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11.くりかえす悪夢
天空の魔女 リプルとペブル
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11.くりかえす悪夢
シズクを連れ戻し、自分たちの部屋に戻ったペブルは、ムスッとした表情でつぶやいた。
「ぜんぜんプリンセスじゃなかった、あの金髪。エラそうだし、ジコ中っぽいし。使い魔のコウモリもシズクのこと食べるだなんて!」
プンスカ怒っているペブルをなだめるために、リプルが提案した。
「気分を変えるために、おやつにしようよ」
「わっふー♡」
たちまちペブルはごきげんに。
リプルが、テーブルの上に手をかざし、
「ココルーラ、ア、テン」
と、唱えた。
すると、テーブルの上には、フルーティな香りの紅茶が入ったティーカップと、焼きたてホカホカのカップケーキがポン! ポン! といくつもあらわれた。
チョコチップ、バナナやリンゴ、ナッツが乗っているものもある。
「うわー!こういう時、私、心のそこから、リプルとパルでよかったと思うんだよね」
ペブルが両手をあげて喜ぶ。
「でも、この魔法は小学部で習った魔法だよ。誰でも使えるはずだけど?」
リプルの言葉をペブルは聞こえないふりして
「いっただきまーす」
と、ちょうどシズクが取ろうとしていた、好物のマロングラッセがのったカップケーキをパクっとひとくちで食べてしまった。
「あ~!ボクのケーキ。栗が乗ってるの、それしかなかったんだよ!!」
シズクが、両手をぐるぐる回して怒る。
「もぐもぐ、ぼめん、ぼめん。はへちゃった」
「ペブル、口の中にものを入れたまま、しゃべらない」
リプルはペブルにそう注意すると、シズクに笑顔を見せる。
「待っててね、シズク」
リプルは、また呪文を唱えて新たにマロングラッセのカップケーキを2個出した。
「ありがと、リプル!」
シズクは、まるまるくるんのしっぽをピンと伸ばして喜んだ。
「あ、ペブルは食べちゃダメ、さっき食べただろ。これは僕らのぶん」
ふたたびマロングラッセのカップケーキをねらって、すっとのばしてきたペブルの手をシズクは、ハシッとはたいた。
リプルは、小さくひとくちカップケーキを口に入れると、
「うーん、おいしい」
と、幸せそうな笑顔になる。
シズクも、カップケーキの上に座り込んで、マロングラッセに大きな前歯をきたてた。
そんなふたりの様子を見て、
「え~、私ももっとゆっくり味わったらよかった……」
ペブルはがっくりと肩を落とした。
午後のやわらかな日差しが部屋の中に差し込んで、床を金色に染めている。
その日の夜。
リプルは久しぶりに悪夢を見た。
幼い頃から何度となく、繰り返しみている悪夢だ。
リプルはどこか知らない場所をほうきで飛んでいた。
何があったのか、地上の家々はくずれ、木々はなぎ倒され、地面はでこぼこと隆起している。
ふと誰かの泣き声が聞こえた。リプルはあわてて声のするほうに飛んだ。
「魔法なんてウソ。魔法使いなんて、いない」
小さな女の子がひとりで泣きながら歩いている。
彼女の服はドロドロであちこちやぶれている。
「……誰も助けてくれなかった。魔法使いなんていない」
そのとき、大地が泣き叫ぶように鳴動したかと思うと、バリバリという音が聞こえてきた。
「逃げろ! 地割れだ!」
巨大な斧で切りさかれたかのように大地に黒い地割れが走った。
その途上にある建物や木々がバラバラといとも簡単に大地の裂け目に落ちていく。
地割れは、泣きながら歩く女の子のほうへすごい速度で向かってきた。
リプルは空から女の子に向かって叫んだ。
「逃げて!」
だけど女の子はぼう然と立ちすくんでいる。
大勢の人がなすすべもなく、次々と地割れに飲みこまれていく。
「なんで、みんな魔法を使わないの!? 飛べば助かるのに!」
リプルは、女の子を助けようと飛んだ。
ようやく地割れに背を向け、かけだした女の子が、空中にいるリプルを見つけて「魔法使いさん、助けて!」と手を伸ばす。
「助ける!」
リプルが女の子めがけて急降下したとき、地割れを追い越して、何本もの大きな竜巻が横に並んで走ってきた。
リプルはそれでも必死に手を伸ばす。女の子の指に手が触れそうになったとき、
「ゴオォオオオ!!」
竜巻に巻き込まれたリプルはもみくちゃにされた。
ほうきもバラバラにくだけ、空中に投げ出されたリプルは気を失った。
そこで目が覚めた。
小さな女の子の恐怖にみひらかれた目が忘れられない。
「また助けられなかった……」
ポロっと涙がひとつぶ、リプルの目からこぼれ落ちた。
リプルは、頭からブランケットをすっぽりかぶると声を押し殺して泣いた。
ペブルは、まったく知らずに寝息をたてて寝ていたが、シズクはクルミのからのベッドから起き上がってリプルを見ると、小さく(つらい夢だったんだね)というようにうなずいていた。
