながら震える声で呟いた。ピチャピチャと音を立てながら、彼は足元に水溜りを作っていた。

 一度、限界を迎えたら、もう止めることは出来ず、必死に押さえている指をすり抜けて溢れていく。下腹部は生温かく、尿は足を伝って流れていく。濡れた下着とスラックスが肌に張り付いていくのが不快だ。

「・・・いや、何でもない。進んでくれ」
「は、はぁ・・・」
 不思議そうに警察官は、運転を再開した。罪悪感のあまり、香坂刑事は怪盗に背を向け、元の席に座れずにいた。
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