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第三話 二人目の魔法少女 その二
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「うぅ・・・ぐぅ・・・」
呻き声を上げながら1人の男性が道を歩く。するとチャリンと、ポケットから硬貨が落ちていく。それをその男は拾って、何を思ったかそれを口の中に入れ、口を動かした。
バリ、バリ。
硬貨が割れる音と歯がぶつかる音が奇妙な音楽を奏でた。その男の目や、その音楽でここはとても不気味というか異様というか。普通の人では到底直視できない状況だった。
がさり。
何かが動く音が聞こえその男はその音をしたところを見る。そこには小さな女の子が怯えた目で男を見ていた。そして後ろに走り出す
男は目をギロリとそこに向けて少女を追うために走り出す。
その男はとても足が早く、目の前の少女をだんだんと追い詰める。そして遂に少女は行き止まりに追い込まれてしまう。
「かねを・・・よこせ・・・!!」
そう言いながらじりじりと歩み寄っていく。そして少女に触ろうと手を伸ばす。
が、少女は震えながらも男を睨みつけた。その瞳は安心しきってる目であった。
「まて!!」
すると後ろから幼い少女の叫び声が聞こえてきた。男はゆっくりと後ろを振り向く。
するとそこには1人少女がマントをはためかせながら仁王立ちで立っていた。そして人差し指でおことを指差す。
そして大きく息を吸い込んだ。
「ひとーーーつ!!!
助けを求める声が聞こえたら!!
ふたーーーつ!!
どこからでも駆けつける!!
みーーーーつ!!
そしてこの名を胸に刻め!!あたしの名前は・・・!!」
と、ここまで叫んだ後、一度息を整えて、人差し指を天に向けた
「魔法少女マジカル☆アナザーだっ!!」
その声に男は少し身が固まった。その隙をついて美冬がアナザーの近くまで走り寄ってくる。
そしてアナザーは少し背伸びしながら美冬の頭に手を置いた。
「よくやった。後は任せとけ」
その言葉を聞いた後美冬は糸が切れた人形のようにその場に座り込んだ。
歩きながらアナザーは天使くんと会話をする
「あいつ、本当にディザイアか?人間にしか見えんが」
「多分あいつは契約したばかりなんだろう」
「・・・契約?」
「そうだ。ディザイアは人間の欲を利用するために契約を持ち込む。欲を解消させるから器をよこせとな」
「器?なんだ、それ」
「器は器だ・・・!ちょうど欲が成長するぞ・・・!!」
と、天使くんが言うと目の前の男は苦しそうにうめき出した。だが、顔はとても満足そうにも見えてアナザーは少し恐ろしくなる。
次の瞬間、男の体から光の粒子が飛び出してきた。そして男は倒れその粒子は一箇所に集まり始める。
その粒子はだんだんと大きくなり、やがて形を成してきた。
そして少しづつ光が引いていくとそこには巨大な金に光るカニがいた。
「金銭欲はカニか?・・・まさか、貯金、チョキンだからか?」
と、少し呑気なことを考えているアナザーだが、次の瞬間目を見開いた。
金銭欲が男に向かってハサミを振り下ろそうとしているーーー!!
アナザーは男に向かって駆け出した。そして少しハサミの攻撃を擦りながらも男を抱きかかえ、安全なところに下ろした。
「あれが、器だ。ディザイアは、成長した後成長元の人間を食す。そして欲を解消したら、その成長元の人間になるんだ」
「はっ、胸糞悪いな」
と、アナザーは吐き捨てる。そして音のをちらりと見る。
満足そうな顔で眠っている男は先ほどまでの異様な雰囲気は消えていた。
アナザーは次に金銭欲に目を向けて、息を整え始める。そしていつものように拳を開いては閉じる。
「行くぞ・・・バケモノ!!」
と、言い金銭欲に向かって駆け出すーーー!!
