ヒロイン=ヒーロー

は~げん

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第四話 蒼い魔法少女 その二

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マタル。彼はそう名乗った。そして驚くことに彼の欲は『殺人欲』。人を殺すことで欲を解消するという、恐ろしい欲。
アナザーは、直感的に感じ取る。こいつはここで倒すべき相手だと。投げ飛ばされるとき気づいたが、マタルの左目は潰れている。そこの死角をつけばいい。
アナザーは震える体に鞭を打ち、マタルの左にむかい、一気に駆け出す。
「魔力をコントロールする!!」
マタルはイヤホンで音楽を聴いてるらしく、気づいてない。右手になるべく自然の魔力を込めて、相手を殴り飛ばそうとする。
「マジカル☆インパーーー!?」
だが、アナザーは殴ることができなかった。目の前からマタルが消えていたのだ。
「ーーーおせぇ」
後ろからそう聞こえたと思った瞬間、ドガッ、と音がしてアナザーが蹴り飛ばされる。
口から血を吐きながら、地面を転がる。魔力を込めてる手で勢いを止めるが、止まった瞬間、アナザーは腹を思い切り踏みつけられる。
「ガァッ!!」
「ほらほらほらほら!どーした!?もっといい音楽聞かせろよ!!なぁ!?おい!!」
笑い声をあげながらアナザーのはらを何度も何度も踏みつける。
そして、もう飽きたというように思い切り腹を蹴飛ばした。まるでサッカーボールのように。
木にぶつかり、そのまま下に落下する。アナザーのはらは少し、青く。そして赤くなっている。徐々に青色は引いていくが、口から漏れる荒い息遣いは、止まらない。
「弱点とかいうやつはよぉ・・・それを生かせば弱点じゃなくなるんだぜ。左目がつぶれてるなら、大体のやつは左を狙う。そして、油断しきったところを俺がつく・・・7年も戦えば、それぐらいわかる。そして俺はそれを生かす」
先ほどのように、友人と会話するかのような緊張感がない声でしゃべりながら、アナザーに近づいていく。
そしてアナザーの頭を鷲掴みにして自分の顔の高さに持ち上げる。アナザーは震える声で離せとつマタルに言い放つ。
「お前の声は、なかなかいいなぁ・・・もっと聞かせてくれよぉ!!痛みであげる声を!!痛みであげる鳴き声を!!」
と、言うや否や地面や木に叩きつける!!
1度目
アナザーは大きな叫び声を上げ、マタルは笑い声をあげる。
5度目
アナザーの声がだんだん小さくなり、それとは違い、マタルの笑い声はだんだん大きくなる
13回目
アナザーの声が聞こえなくなり、マタルが狂ったように笑い出す。
18回目
23回目
29回目
38回目
39回目
40回・・・