シズクを連れ戻し、自分たちの部屋に戻ったペブルは、ムスッとした表情でつぶやいた。
「ぜんぜんプリンセスじゃなかった、あの金髪。エラそうだし、ジコ中っぽいし。使い魔のコウモリもシズクのこと食べるだなんて!」
プンスカ怒っているペブルをなだめるために、リプルが提案した。
「気分を変えるために、おやつにしようよ」
「わっふー♡」
たちまちペブルはごきげんに。
リプルが、テーブルの上に手をかざし、
「ココルーラ、ア、テン」
と、唱えた。
すると、テーブルの上には、フルーティな香りの紅茶が入ったティーカップと、焼きたてホカホカのカップケーキがポン! ポン! といくつもあらわれた。
チョコチップ、バナナやリンゴ、ナッツが乗っているものもある。
「うわー!こういう時、私、心のそこから、リプルとパルでよかったと思うんだよね」
ペブルが両手をあげて喜ぶ。
「でも、この魔法は小学部で習った魔法だよ。誰でも使えるはずだけど?」
リプルの言葉をペブルは聞こえないふりして
「いっただきまーす」
と、ちょうどシズクが取ろうとしていた、好物のマロングラッセがのったカップケーキをパクっとひとくちで食べてしまった。
「あ~!ボクのケーキ。栗が乗ってるの、それしかなかったんだよ!!」
シズクが、両手をぐるぐる回して怒る。
「もぐもぐ、ぼめん、ぼめん。はへちゃった」
「ペブル、口の中にものを入れたまま、しゃべらない」
リプルはペブルにそう注意すると、シズクに笑顔を見せる。
「待っててね、シズク」
リプルは、また呪文を唱えて新たにマロングラッセのカップケーキを2個出した。
「ありがと、リプル!」
シズクは、まるまるくるんのしっぽをピンと伸ばして喜んだ。
「あ、ペブルは食べちゃダメ、さっき食べただろ。これは僕らのぶん」
ふたたびマロングラッセのカップケーキをねらって、すっとのばしてきたペブルの手をシズクは、ハシッとはたいた。
リプルは、小さくひとくちカップケーキを口に入れると、
「うーん、おいしい」
と、幸せそうな笑顔になる。
シズクも、カップケーキの上に座り込んで、マロングラッセに大きな前歯をきたてた。
そんなふたりの様子を見て、
「え~、私ももっとゆっくり味わったらよかった……」
ペブルはがっくりと肩を落とした。
午後のやわらかな日差しが部屋の中に差し込んで、床を金色に染めている。
その日の夜。
リプルは久しぶりに悪夢を見た。
幼い頃から何度となく、繰り返しみている悪夢だ。
リプルはどこか知らない場所をほうきで飛んでいた。
何があったのか、地上の家々はくずれ、木々はなぎ倒され、地面はでこぼこと隆起している。
ふと誰かの泣き声が聞こえた。リプルはあわてて声のするほうに飛んだ。
「魔法なんてウソ。魔法使いなんて、いない」
小さな女の子がひとりで泣きながら歩いている。
彼女の服はドロドロであちこちやぶれている。
「……誰も助けてくれなかった。魔法使いなんていない」
そのとき、大地が泣き叫ぶように鳴動したかと思うと、バリバリという音が聞こえてきた。
「逃げろ! 地割れだ!」
巨大な斧で切りさかれたかのように大地に黒い地割れが走った。
その途上にある建物や木々がバラバラといとも簡単に大地の裂け目に落ちていく。
地割れは、泣きながら歩く女の子のほうへすごい速度で向かってきた。
リプルは空から女の子に向かって叫んだ。
「逃げて!」
だけど女の子はぼう然と立ちすくんでいる。
大勢の人がなすすべもなく、次々と地割れに飲みこまれていく。
「なんで、みんな魔法を使わないの!? 飛べば助かるのに!」
リプルは、女の子を助けようと飛んだ。
ようやく地割れに背を向け、かけだした女の子が、空中にいるリプルを見つけて「魔法使いさん、助けて!」と手を伸ばす。
「助ける!」
リプルが女の子めがけて急降下したとき、地割れを追い越して、何本もの大きな竜巻が横に並んで走ってきた。
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「ゴオォオオオ!!」
竜巻に巻き込まれたリプルはもみくちゃにされた。
ほうきもバラバラにくだけ、空中に投げ出されたリプルは気を失った。
そこで目が覚めた。
小さな女の子の恐怖にみひらかれた目が忘れられない。
「また助けられなかった……」
ポロっと涙がひとつぶ、リプルの目からこぼれ落ちた。
リプルは、頭からブランケットをすっぽりかぶると声を押し殺して泣いた。
ペブルは、まったく知らずに寝息をたてて寝ていたが、シズクはクルミのからのベッドから起き上がってリプルを見ると、小さく(つらい夢だったんだね)というようにうなずいていた。
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