金銭欲も馬鹿ではない。アナザーに向かってハサミで攻撃を仕掛ける。が、大きな図体なため攻撃に時間がかかりアナザーにはあたりもかすりもしない。
そしてアナザーは一気に飛び上がった!!
「マジカル☆インパクト!」
そして金銭欲の腹に魔力を込めた拳で攻撃をする。
だが
「聞いてねぇ・・・!?」
そう、金銭欲の固い甲羅を前にしてあかねの攻撃は通用しなかった。
「やば・・・」
少し動揺してしまった。その隙を突かれアナザーは金銭欲のハサミが横腹に思いっきり突きさささる---!!
「ぐぅぅううぅ!?」
アナザーは壁に叩きつけられて、口から血を吐きそのまま地面に落ちる。
口から荒く呼吸をしながらアナザーは震えながら立ち上がる。痛いが、ここで逃げるわけにはいかない。おそらく内臓も潰れただろうが、魔力で治っていく。
アナザーな目を閉じて考える。お話の中でこういうときどうやってたか。
「一度でダメなら、100回殴る!!」
と、叫びアナザーはまた駆け出した。
金銭欲は今度は何もしない。自分は耐えれる自信があるから。
それを見てアナザーは好都合と言うように笑い、また魔力を込めた。
両手に。
そして先ほどと同じように飛び上がり両手で金銭欲の腹を狙う!!
「新技!!マジカル☆マシンガン!!」
両手で繰り出される無数のパンチの嵐に金銭欲は押されていき、次第にその甲羅にヒビが入っていく。
アナザーは止めと言わんばかりに思いっきり右の拳で金銭欲の腹を殴った!!
すると、甲羅が割れる音がして金銭欲は少しよろめく。アナザーはその隙を見逃さないという風に一気にそのヒビが入ったところに近づく。
「・・・あ、あれ!?」
なんと、金銭欲のどこにもヒビがなかった。どこを殴ることができずに少しだけ止まってしまう。そこを金銭欲に突かれハサミをもろに腹に食らってしまい後ろに吹き飛ばされる。
(あ、あいつも体を修復できんのか・・・!?)
そんなことを考えながら、勢いよく背中を壁にぶつけてしまい、今度は地面に落ちずめり込んでしまう。先ほどよりも多くの血を口から吐いてしまい、また、怪我も多くしてしまった。
体は修復されるが、それでも痛いものは痛い。アナザーは痛みで震える腕で壁から離れようとした。
すると、いきなり体が軽くなり中に浮かぶ。いや、掴まれていた。
金銭欲のハサミに。
もちろん助けたわけではない。金銭欲は挟む力をだんだんと強くしていった
「うぐぁ・・・!!」
絞り出したかのような呻き声を上げてアナザーは体を潰されていく。
鋭利なハサミにより腕がだんだんと切れていく。徐々に痛みが増していき、赤い血も滴り落ちていく。
すると金銭欲がニヤリ笑った。
金銭欲は何もしてないもう片方のハサミを振り上げた。そして。
ぐちゃり。
「ながぁぁぁあああぁぁああっ!!!」
何か柔らかいものが潰れる音が聞こえ、アナザーは叫び声を上げた。
金銭欲はアナザーの右目を潰したのだ。
右目から流れる赤い鮮血はまるで涙のように流れていく。アナザーの頬を、肩を、そして金銭欲のハサミを伝い血が流れていく。
「あ・・・あ・・・ああ・・・」
下をうつむき呻き声をあげるアナザー。それでも金銭欲は挟む力を緩めない。逆に強くしていく。
そんな光景を美冬は遠くから吐き気を抑えながら見ることしかできなかった。
あんなに力強かったアナザーが、今はあんなにも弱々しく見える。
「くそ、回復できても、それ以上のダメージを負って気絶なんかしたら・・・!!」
天使くんが美冬の横で焦りながらそう言う。自分では何もできないからこそ、焦りが強い。
「誰か・・・助けて・・・!」
美冬はそう叫ぶ。それは誰も聞こえてない。アナザーも声が聞こえないほど叫んでいるからだ。それでも美冬は涙を浮かべながら助けを求める。
すると金銭欲が今度はアナザーの首めがけてハサミを突き出そうとするーーー!!
