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第一話 魔法少女始めちゃいました その一
しおりを挟む暗く狭い部屋に、三つの人影がみえる。暗くて顔は見えないが声はよく聞こえた。
「人間というのは実に面白い・・・」
若い男のような声が部屋に優しく響いた。聞くものが全て安心してしまいそうな。そんな声だった。
「けっ、そうか?すぐ壊れるじゃねぇか・・・ま、それがいいかもしれねぇなぁ」
荒々しい男の声が響く。もし、臆病なものが聞いたらすぐに尻尾を巻いて逃げ出しそうになる声だった。
「・・・私はどうでもいい」
だるそうな女の声も響く。実際喋るのも億劫なのであろう。
二人の声を聞いて、最初に喋った男がくすりと笑う。
「ですから、僕は人間をーーー」
ここで、一度声をとめる。あとの二人はつぎの言葉を待った。そんな二人を交互に見て、やがて、重々しく口を開け。
「ーーー支配したい」
荒々しい男が、ひゅー。と口笛を吹いた。
「ですから、協力願えますか?」
そう、男がつぶやき、手を差し出す。残りの二人は当たり前のようにその手を取った。
また、男がくすりと笑い。
「では、始めましょうか。僕達『ディザイア』と『魔法少女』の戦いを」
と言ったかと思うと、三人の姿はこつぜんと消えていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「えーと・・・【また猟奇殺人!?首を刈り取られた遺体】・・・ですか」
新聞を読みながら何やら恐ろしい見出しを読む幼い少女。
青いパーカーを着て、鮮やかな緑のショートスカートをはいている
髪は少し深みがかかった青で、小さな雪だるまの髪留めをつかい、右側でサイドテールにしている。
彼女の名前は「小峠美冬」
読んでいた新聞をパサリと、机の上に置いた後、大きく伸びをする。
「最近物騒な事件が多いですね・・・怖いです」
と、独り言をつぶやく。いや、目の前にもう一人少女がいた。
「そうだな、ま、美冬ちゃんはあたしがちゃんと家に送るから安心してくれ」
美冬と机を挟み座っていた少女がそう返す。
赤い服の上からオレンジのカッターシャツを羽織り、青いショートパンツをはいている。
髪は黒く、そして肩のあたりで切り揃えていた。
彼女の名前は「西園寺あかね」
彼女は小峠美冬と別に親戚などという関係ではない。
彼女の友人であり、美冬の兄「小峠春樹」の頼みで、美冬を家に泊めていたりする
彼は、美冬と二人で暮らしていて、家計のためバイトを何個も掛け持ちしている。そのため、家に美冬一人の時ができてしまう。夜に女の子一人では危ないだろうというわけで、基本的にあかねの家で美冬を預かっている。
あかね自身妹ができたみたいで結構楽しくやっていた。たまに作るお菓子を二人で食べるのも好きだし、美冬が美味しそうに食べるのを見るのも好きであった。
因みにあかねは帰ってくるのが遅い母と二人暮らしである。兄弟姉妹がいないので、妹に憧れていたり。
さてと、とつぶやき、あかねは立ち上がる。
「風呂入っていいか?」
と、美冬に確認を取る。美冬はどうぞーといった。
軽く口笛を吹きながら風呂場に向かうあかね。見た感じ男っぽいあかねだが、実は結構女っぽく、おかし作りも好きだし人並みにお風呂も好きであった。
洗面場につき、服を脱ぐあかね。全て脱いで風呂場のドアをガラガラと開ける
髪や体を洗い流しチャポンと、湯船に浸かる。
ふぅ~と息を長く吐き出し、湯船に浮かんでいるひよこを触る