「やめろおおぉおおぉおぉおぉぉぉぉおおお!!!」


後ろから悲痛な叫び声が聞こえたかと思うと、背中に黒い弾丸が数多くあたり、爆発する。
それでもマタルは全く気にしてない。そんなことより、楽しみを邪魔されたことに対して怒りの表情を後ろに向けた。
そこに立ってたのは、震えながら立ち上がった、ブラックローズだった。
マタルはアナザーを乱暴に投げ捨て、ブラックローズに向き合う。マタルは少し屈み、落ちている石を拾った。
それをブラックローズに向かって投げる。その域は風を切りながらブラックローズにまっすぐ突っ込んでいくーーー!!
ブラックローズは間一髪でそれを避け、マタルに近づく。
ブラックローズとマタルは組み合いを始める。ブラックローズの杖の攻撃。マタルの攻撃。二人の攻撃は常人には見えないほどの速さであった。
すると、マタルがブラックローズの両手をつかんで、顔を覗く。
「・・・やっぱりなぁ・・・てめぇ、忘れたとは言わさねぇぞ・・・!!この左目の傷!!忘れたとは言わせねぇぞ!!」
「あんた、やっぱりあん時のディザイアなんやな。ええで。あん時の決着つけたる!!」
そう言い終わると、ブラックローズは、マタルの顔めがけて弾丸を飛ばす!!
顔面にもろに攻撃を受けて少し後ずさるマタル。その隙を逃さないブラックローズは、杖で思い切り殴る。
思わず、膝をつくマタル。
「さっきは少し油断したし、恐ろしさもあった・・・けどな!愛弟子が頑張っとるのに、うちが何もせんのはいやや!!」
そう叫び、ブラックローズは空を飛ぶ。そして空から無数の弾丸を降らせた!!
先ほどとは違い、迷いのない。自然に魔力を使った攻撃。威力は先程より格段に上がっている!!
舌打ちをしながら攻撃を腕でガードするマタル。いくら魔法少女といえど、魔力は有限。なくなるまで耐えるーーー
しばらくした後、攻撃がやんだ。マタルは少しダメージを受けたが、倒れるほどじゃない。爆風がはれ、ブラックローズは空に浮かんでいた。マタルは一気に近づこうと足を踏み込む。だが、思うように足が動かない。
「・・・ね、根っこ!?」
足を見たら、そこに根っこがありそれが複雑に絡んでいる。
「さっき取っ組み合いになったときに、あんたの足にちぎれた根っこをつけて、ゆっくり再生させたんや・・・!!」
根っこに足を取られたマタル。そして、ブラックローズは杖の先端をマタルに向ける。杖の先端。そこに魔力を込めるーーー!!
「これで、終わりや!!ローズ・・・バスターーー!!!」
黒くて極太のレーザーがマタルに向かって一直線に伸びていく!!
マタルは動くこともできず、守ることもできず、そのレーザーが当たるのを待つだけだった。
だが、マタルは最後まで笑っていた。
ぽよん
するとマタルの体に当たるとき、何かに当たったかのようにレーザーが弾かれた。
「は・・・?」
間抜けな声を上げるブラックローズをみて、マタルはニヤリと笑った。
何が起こったか、ブラックローズは目を凝らしてよく見てみる。そしたら、マタルの体の周りには薄い膜があるのに気づいた。それはシャボン玉のようだった。
それに気づいたとき、後ろから一人の少女がマタルのとこに歩いてくる。
「おせぇな。護衛役さんよ」
「これでも急ぎました。それよりも貴方、もっと真面目にやりなさい」
「けっ、だって久しぶりに骨がある相手だぜ。楽しまなきゃ損だろ」
そうマタルは答えながら足の根っこをちぎる。
その少女は頭をかかえため息をつく。そして、ブラックローズのほうを向く。
この少女は服装は青く、少し長くて、下のほうの髪の毛をつインテールにしている。その格好はまるで
「なんで・・・貴女が・・・!?」
「・・・自己紹介がまだでしたね。私は蒼い魔法少女。マジックブルーです。以後お見知り置きを」
そう言って蒼い少女は礼儀正しく頭を軽く下げる。
ブラックローズは、考えるよりも先に行動していた。二人に向かって黒いレーザーを放つ!!
それを見たマジックブルーが、少し息を吐き、杖を振る。
すると、無数のシャボンが現れた。それやレーザーがふれたらシャボンがわれ、小さな爆発が起き、爆風が広がった。
ブラックローズはレーザーを無数に放つが、だんだんと息が荒くなる。だが、相手の二人は涼しい顔をしていた。
さすがに疲れたのかもしれない。少し息が詰まり始める。いや、違う。
すると、レーザーの何本かが、跳ね返る!!
