ヒロイン=ヒーロー

は~げん

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第一話 魔法少女始めちゃいました その二

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翔達と別れた帰り道。天使くんがバッグの中からあかねを見上げながら
「おい、少し話を聞いてくれないか?」
といった。あかねは視線だけを送り、話を聞く姿勢をとった。
天使くんは暫く間を置いたあと
「神隠し事件。これをやってるやつは多分、ディザイアだ」
といった。
ディザイア・・・確か、魔法少女の敵。そいつが今回の事件の犯人だと天使くんは言う
心なしか天使くんが震えてるように見えた。これは、怯えているのか、いや、違う
怒っているのだ。己に。己自身に。 
誰かを守る力を与えることができるが、それで人を危険にさらす。そんなこと彼はしたくなかった
だからこそ、力を渡すことしかできない己を呪った。
あかねは震える天使くんをみながら、なぁ、と一息置いて天使くんに
「あたしが魔法少女にはなれないのか?」
と聞いた。
二人の間に沈黙がひろがり、春の風と草木のざわめきの音だけが聞こえた。
やがて、天使くんがあかねをみながら
「あまり言いたくないが・・・お前は魔力がほぼない。諦めろ」
と言った。
あかねはそうか、とつぶやき、また歩き出した。


◆              ◆                   ◆                   ◆


ここはどこだろう。周りに壁があるのが見えるが、天井は気持ち悪い模様がぐるぐる動いている。
そんな異質なところだが、全く異質ではないのがあった。それは大きな棚である。それがこの異質な場所にポツンと何個か置いてある。そしてそこには標本のようなものが何個も置いてある。
「ぐげげげ・・・」
突然下品な声が聞こえた。すると、異様な影が動きながら棚に近づいてきた。
そして、棚に置いてある一つの小さなガラスケースを手に取る。それを大事そうに見るが、ツルッと音がしてガラスケースをおとした。
パリーンと音が響き、ガラスケースの中にあるものがコロコロ転がり壁に当たり止まった。
それはなにか。よく見ると、めがある。くちがある。はながある。そう、これは
人の頭だった
それは目を見開き恐怖に顔を歪ませていた。
それをみた影は少し考えた後ぐしゃりとそれを潰した。
改めて棚においてあるガラスケースをみるとら全て人間の顔が入っていた
その影はすべてのガラスケースをふきんのようなものできれいにふき、ガサガサとでていった。
まるで、新たな獲物を狩りに行くために



◆          ◆               ◆                 ◆             ◆



「じゃ、そろそろ春にぃが帰ってきますから、いいですか?」
あのあと。あかねが変身できないことを知った日、また、美冬はあかねの家に泊まりに来ていた。そして、美冬は帰ろうとしてあかねにこえをかけるがあかねは上の空で聞いてなかった
「あかねさーん?」
ともう一度声をかける
「あ?あ、おう。じゃ、送りますか」
あかねは美冬の言葉に応えた。だが、あかねはある事を考えておりそれで頭がいっぱいいっぱいだった。
ディザイア。それの存在である。
倒すべき敵。だが、あかねには戦う力がない。存在は知っているのに。
だが、あかねは頭を振る。戦う力がないなら戦わない。それだけだ。
くらい小道をあかねと美冬は歩く。春だというのになぜか少し寒気がした。それは昼に聞いた神隠し事件のせいだろうか。
少し歩くと、美冬が足を止めた。あかねは後ろを振り向き心配そうに、どうした。と声をかけた。
美冬は少し考える素振りをし
「いや、誰かに見られた気がして・・・」
と言った。
「気のせいじゃねぇか?」
あかねはそう美冬にいいながら、何気なく夜空を見上げる。月と星がとても輝いて、綺麗だった。
「美冬ちゃん。星とかが綺麗ーーー」
あかねは美冬に声をかけようとする。が、声をかけれなかった。
「美冬・・・ちゃん?」
目の前に美冬がいないことに気づくのと天使くんが
「やられた!!」
と叫ぶのはほぼ同時だった。