美冬がくると聞いた時、念のために買ったひよこ。今ではあかねのお気に入りだったりする。
しばらくボーとしていただろうか、少し開いた窓から入ってくる風が涼しくて気持ちよかった。
結構長くはいってたので、そろそろ上がろうと立ち上がるため風呂に両手をついた。少し体を浮かした瞬間、窓から何か飛んできて、コツンと小気味いい音をたて頭に何か当たった。
「いてっ!?な、なんだぁ?」
誰かのいたずらか?と考えつつ、窓を見上げながらとりあえずひよこを触・・・
「ん?なんだ?やわらか・・・い?」
ひよこはそこそこ柔らかいがそれ以上に柔らかい感触が伝わってきた。
むにむにと手にあたる物を揉んでみる。恐る恐るその物体を見る。
それは白い球体のような物で両脇から羽のような物が生えていた。
そして、顔のように黒い点が2つと猫のような口があった。
人形かと考えてたら不意に
「あまりベタベタ触るな」
と言う声が聞こえた。
とっさに周りを見渡すあかね
しばしの間。あかねは考えるのをやめたいた。だが
「だから離せと言ってるだろうが小僧」
と聞こえて現実に引き戻される。そして
「きゃぁぁあああぁぁああ!!??」
と可愛らしい叫び声を上げたちあがった
「男が喚く・・・」
と、白い球体がそこまでつぶやきまじまじと、あかねの体を見つめた
「ついてないのか。じゃ、女だったな」
見られた。そう思ったら恥ずかしさと怒りで顔が紅潮し、耳まで真っ赤になる。そしてあかねは
「きゃぁぁあああぁぁああ!!!」
とまた叫んだ。すると風呂場の扉の向こうから慌てたような感じでパタパタと足音が聞こえ、扉が勢いよく開いた。
「大丈夫です・・・か?」
またしばらく、なんとも言えない空気が広がった。それを壊したのは
「いやぁああぁああぁあああ!!」
あかねの叫び声だった
むんずと、白い球体を握り、それを美冬に投げつける
「うわぁぁあああぁぁ!?」
白い球体がそう叫び美冬に飛んでいく。そして
ガッ
といい音を響かせ美冬にぶつかった
「ごめん!!美冬ちゃん!!」
風呂から上がった後真っ先にあかねは美冬に謝った
「い、いや、大丈夫ですよ・・・」
と、美冬はあくまで大丈夫だという
「俺には謝らないのか?」
白い球体が何か言ってるが、あかねはキッ、と、それを睨みつけ
「というか、あんたはなんなんだ??」
といった
「俺か?俺は・・・」
とここまで言い、白い球体はぷかぷかと浮かんだ。そして、二人の間にたたずみ
「天使くん。とでも呼んでくれ」
といった。
色々と突っ込みたいことを抑えつつあかねはまた白い球体・・・天使くんをまじまじとみつめる。
確かに羽が生えている。生えてはいるが・・・
「いやいやいや。天使がいるわけない」
と結論付けた。それに同調するように美冬は顔を縦に降る。
だが、天使くんは部屋の中を回りながら
「じゃ、俺はなんだ?喋って動く人形?んなわけねぇだろ」
と、ふたりにいった。そして真ん中で止まり、美冬の方を向いた。
「な、なんですか!?」
「俺と契約して、魔法少女になってくれないか?」
と、美冬にいった。美冬を見る目は真剣そのものであり、嘘を付いてるようには見えなかった
だが
「い、いやいや、魔法少女とかもっとありえませんよ?わけわかめですよ」
と天使くんに言った。すると天使くんは息を一つつき
「少し説明するか」
「お前たち人間には、一人一人多かれ少なかれ『欲』を持っている。それはお前らも一緒だろう。
そして偶にだがその欲に負けて、暴飲暴食や強盗などに走るやつがいるだろう?