「やめてーーーー!!」
泣きながらそう叫ぶのと同時に金銭欲がハサミをアナザーの首めがけて一気に伸ばす。
美冬はおもわず目を瞑る。その時涙が一雫地面に落ちた。
その涙が地面に落ちるた。すると、
「ローズ・シャワー!!!」
何処かからかその声が聞こえ、無数の黒い弾丸が金銭欲に襲いかかるーーー!!
そして、金銭欲のハサミにあたり爆発する!!
金銭欲は声をあげて後ろに少し飛んで距離を取る。
美冬は顔を上げると、目の前に黒い服に身を包んだ一人の女性がいた。その格好はまるで。
「黒い魔法少女・・・?」
そう、美冬が助けを求めた黒い魔法少女だった。
黒い魔法少女は手を開くと、そこが黒く光ると杖を握っていた。そしてそれを一度大きく振る。
そして優雅にアナザーの元まで歩いていく。
「あとは任せて。あかねちゃん」
と、アナザーに声をかけた。
「なんで・・・名前を・・・?」
「ウチの名前は、ブラックローズ・・・大事な人を傷つけたあんたは・・・許さへんで・・・!!」
その声。その喋り方。そして、あの聞き覚えがあるエセ関西弁。
「杏子さん・・・!!」
「せーかい。杏子おねぇさんや」
杏子こと、ブラックローズはもう一度ニコリと笑い金銭欲に向き合った。
その背中なら見られるオーラは、とても優しげだが、どこか激しさも混ざっていた。
ブラックローズが、手に握る杖を右から左にゆっくり払う。
ギュン!!
すると後ろに無数の黒い薔薇が現れた。それを見たアナザーは少し見とれて金銭欲は顔が青ざめた。
ブラックローズは今度は杖を金銭欲に向ける。
すると後ろにあった黒い薔薇が金銭欲に襲いかかる!!
金銭欲はハサミでガードするが勢いに押されて後ろに倒れる。
それでもブラックローズは攻撃を止めない。まだまだ黒い薔薇を出し続ける。
それを見ていたアナザーは驚きのあまりに声が出せなくなっていた。なんせ、自分じゃできないようなことを彼女は平然とやってのけた。ますます自分がひよっこだと実感していく。
そして攻撃が止んだとき、ブラックローズはアナザーに手をかざした。
するとアナザーの体の傷がだんだんと治っていった。そして、体の疲労感も取れていく。
「これがウチの能力。浄化や。多少の傷なら簡単に治せるんやで」
そう言いながら彼女はアナザーの頭に手を置き優しく撫でる。
もう戦わなくていいと言ってるようだった。
アナザーはしばらくボーッとしていたが、その撫でる手をつかんだ。
そしてアナザーは立ち上がり、ブラックローズの前に立つ。
「ありがたいけど、守られるのはしょうに合わないですからね。それに考えがある」
そう言いながら拳を握りしめ、右足を前に出してそこに体重をかけて戦う姿勢をとる。
ブラックローズはため息をもらしながら、杖をまっすぐ前に向ける。
そしてゆっくり起き上がる金銭欲。その目は怒りでどす黒く濁っていた。
暫くの間、ゆっくり時間が過ぎていく。そんな中アナザーが口を開けて。
「さぁ。第二ラウンドだ・・・!!」
そう声をかけると同時に2人の魔法少女と一体のバケモノは一気に前に駆け出した!!
ブラックローズは後ろから弾幕を展開して金銭欲を攻撃する。金銭欲も応戦するためハサミでブラックローズを狙う。
アナザーの攻撃はもう効かないとわかってるからだ。だからまずは危険が高いブラックローズを狙う。
もうすぐでハサミが当たるというときに右足に違和感を感じた。すると金銭欲はぐらりと右に倒れる!!