それをもろに受けるブラックローズ。おかしく思い場所を変えようとするが、何かが当たって動けない。
「はぁ・・・はぁ・・・なん・・・で・・・?」
そして、シャボンが割れるときに出た爆風が消えていくと、見える景色にブラックローズは目を見開く。
周りには大量のシャボンがばらまかれていて、そして今ブラックローズはシャボンの中にいた。
「これが、私の技。バブルワールド。そのまま、気を失いなさい」
その言葉を最後まで聞くことなく、いきなりシャボンが割れてブラックローズは下に落ちていく。
落ちるときに周りのシャボンに触れるブラックローズ。すると。
パァン!!
パァン!!パァン!!
パァン!!パァン!!パァン!!パァン!!パァン!!パァン!!パァン!!パァン!!
シャボンが無数に割れて、下に落ちるときには、体がボロボロになっていた。
それをみたマタルはダメ押しという風にブラックローズに近づき、首根っこを掴みアナザーの近くの木に投げ飛ばした!!
ぶつかった木が折れて、そしてブラックローズは完全に気を失ってしまった。
その後、手をはたき退屈そうなマタルと一緒に、マジックブルーは、ブラックローズ達のところに歩いていく。
ブラックローズは変身が解けて、赤い髪が見えている。
だが
「・・・おい。あのちっこいのはどこいった?」
アナザーの姿がなくなっていた。二人は周りを見渡し、アナザーの姿を探す。しかし、見つからない。
「けっ、仲間置いて逃げたか?・・・おい、なんだ、ブルー。そんな顔で睨むな。なんか文句でもあるか?」
「・・・いや、文句はない。けど、あの子は逃げないと思います。そんな気がする」
マタルが意味がわからないというように、頭をかき、腰に手を当てて周りをまた見渡す。右を見て左を見て、もう一度右を見ると、マタルは少し驚いた声を上げた。
そこにいたのはあの少女であろうものであった。
「ウゥウウゥウゥウゥウゥウウゥゥッッッ!!!」
一人の少女が、唸り声をあげながら、マタルの顔を狙って拳を突き出していた。
その拳をマタルはつかみ、勢いを利用して、地面に叩きつける。そのとき異変に気付く。その少女は先程の魔法少女に近い雰囲気を持った、女子高生のような少女であった。まるで、先程の魔法少女をそのまま大きくしたような。
「・・・おいおい、こいつ何してんの?」
気を失ったであろう、その少女は地を這った移動したいた。
その目的地にいたのは、赤髪の女性。
気を失ってもなお、彼女は一人を守ろうとしている。
そして、少女は赤髪の女性を守るように多い重なり、動かなくなった。まるで、使命を守るロボットのように、あかねは動き、そして杏子を守る位置に気絶しながら移動した。
「ククッ・・・こいつ、面白い奴だ!!いいな、こいつ!!今殺すのは勿体ねぇ!エレンホスには申し訳ないが、こいつらは逃げたことにしよう!!俺の話に合われろよブルー!!」
心の底から楽しいように大声で歓喜の歌を笑いながら歌い山から下りていった。
一人残されたブルーは、気を失っている二人を一瞥した後、マタルを追いかけていった。


◇◇◇



「うぐっ・・・あ、あれ?あたしは・・・?」
「よかった!!目が覚めたか!!」
天使くんが心配そうな顔から、一転して大声で喜びを表した。しきりに大丈夫かと聞いている。
太陽が沈んでいく、夕暮れ時あかねは目を覚ました。
天使くんの声をバックミュージックにしながら、記憶を手繰り寄せ、何があったか思い出そうとする・・・そして、思い出した。
「そうか、あたし、マタルとかいうやつと、蒼い魔法少女に負けたんだ・・・」
そう呟き、改めて負けたことに気づき、そして頬を伝い涙が流れ落ちる。
もしかしたら、今頃杏子が殺されてたのかもしれない。そのことに対する後悔に、あかねは涙した。誰も失いたくないからこその、後悔。
その失いたくない物の中には自分を含んでないのは、無意識のうちであったか。それとも。


 《次回予告!!》
「この欲を解放するの・・・?」
            「お前は、ここで何をしてるんだ?」           「なぜ服を溶かすのです!?」
       「うえぇ、ネチョネチョする・・・」
《第四話 その少女は彼に夢を見せるのか?》
お楽しみに!!
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