・・・で、だ。ここからが重要だが・・・その欲を怪物として具現化させれるやつがいる。それが魔法少女の敵。その名も『ディザイア』だ」
そこまで言い、少し息をつき、また天使くんは話し始める
「そして、美冬。お前の魔力はかなり強い・・・いってしまえば、最強の魔法少女になり得る存在だ。だからこそ、俺はお前と契約を交わしたい。だめか?」
だが、美冬が答える前に
「そんな危ない真似させれるかっ!!」
あかねが叫んだ。
「最強?魔法少女?ふざけんな!それが本当だとしてもお前は一人の女の子の命を危険に晒してんだぞ!?お前は天使なんかじゃねぇ!!悪魔だ!!」
と一気にまくし立てた。美冬は驚いたように目を見開いた
肩で息をしながら天使くんの次の言葉を待った
「じゃ、いいわ」
それは意外な一言だった
あかねと美冬はアホみたいに口をポカンと開けていた。その二人を見て、天使くんは
「いや、俺だって無理やり契約しようとは思わない。すまなかった」
といい、深々と頭(?)をさげた。
謝られて逆にあたふたし始めるあかね。予想外すぎたのだ。
「いや、その・・・それならいいぞ!!」
何がいいのだろうか。それはわからないがあかねがそう慌てていう
だが、天使くんは少し申し訳なさそうな顔であかねに
「で・・・だが、さっき投げられた衝撃で・・・俺の魔力が飛び散ってしまって・・・自衛もままならない。よければしばらく泊めてくれないか?」
あかねのところに珍妙なお客さんが来た次の日。あかねは、近くの公園まで足を運んでいた。
もちろん、天使くんも一緒に。
春の暖かい風がふき、草木も揺れている。
公園のベンチにすわり、ふぅ~と息を吐く。
ここの公園でベンチに座り景色を眺めるのがあかねは好きであった。天使くんも空を見上げ、何かつぶやいたようだが、よく聞こえなかったのであかねは気にしなかった。
すると、目の前にボールが転がってきた。そのボールをひろうあかね。すると後ろからいきなり
「すきあり!!」
と男の子の声が聞こえてきたかと思うと、頭頂部にチョップされた。
「どうだ!まいったか怪人あかね!!」
頭をさすっていると、勝ち誇ったような少年の声が聞こえた。
「いてて・・・不意打ちは卑怯だぞ、翔」
と、あかねは少年に声をかける。すると少年はへへへと笑い
「気をぬく方が悪いんだぜ!!」
といった。
生意気な・・・とおもうあかね。ふと、翔の右の手首を見る。そこには緑色のスカーフがまきついていた。
「なんだ、これ。前つけてなかったよな?」
とあかねは質問すると、翔はトコトコと歩いて、あかねの隣にストン、と座った。
そして右手を見せながら自慢げに
「かっこいいだろ?へへ、このまえママに買ってもらったんだ」
といった。
「あかねにいちゃんも・・・なんだこれ?人形か?」
といい、天使くんを掴み上に持ち上げる翔。あかねは少し慌てるが、天使くんは動じてない。
「いいじゃねぇか。あたしの勝手だろ?あとあたしはにいちゃんじゃない」
翔の手から人形を取り返しつつ翔の言葉を否定するあかね
翔はすこし、文句を言いたげな顔になったが、向こうからやってくる人影を見ると顔を輝かせ
「ママ!!」
と嬉しそうに叫んだ。
あかねも立ち上がりどうもと頭を下げる。翔の母親もあかねに頭を下げ
「今日も遊んでくれたの?ありがとうね」
と礼を言った
あかねは照れた顔で頬を少し掻きながら
「いいですよ。子供好きですし」
といった。
それを聞いた翔の母親はニコリと笑い
「本当にありがとうね」
と優しく言った。
暫く二人が談笑をして、翔は遊具で友人と遊んでいる。
「あ、知ってる?神隠し事件」
いきなり翔の母親はそうあかねに言う。
あかねは暫く考えたあと、あっ、といい
「聞いたことがあります」
といった。
神隠し事件。それはその名の通り人がいなくなる事件。ここ最近この事件が多発していた。
「あかねちゃんも可愛い女の子なんだし、夜道には気をつけてね」
翔の母親はあかねを心配しながら言った。あかねはニコッと笑い
「ありがとうございます。でも、あたしは大丈夫ですよ」
といった。
「・・・・神隠し・・・か」
バッグの中で天使くんが誰にも聞こえないような小声で呟いた。
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