足元を見るとアナザーが右足を破壊した後だった。アナザーは悪戯っ子のように笑っていた。
それが金銭欲の怒りをさらに加速させた。標的をアナザーに変えやみくもにハサミで狙う!!
アナザーは擦りながらも避けるが、ついに捕まってしまう。
それを誇らしげに持ち上げる金銭欲。そして挟む力をあげてアナザーを苦しめる。
ブラックローズ今は遠くから見つめることしかできなかった。杖を強く握りしめている。
アナザーは苦しみながらも考えた。自分のせいでブラックローズは攻撃ができないし、美冬たちも悲しませてしまう。
それだけは嫌だ。何がなんでもみんなを守る。守る。守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守るまもるまもるまもるまもるまもるマモルマモルマモルマモルーーー!!
プツン。と、アナザーの中で何かが切れた。そしてゆっくりと笑った。
その光景は天使くんたちの背中に悪寒が走るほど不気味だった。
「あたしが犠牲になればいいんだよね」
そう呟くと同時に、アナザーの体が光りだし、段々と輝きを増していく。そして。
ズドーーーーン!!!!
アナザーが、爆発した。そして金銭欲のハサミも消し飛んだ。
ブラックローズは叫ぶのを抑えた。アナザーが作ったチャンスを無駄にしてはいけない。先ほど自分に考えがあると言ってたが、まさかこんなことだとは!!
杖にありったけの魔力を込めて金銭欲に向ける。狙うは治りかけているヒビの間。
「ローズ・・・」
と、言うと杖の先が魔力で作られた黒い薔薇の形になっていき、その先が黒く光り出す---!!
「バスター!!!!」
と言うと同時に黒い薔薇から、極太のレーザーが、爆発音とともに金銭欲に向かっていく。
そのレーザーは金銭欲を貫き、そして金銭欲の断切魔と共に爆発した。
金銭欲は跡形もなく消し飛び、光の粒子が空に舞っていく。
ブラックローズはアナザーの名前を叫びながら走り出す。もう瓦礫などは修復されている。アナザーはすぐに見つかるはず。
結論から言えばアナザーはすぐに見つかった。だが、両腕がなくなっていた。幼い体の肩見える骨がとても生々しかった。
ブラックローズは慌てて浄化をする。痛みはだんだんと引いていくが、アナザーの額には脂汗が滲んでいた。
それもそうだろう。アナザーは自分の両腕を爆発させたのだ。ただでさえ体にダメージを受けていたのに、自分から体を傷つける。その狂気とも取れる行動にブラックローズは思わず生唾を飲み込んだ。
「な、なぁ、ブラック、ローズさんよ・・・」
突然アナザーが喋り出した。それは、苦しそうにしている中で無理やり出している声であった。
「あたしは、まだまだひよっこだ・・・だか、ら、戦い方を、おしえ、てくださ、い・・・あたしが、みんなをまもる、から」
その声は生まれたての子鹿のように震えているが、覚悟だけは感じられた。
それがブラックローズにとっては恐ろしかった。彼女はまだ女子高生なのに、この覚悟はなんだ。
自分が見ないといけない。彼女は直感的にそう思った。
だから、普段なら断るこの話をアナザーの前に手を差し出すことで了承を表した。
アナザーも、笑顔になりその伸ばされた手を掴む。
「だけど、うちの修行はきついで?ついてこれるか?」
ブラックローズ・・・いや、変身を解き、杏子になった彼女がそう問いかける。アナザーの変身を解いてあかねに戻る。
「もち、ろん。その方、がいい、じゃん、か」
こうして奇妙な師弟関係が生まれた。
《次回予告!!》
「無理はしない。それからや」
「魔力をコントロールする!!」 「てめぇ・・・忘れたとは言わせねぇぞ!!」
「なんで、貴女が・・・!!」
《第四話 蒼き魔法少女》
お楽しみに!!