◇            ◇


くらい小道を今度はあかねだけが走る。息を切らせ、ながら無我夢中で走り続ける。
さっき天使くんが叫んだ、やられた。という言葉。つまり、美冬が敵にさらわれたということである。
(くそ・・・)
後悔の念にかられるあかね。だが、今はそんなこと考える時間はない。美冬を探すため走り続ける
「まて!!ここらへんだ!!」
天使くんがそう叫びあかねを引き留める。
すると、その場所には本来壁があるはず。だがそこにはぽっかりと開いた空間があった。
その空間はとても禍々しく、入るのをためらうぐらいだった。だがあかねは進もうとする。が、それを天使くんは慌てて引き止める
「なにをしにいくんだ!?馬鹿か!!死ににいくようなものだぞ!!」
そう天使くんは激しい口調で言うがあかねも負けじと同じぐらいで激しい口調で
「うるせ!!あんたこそ何言ってんだ!!この先に私の大切な人がいるんだ!!たとえ無理だとしても私は助けに行く!!じゃないと・・・」
ここで一度息を整えあかねは天使くんに
「後悔する・・・後悔はしたくねぇんだ・・・」
震える声であかねはいった。
天使くんは直感的にわかった。恐らく彼女は止めても無駄だ。なら。
天使くんはあかねに近づき、やがて口を開けた。
「・・・助ける方法はある」
「契約を交わそう。あかね」
その言葉はあかねにとっては意外だった。
「おい、私は契約できないんじゃないか?」
と、頭に浮かんだ疑問をいう。が、天使くんは大丈夫と言うように顔を降り
「だから、俺がお前に力を貸そう。身体を魔力に変える」
あかねは何を言われたかわからなかった。
「俺はお前の考えに・・・少し恥ずかしいが感動した。だから力を貸そう。今何を言ってるかわからないかもしれないが、今はそれでいい。だから、俺と契約してくれ」
天使くんがそういう。その目は美冬に契約を提案した時と同じように目が真剣そのものであった。
「それで、美冬ちゃんを救えるなら」
そこまでいいあかねは自分の顔の前に手を持ってきて、それを強く握り締める。
「救えるなら、悪魔の契約。かわしてやるよ」
と言った。
天使くんは少し笑ったように見えた。実際は顔を変わらないのだが。
「俺は天使だ、悪魔じゃない・・・とにかく、俺と契約すれば美冬を救うことはできる」
というと、お互いの身体が光はじめた
「お前の望みを言え。何を願い、何を考え・・・そして、何をするか。この力を使い、何を望む?あかね」
天使くんがまるで、教会の神父のように、優しく問いかける。あかねは少しも悩まずにそして、ニヤリと笑いこう言った。
「この手の届く範囲で困ってるやつを全て助ける」
と、力強く言った
「よろしくな、悪魔」
「よろしくな、悪魔」
かたや、一人の少女に危険な道を歩ませる『悪魔』
かたや、一人の天使に一番させたくない、戦闘力がないものを契約させようとする『悪魔』
二人の悪魔の身体が眩しく光り、そして、あかねにその光が収縮し始めた。
そしてまばゆい光りが辺りを照らし始める
光が収まった時。そこにいたのはあかねだった。いや、服装は変わっている
髪は変わらないが、紫のセーラー服の上のようなものを着て、フリルのついたこれもまた短い紫の巻きスカートを履いて、それには小さな星がついていた。首元には赤い宝石がついた黄色いリボンをつけており、両手には星が描いてある指を出すタイプのグローブをつけ、銀のブーツを履き、紫のマントを羽織っている。そして可愛らしくヘソが覗いていた
そう、これが彼女の魔法少女姿である。
よし、と一言言って歩き出そうとするが、なにかがおかしい。
大きな穴が、先ほどより大きくなっている。そしていつの間にか天使くんが上にいた。
「おい、いつのまにそんなところに・・・!?」
また異変に気付く。声が高く、そして舌足らずで、うまくしゃべれない。
慌てたように自分の手を見てみる。そこにあったのは幼い手であった。
次に顔をさわる。プニプニしていて、いつもの自分とは全然違う感触。
「・・・ほれ、鏡だ」
ドクン、ドクン。
胸を打つ鼓動。天使くんが差し出した鏡。それを見ようとする。
ドクン。
いや、目を閉じている。開けたら何か終わってしまいそうだったから。
ドクン、ドクン、ドクン。
鼓動が早くなる。あかねは恐る恐る目を開け、鏡を見た。そこにいたのは
「なんじゃこりゃぁぁあああぁぁ!!」
5歳ぐらいの女の子になったあかねの姿があった
「お前の変身姿だ。あかね」
と、天使くんは言った。あかねは文句を言おうと声を出そうとするが、それよりも早く天使くんが言葉を続けた。
「言っただろう?お前魔力は少ない。でも一応変身はできる・・・簡単に言えばコップと水だな。コップがお前で水が魔力。だが、お前が気絶したり、リボンの宝石が砕けたら変身は解け、その時に殺されたら終わり。しかも不死身といっても痛いのは痛い。きをつけろよ」
あかねは少し後悔をしたが、自分の両手で頬を勢いよく叩き、よし。と呟いた。
「はやくみふゆちゃんをたすけにいくぞてんしくん」
そして穴にむかって駆け出した
「なぁ、てんしくん。どこにみふゆちゃんはいるんだ?」