呻き声を上げながら1人の男性が道を歩く。するとチャリンと、ポケットから硬貨が落ちていく。それをその男は拾って、何を思ったかそれを口の中に入れ、口を動かした。
バリ、バリ。
硬貨が割れる音と歯がぶつかる音が奇妙な音楽を奏でた。その男の目や、その音楽でここはとても不気味というか異様というか。普通の人では到底直視できない状況だった。
がさり。
何かが動く音が聞こえその男はその音をしたところを見る。そこには小さな女の子が怯えた目で男を見ていた。そして後ろに走り出す
男は目をギロリとそこに向けて少女を追うために走り出す。
その男はとても足が早く、目の前の少女をだんだんと追い詰める。そして遂に少女は行き止まりに追い込まれてしまう。
「かねを・・・よこせ・・・!!」
そう言いながらじりじりと歩み寄っていく。そして少女に触ろうと手を伸ばす。
が、少女は震えながらも男を睨みつけた。その瞳は安心しきってる目であった。
「まて!!」
すると後ろから幼い少女の叫び声が聞こえてきた。男はゆっくりと後ろを振り向く。
するとそこには1人少女がマントをはためかせながら仁王立ちで立っていた。そして人差し指でおことを指差す。
そして大きく息を吸い込んだ。
「ひとーーーつ!!!
助けを求める声が聞こえたら!!
ふたーーーつ!!
どこからでも駆けつける!!
みーーーーつ!!
そしてこの名を胸に刻め!!あたしの名前は・・・!!」
と、ここまで叫んだ後、一度息を整えて、人差し指を天に向けた
「魔法少女マジカル☆アナザーだっ!!」
その声に男は少し身が固まった。その隙をついて美冬がアナザーの近くまで走り寄ってくる。
そしてアナザーは少し背伸びしながら美冬の頭に手を置いた。
「よくやった。後は任せとけ」
その言葉を聞いた後美冬は糸が切れた人形のようにその場に座り込んだ。
歩きながらアナザーは天使くんと会話をする
「あいつ、本当にディザイアか?人間にしか見えんが」
「多分あいつは契約したばかりなんだろう」
「・・・契約?」
「そうだ。ディザイアは人間の欲を利用するために契約を持ち込む。欲を解消させるから器をよこせとな」
「器?なんだ、それ」
「器は器だ・・・!ちょうど欲が成長するぞ・・・!!」
と、天使くんが言うと目の前の男は苦しそうにうめき出した。だが、顔はとても満足そうにも見えてアナザーは少し恐ろしくなる。
次の瞬間、男の体から光の粒子が飛び出してきた。そして男は倒れその粒子は一箇所に集まり始める。
その粒子はだんだんと大きくなり、やがて形を成してきた。
そして少しづつ光が引いていくとそこには巨大な金に光るカニがいた。
「金銭欲はカニか?・・・まさか、貯金、チョキンだからか?」
と、少し呑気なことを考えているアナザーだが、次の瞬間目を見開いた。
金銭欲が男に向かってハサミを振り下ろそうとしているーーー!!
アナザーは男に向かって駆け出した。そして少しハサミの攻撃を擦りながらも男を抱きかかえ、安全なところに下ろした。
「あれが、器だ。ディザイアは、成長した後成長元の人間を食す。そして欲を解消したら、その成長元の人間になるんだ」
「はっ、胸糞悪いな」
と、アナザーは吐き捨てる。そして音のをちらりと見る。
満足そうな顔で眠っている男は先ほどまでの異様な雰囲気は消えていた。
アナザーは次に金銭欲に目を向けて、息を整え始める。そしていつものように拳を開いては閉じる。
「行くぞ・・・バケモノ!!」
と、言い金銭欲に向かって駆け出すーーー!!
金銭欲も馬鹿ではない。アナザーに向かってハサミで攻撃を仕掛ける。が、大きな図体なため攻撃に時間がかかりアナザーにはあたりもかすりもしない。
そしてアナザーは一気に飛び上がった!!
「マジカル☆インパクト!」
そして金銭欲の腹に魔力を込めた拳で攻撃をする。
だが
「聞いてねぇ・・・!?」
そう、金銭欲の固い甲羅を前にしてあかねの攻撃は通用しなかった。
「やば・・・」
少し動揺してしまった。その隙を突かれアナザーは金銭欲のハサミが横腹に思いっきり突きさささる---!!
「ぐぅぅううぅ!?」
アナザーは壁に叩きつけられて、口から血を吐きそのまま地面に落ちる。
口から荒く呼吸をしながらアナザーは震えながら立ち上がる。痛いが、ここで逃げるわけにはいかない。おそらく内臓も潰れただろうが、魔力で治っていく。
アナザーな目を閉じて考える。お話の中でこういうときどうやってたか。
「一度でダメなら、100回殴る!!」
と、叫びアナザーはまた駆け出した。
金銭欲は今度は何もしない。自分は耐えれる自信があるから。
それを見てアナザーは好都合と言うように笑い、また魔力を込めた。
両手に。
そして先ほどと同じように飛び上がり両手で金銭欲の腹を狙う!!
「新技!!マジカル☆マシンガン!!」
両手で繰り出される無数のパンチの嵐に金銭欲は押されていき、次第にその甲羅にヒビが入っていく。
アナザーは止めと言わんばかりに思いっきり右の拳で金銭欲の腹を殴った!!
すると、甲羅が割れる音がして金銭欲は少しよろめく。アナザーはその隙を見逃さないという風に一気にそのヒビが入ったところに近づく。
「・・・あ、あれ!?」
なんと、金銭欲のどこにもヒビがなかった。どこを殴ることができずに少しだけ止まってしまう。そこを金銭欲に突かれハサミをもろに腹に食らってしまい後ろに吹き飛ばされる。
(あ、あいつも体を修復できんのか・・・!?)
そんなことを考えながら、勢いよく背中を壁にぶつけてしまい、今度は地面に落ちずめり込んでしまう。先ほどよりも多くの血を口から吐いてしまい、また、怪我も多くしてしまった。
体は修復されるが、それでも痛いものは痛い。アナザーは痛みで震える腕で壁から離れようとした。
すると、いきなり体が軽くなり中に浮かぶ。いや、掴まれていた。
金銭欲のハサミに。
もちろん助けたわけではない。金銭欲は挟む力をだんだんと強くしていった
「うぐぁ・・・!!」
絞り出したかのような呻き声を上げてアナザーは体を潰されていく。
鋭利なハサミにより腕がだんだんと切れていく。徐々に痛みが増していき、赤い血も滴り落ちていく。
すると金銭欲がニヤリ笑った。
金銭欲は何もしてないもう片方のハサミを振り上げた。そして。
ぐちゃり。
「ながぁぁぁあああぁぁああっ!!!」
何か柔らかいものが潰れる音が聞こえ、アナザーは叫び声を上げた。
金銭欲はアナザーの右目を潰したのだ。
右目から流れる赤い鮮血はまるで涙のように流れていく。アナザーの頬を、肩を、そして金銭欲のハサミを伝い血が流れていく。
「あ・・・あ・・・ああ・・・」
下をうつむき呻き声をあげるアナザー。それでも金銭欲は挟む力を緩めない。逆に強くしていく。
そんな光景を美冬は遠くから吐き気を抑えながら見ることしかできなかった。
あんなに力強かったアナザーが、今はあんなにも弱々しく見える。
「くそ、回復できても、それ以上のダメージを負って気絶なんかしたら・・・!!」
天使くんが美冬の横で焦りながらそう言う。自分では何もできないからこそ、焦りが強い。
「誰か・・・助けて・・・!」
美冬はそう叫ぶ。それは誰も聞こえてない。アナザーも声が聞こえないほど叫んでいるからだ。それでも美冬は涙を浮かべながら助けを求める。
すると金銭欲が今度はアナザーの首めがけてハサミを突き出そうとするーーー!!