走りながらあかねは天使くんにそう聞いた。
天使くんは周りを確認しつつ、あかねの問いに
「しらん。が、おそらく一番奥だろう」
と言った。あかねは今はそれを信用するしかないので、取り敢えず奥まで行く為走る速度を速めた
どれだけ走ったか。道は一本道なので迷う事はなかったが。
「いたっ!」
いきなりあかねがこけた。何かに躓いたのだ。擦った膝をさすりつつつまづいたものを確認する。
「ひっ・・・!!」
あかねは恐怖のあまりに驚いた。あかねが躓いたものは
「ひとの・・・あたま・・・!!」
無残に潰された人の頭だった。
とっさに口を押さえる。何かを吐き出しそうになったからだ。
隣で天使くんが何かを言っている。恐らく大丈夫かときいてるのだろう。
あかねは曖昧に頷き、先に進もうとする。
「ま、まって!!」
今度は後ろから声が聞こえた。恐る恐るあかねは振り返る。そこにいたのは
「・・・しょう?」
「あれ?なんで俺の名前知ってんの?」
そこにいたのは緑のスカーフを手に巻きつけてる翔だった。
恐らく、美冬と同じようにここに連れてこられたのだろう。恐怖と涙で顔がぐしゃぐしゃだった。
「あー・・・ちょっと、ね。」
あかねは曖昧にそう返す。すると翔は不思議そうな顔をした
「いや、早くここから逃げよう!!」
といって、翔はあかねを連れて外に出ようとする。が、あかねは動かなかった。
翔は驚いた顔であかねを見た。あかねは首を横に数回振り
「あたしには、やることがある。かえるならあんただけでかえりな」
といい、また走り出した。
その背中を翔はただ見つめていた
「いかにもって場所だな」
しゃべり方が慣れてきたのか、少し舌足らずな感じがなくなったあかね。その目の前には大きな扉があった。
この先に何かいる。恐らく美冬も。
あかねはごくりと生唾を飲み込んだ。
「行くぞ、悪魔」
あかねはそう言い、天使くんは
「わかった。悪魔」
と返した
そんな二人が扉を開けるのを後ろから見ていたものがいた。
翔だ。
あの後帰れと言われたが、好奇心に煽られあかねにこっそり付いてきた。実際とても怖い。かえりたい。好奇心は猫をも殺すというか、人は好奇心には勝てない。
するとあの幼女がいないことに気づいた翔は慌てて部屋の近くに行った。
まず、翔の目に入ったのは先ほどの少女。そして、気を失って倒れている少女。
そして
「なんだこれ・・・?」
大量のガラスケース。その中のほとんどに人の顔が入っていた。
が、それよりも異質なのがあの少女と対面している影。
それはこの世のものならざるオーラを発していた。
姿だけなら見たことがある。そう、蜘蛛だ。蜘蛛をそのまま巨大にしたように見える。
が、禍々しいオーラは、とても恐ろしく、子供の翔は腰を抜かし尻から地面に倒れた。
「ぐげげげ・・・!!」
「な!?翔!?」
その音に反応して二つの顔がこちらを向く。
先に動いたのは蜘蛛の怪物だった。翔に接近し、その口を開けて食べようとした。
死を覚悟し目をつむる翔。だが、いくらたっても死なない。
恐る恐る目を開けると、目の前にはあの少女が立っていた。だが、異変がある。
「がぁぁぁああああぁぁあぁぁぁ!!!」
「お、おまえ・・・右腕が・・・ないぞ?」
目の前の少女から右腕がなくなっていた。その痛みに叫ぶ少女。
だが、蜘蛛の怪物はくちゃくちゃと下品な音を立てて少女の腕を食べていた。
肩で息をする少女。だが、翔の方をちらりと見て
「無事で・・・よかった」
と言った。その時この少女にあかねの面影を見た気がしたが、翔は気を失った。
翔を助けるために腕を一本失ったあかね。だが、次の瞬間には
「・・・治ってる」
腕が生えていた。これが不死身の訳である。
目の前の怪物は驚いたように後ろに跳ねて距離をとった。
「あかね、あいつの正体が分かった。」
天使くんがそうあかねに言った
「あいつの欲は『収集欲』だ。人の頭を集めるのが好きなんだろ。けっ、趣味が悪いぜ」
天使くんがそう悪態をつく。あかねは、静かに顔を縦に振った。
「あぁ、ぶちのめしたいな・・・」
そういい、あかねは右足を前に出し、構えた。
収集欲も、威嚇のように鳴いた後、足を広げ、構えをとった。
先に動いたのはあかねだった。
思いっきり駆け出しあかねは収集欲に近づく。
収集欲は口から糸を吐き出すが、それをあかねはいとも簡単に避ける。
「口から糸を吐くなんてな!!蜘蛛は口から糸をださねぇぞ!!」
的外れなの文句を言いながらあかねは相手の足を払い、バランスを崩させた。
大きな衝撃音がでて、収集欲は右の体を地面につける
あかねを狙おうと顔を上げるが、そこにあかねはいなかった。どこに行ったか顔を横に回し、探す。すると
「こっちだ!バケモノォ!!」
上から声が聞こえ、空から降ってきたあかねが収集欲の背中にキックを食らわせた
「クギャァ!!」
何かが潰れるような音がして、怪物は地面にめり込んだ。
一度、飛び、あかねはまた一気に収集欲に詰め寄った。
収集欲は苦し紛れに糸を伸ばすが、それをもちろん避けるあかね。
そして
「ぶっ飛べ!!」
怪物の顔に思いっきりパンチをして、吹き飛ばした。