「やめてーーーー!!」
泣きながらそう叫ぶのと同時に金銭欲がハサミをアナザーの首めがけて一気に伸ばす。
美冬はおもわず目を瞑る。その時涙が一雫地面に落ちた。
その涙が地面に落ちるた。すると、
「ローズ・シャワー!!!」
何処かからかその声が聞こえ、無数の黒い弾丸が金銭欲に襲いかかるーーー!!
そして、金銭欲のハサミにあたり爆発する!!
金銭欲は声をあげて後ろに少し飛んで距離を取る。
美冬は顔を上げると、目の前に黒い服に身を包んだ一人の女性がいた。その格好はまるで。
「黒い魔法少女・・・?」
そう、美冬が助けを求めた黒い魔法少女だった。
黒い魔法少女は手を開くと、そこが黒く光ると杖を握っていた。そしてそれを一度大きく振る。
そして優雅にアナザーの元まで歩いていく。
「あとは任せて。あかねちゃん」
と、アナザーに声をかけた。
「なんで・・・名前を・・・?」
「ウチの名前は、ブラックローズ・・・大事な人を傷つけたあんたは・・・許さへんで・・・!!」
その声。その喋り方。そして、あの聞き覚えがあるエセ関西弁。
「杏子さん・・・!!」
「せーかい。杏子おねぇさんや」
杏子こと、ブラックローズはもう一度ニコリと笑い金銭欲に向き合った。
その背中なら見られるオーラは、とても優しげだが、どこか激しさも混ざっていた。
ブラックローズが、手に握る杖を右から左にゆっくり払う。
ギュン!!
すると後ろに無数の黒い薔薇が現れた。それを見たアナザーは少し見とれて金銭欲は顔が青ざめた。
ブラックローズは今度は杖を金銭欲に向ける。
すると後ろにあった黒い薔薇が金銭欲に襲いかかる!!
金銭欲はハサミでガードするが勢いに押されて後ろに倒れる。
それでもブラックローズは攻撃を止めない。まだまだ黒い薔薇を出し続ける。
それを見ていたアナザーは驚きのあまりに声が出せなくなっていた。なんせ、自分じゃできないようなことを彼女は平然とやってのけた。ますます自分がひよっこだと実感していく。
そして攻撃が止んだとき、ブラックローズはアナザーに手をかざした。
するとアナザーの体の傷がだんだんと治っていった。そして、体の疲労感も取れていく。
「これがウチの能力。浄化や。多少の傷なら簡単に治せるんやで」
そう言いながら彼女はアナザーの頭に手を置き優しく撫でる。
もう戦わなくていいと言ってるようだった。
アナザーはしばらくボーッとしていたが、その撫でる手をつかんだ。
そしてアナザーは立ち上がり、ブラックローズの前に立つ。
「ありがたいけど、守られるのはしょうに合わないですからね。それに考えがある」
そう言いながら拳を握りしめ、右足を前に出してそこに体重をかけて戦う姿勢をとる。
ブラックローズはため息をもらしながら、杖をまっすぐ前に向ける。
そしてゆっくり起き上がる金銭欲。その目は怒りでどす黒く濁っていた。
暫くの間、ゆっくり時間が過ぎていく。そんな中アナザーが口を開けて。
「さぁ。第二ラウンドだ・・・!!」
そう声をかけると同時に2人の魔法少女と一体のバケモノは一気に前に駆け出した!!
ブラックローズは後ろから弾幕を展開して金銭欲を攻撃する。金銭欲も応戦するためハサミでブラックローズを狙う。
アナザーの攻撃はもう効かないとわかってるからだ。だからまずは危険が高いブラックローズを狙う。
もうすぐでハサミが当たるというときに右足に違和感を感じた。すると金銭欲はぐらりと右に倒れる!!