怪物が棚にぶつかりそしてたくさんのガラスケースが落ちてきた。
ガラスが割れる音が響き、怪物がその山に隠れた。
呼吸を整えるあかね。そして、ハッとしたように美冬に駆け寄る
「おい!大丈夫か!?」
と、あかねは美冬の肩を揺らす。しばらくすると美冬がゆっくり目を開ける
「あれ、ボクは一体・・・というか、あなたは?」
とりあえず大丈夫そうなので、あかねはふぅ、と息をつく。
美冬は、あかねの近くにいる天使くんを見た。そして
「もしかして、あかねさん?」
と、あかねに聞いた。
「あかあかああああかねさんじゃないな!!!」
慌ててそういう
「安心しろ。ここで起きたことは基本記憶からなくなる」
と天使くんがあかねにそういい、あかねは少し喜んだ。
少なくともここでおきたこの悲劇は忘れるのだ。美冬も、翔も。
「とにかくここから出よう」
あかねはそう言って美冬を肩で担ぎ、そして翔のところまで行き相も肩で担いだ
翔は意識を取り戻しており、まだ怯えた顔であかねを見ていた。
だが、あかねは翔の方を向き、そしてニコリと笑い
「あたしがいるから安心しろ。な?」
といった。
翔は顔を赤らめ目を逸らした。それを美冬は少しにやけながら見ていた。
そして、三人はここから脱出しようと歩き出した。
「・・・え?」
あかねは右肩が軽くなったのに気づいた。先ほどまで翔を支えてた肩。
恥ずかしくて離れたと考える。が、美冬が怯えた目で後ろを見ていた。
馬鹿な。そんなはずはない。
そう考えあかねは後ろを振り向く。
そこにはガラスケースの山から出てきた収集欲と、糸にひきづられている翔の姿があった
「うわぁぁぁぁあああぁぁ!!」
翔はそう叫び助けを求める。あかねは急いで駆け出す。
走り、そして翔に手を伸ばし、掴んだ。
両足に力を入れ、翔を引っ張るあかね。だが、抜けない。
すると、収集欲の顔が少し笑ったように見えた。
すると糸の力が強くなりあかねは逆に引きずられていく。
「離して、たまるか!!」
といい、さらに足に力を込める。
「誰も、死なせねぇ!!みんな、助けるん、だ!!」
今度は両手に力を入れ、さらに引っ張った。
今度はあかねの力が勝ってるのか、糸がだんだんとちぎれそうになっていく。
雄叫びをあげあかねは最後の力を込め引っ張る。
収集欲が、ニヤリと笑ったようにみえた。
「え?」
するといきなり糸を引っ張る力が急に緩くなり、あかねは反動で体勢を崩してしまった。
スルリと、聞きたくない音が聞こえた。
あかねはバッ、と、顔を上げ、さっきまで掴んでいた手を見た。
そこにあったのは翔ではなく、翔が大切にしていたスカーフだった。
翔の腕を掴んでなかった
翔も驚いた顔をした。が、それは一瞬だった。
すぐに恐怖に顔が青ざめそして歪んだ。
助けを求めてまた手を伸ばす。あかねもそれに手を伸ばし掴もうとする。
だが。その手は翔をつかむことはなかった。
「嫌だぁあぁあああぁあぁああぁぁあぁああぁぁあぁぁあぁああぁぁあぁぁあぁああぁぁあぁあぁああぁあぁああぁあぁああぁぁあぁああぁぁあぁぁあぁああぁぁあぁあぁああぁあぁああぁあぁああぁぁあぁああぁぁあぁあぁああぁぁあぁああぁぁあぁぁあぁああぁぁあぁあぁああぁぁあぁああぁぁあ!!!!」
翔が収集欲の口に入って行き、そして
ぐちゃり。ぐちゃり。
何かを潰す音がした。
それを呆然と見つめるあかね。すると収集欲が何かを吐き出した。
それは人間の腕だった。
あかねはそれを呆然と見つた。
暫く間があった。ぐちゃり。ぐちゃり。と気持ち悪い音が響く。
「チクショぉぉおおぉぉおおぉぉぉ!!!!」
あかねはそう叫び、涙を流した。
あかねの力不足のせいで一人の少年を殺してしまった。
すると、天使くんも震えていた。まるで泣いてるようだった。
「おい!あいつをぶっ飛ばす方法を教えろ!!!」
あかねはそう天使くんに聞いた
「右手に魔力を込めてぶん殴れ。多分それで死ぬ」
天使くんはあくまで冷静にそういうが、やはり体は震えていた。
収集欲はニヤニヤしてあかねを見ていた。そして、口から糸を飛ばし、それはあかねに巻き付いた。
そして一気に引っ張るーーー!!
そして醜く口を開ける収集欲
だが、あかねは涙を流している顔で収集欲を睨みつけた。
「てめぇが・・・てめぇが・・・」
そういうと、右手が光りだした。その光はとても明るく、その眩しさに収集欲は少し顔を右にそらした。
「てめぇが翔を!!」
そして、無理やり地面に足をつきブーツが擦れる。が、気にしない
「絶対にゆるさねぇ!!」
そして両足に力を込め、右手にさらに魔力を込める。
収集欲は驚き、糸をまた吐く。それをあかねは左手で防ぎそして収集欲の顔の下に体を滑り込ませる
「マジカル☆ーーー」
そして、魔力を込めて右手で思いっきり収集欲の顔を殴る
グチャァと潰れる音が聞こえた
「ーーーインパクトォォォォ!!!」
潰れる音と爆発音が同時に響く。
すると収集欲が空に大きく打ち上げられる。その勢いであかねに巻き付いていた糸が切れた。
大きく打ち上げられ、そして地面に衝突する収集欲。
だが、次の瞬間には光の粒子のようになり消えていった。
そして、あかねは倒れた

◆     ◆
あかねは黒い世界にいた。
その世界をあかねは歩く。なぜか、ここは夢の世界だとすぐに理解した。
すると目の前に一人の少年がいた。その少年は手を伸ばした。
あかねもその手を取ろうと手を伸ばす。
たが、次の瞬間には「その手」しか残ってなかった。
あかねは震える手でそれを握る
「オマエガコロシタ」
違う。
「オマエガショウヲコロシタ」
違う!
「オマエガショウヲムザンニコロシタ」
違う!!
あかねはそう叫び聞こえてくる声を無視しようとした。だが、今度ははっきり耳元で声が聞こえた。
「オマエハヒトヲスクエナイ」

◆    ◆

「違うっ!!!」
そう叫び布団から飛び起きる。すると近くにいた美冬が心配そうにあかねを見ながら
「大丈夫ですか?あかねさん」
ときいた。
あかねは今冷や汗をかいて、少し気持ち悪かった。
だが、あかねは無理して笑顔を作り、そして、その手に握ってる緑のスカーフを見て
泣いた
「あたじはぁ・・・!!誰も守れない!!」
泣きながらそういうあかね。美冬はそのあかねの背中をさすりながら
「少なくともボクを助けてくれました。ボクにとってあなたは」
ここまで言い、少し間を開けた。あかねが泣き顔を美冬に向けた。
「ボクにとってあなたはヒーローです」
「みぶゆぢゃん!!!」
あかねは美冬に抱きついた。よしよしと、あかねは美冬の頭を撫でた。
あかねは、泣きながら考えた。
翔は救えなかった。でも、少なくともこの子だけは。
命に代えても守る。そしてもう誰も殺さない
と、胸に誓った。
泣き声は暫く響いた。
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