足元を見るとアナザーが右足を破壊した後だった。アナザーは悪戯っ子のように笑っていた。
それが金銭欲の怒りをさらに加速させた。標的をアナザーに変えやみくもにハサミで狙う!!
アナザーは擦りながらも避けるが、ついに捕まってしまう。
それを誇らしげに持ち上げる金銭欲。そして挟む力をあげてアナザーを苦しめる。
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アナザーは苦しみながらも考えた。自分のせいでブラックローズは攻撃ができないし、美冬たちも悲しませてしまう。
それだけは嫌だ。何がなんでもみんなを守る。守る。守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守る守るまもるまもるまもるまもるまもるマモルマモルマモルマモルーーー!!
プツン。と、アナザーの中で何かが切れた。そしてゆっくりと笑った。
その光景は天使くんたちの背中に悪寒が走るほど不気味だった。
「あたしが犠牲になればいいんだよね」
そう呟くと同時に、アナザーの体が光りだし、段々と輝きを増していく。そして。
ズドーーーーン!!!!
アナザーが、爆発した。そして金銭欲のハサミも消し飛んだ。
ブラックローズは叫ぶのを抑えた。アナザーが作ったチャンスを無駄にしてはいけない。先ほど自分に考えがあると言ってたが、まさかこんなことだとは!!
杖にありったけの魔力を込めて金銭欲に向ける。狙うは治りかけているヒビの間。
「ローズ・・・」
と、言うと杖の先が魔力で作られた黒い薔薇の形になっていき、その先が黒く光り出す---!!
「バスター!!!!」
と言うと同時に黒い薔薇から、極太のレーザーが、爆発音とともに金銭欲に向かっていく。
そのレーザーは金銭欲を貫き、そして金銭欲の断切魔と共に爆発した。
金銭欲は跡形もなく消し飛び、光の粒子が空に舞っていく。
ブラックローズはアナザーの名前を叫びながら走り出す。もう瓦礫などは修復されている。アナザーはすぐに見つかるはず。
結論から言えばアナザーはすぐに見つかった。だが、両腕がなくなっていた。幼い体の肩見える骨がとても生々しかった。
ブラックローズは慌てて浄化をする。痛みはだんだんと引いていくが、アナザーの額には脂汗が滲んでいた。
それもそうだろう。アナザーは自分の両腕を爆発させたのだ。ただでさえ体にダメージを受けていたのに、自分から体を傷つける。その狂気とも取れる行動にブラックローズは思わず生唾を飲み込んだ。
「な、なぁ、ブラック、ローズさんよ・・・」
突然アナザーが喋り出した。それは、苦しそうにしている中で無理やり出している声であった。
「あたしは、まだまだひよっこだ・・・だか、ら、戦い方を、おしえ、てくださ、い・・・あたしが、みんなをまもる、から」
その声は生まれたての子鹿のように震えているが、覚悟だけは感じられた。
それがブラックローズにとっては恐ろしかった。彼女はまだ女子高生なのに、この覚悟はなんだ。
自分が見ないといけない。彼女は直感的にそう思った。
だから、普段なら断るこの話をアナザーの前に手を差し出すことで了承を表した。
アナザーも、笑顔になりその伸ばされた手を掴む。
「だけど、うちの修行はきついで?ついてこれるか?」
ブラックローズ・・・いや、変身を解き、杏子になった彼女がそう問いかける。アナザーの変身を解いてあかねに戻る。
「もち、ろん。その方、がいい、じゃん、か」
こうして奇妙な師弟関係が生まれた。
《次回予告!!》
「無理はしない。それからや」
「魔力をコントロールする!!」 「てめぇ・・・忘れたとは言わせねぇぞ!!」
「なんで、貴女が・・・!!」
《第四話 蒼き魔法少女》
お楽しみに!!
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それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
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【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
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たしかに私は王妃になった。
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クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
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主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
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突然ですが質問です。
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