白紙の黒き物語《ホワイトページ・ブラックストーリー》

暁の彼方

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一章

四話~新人指導~

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 それから三日後、無事にオーガが討伐されたという報告が上がってきたため、クロキたちのパーティーは延長したコボルトの定期討伐の続きを行い、クロキがかすり傷を負ったぐらいは特に問題なく、クリアできた。

  今日のクロキの予定は、ギルドから頼まれたことが一つあり、それは新人の育成だ。新人の冒険者には必ず指導役と言うのが一人つく。

  クロキの時はギルドマスターが指導役になってくれたのだが、教える時は擬音などばかりで、後は気合で何とかしろというような、そんな感じの人だ。

クロキはそんな感じにならないように、気を付けることにして、冒険者組合へとまた歩みを始めた。

  冒険者組合についたはいいのだが、まだ新人の子はまだ来ていないようだ。新人の子については事前に知らされている。さらに初の指導する相手は、知っている人なのでわざわざ探さなくても済む。

  しばらく待っていると、こちらに駆け寄ってくる人影を見つけた。どうやら、新人の子が来たようだ。

  小さい身長で、藍色の髪をなびかせながら、その少女はバスケットを片手にクロキに近寄ってきた。

 「お待たせしましたです、クロキさん。本日はよろしくお願いしますです!」
 「うん。よろしくね、アナスタシア」

  そう新人の子とは、先日助けたばかりのアナスタシアだったのだ。何故こんなおとなしそうな子・・・アリスもそうだけど、冒険者という危ない仕事をしようと思ったのだろうか?

 「それじゃ、まずは小さいけど講堂に移動しようか。使用許可はもうもらっているから、気にしなくていいよ」
 「講堂で何をするんです?」
 「勿論勉強だよ」

  勉強が嫌いなのかどうかわからないが、少しと言うか露骨に嫌そうな顔をしていた。

  閑散としている講堂に移動してきたクロキたちは、空いている席に座った。クロキは鞄に入っている、デニスから借りて持ってきた図鑑や本などを出した。

 「まずは、なんで冒険者なのに勉強なんてするんだろう?ってアナスタシアは思っているよね?」
 「はいです・・・」

  やっぱり予想通りだったか。新人の人達はたいてい、腕っぷしだけで行けると考えている人が多いのだ。

 「冒険者って言うのはね、腕っぷしも大事だけど知識の方も大事なんだ。クエストを受けるときとかにも、自分たちの実力と相手との実力を考えてからにするんだ。戦いに勝つにはまず敵のことを知るってね」

と、アナスタシアに筆記用具と紙を渡しながら、勉強の大切さを教える。

 「そうだったんですか!気合を入れなおさなきゃです!」

  アナスタシアは自身の頬を両手で軽くたたき、気合いを入れなおしたようだ。

 「それじゃ、始めていくよ。まず、ポーションなどの薬になる材料からだ」
 「なんで薬からなのですか?」

まあ、その疑問はもっともだろう。だが、遠出したときにポーションが切れて死にました・・・なんていうのは笑えないからだ。

ポーションには殺菌消毒の効果があると共に、軽い傷なら治してしまう効果がある。魔物の爪や牙には人間にとって毒となる成分が含まれているので、かすり傷でも致命傷になる恐れがある。そのため、ポーションの材料を調達できるようにしておかなければならないのだ。

 「という理由からだよ」
 「そうなんですね〜」

アナスタシアは納得したようなので、クロキは材料の説明に入った。

 「ポーションの材料で、なにか知っているものはある?」
 「えっと、薬草に水に・・・それだけしかわからないのです」

まあ、最初からそれだけ知っていれば良い方だろう。僕なんて最初は、一個もわからなかったのだから。

 「ポーションの他の材料は、オニンの実の少し甘く柔らかい、中心部分とパリン草の根だよ」

 材料を教えると頭上に?マークを浮かべそうな顔をしていた。ああ、そういえばパリン草は有名じゃなかったな。

 植物図鑑を開き、パリン草があるページを探し、アナスタシアに見せながら説明することにした。

 「ほら、このまるで葉が凍ってしまったかのように、固そうな葉を持っているのがパリン草って言うんだ。葉を折ったときにパリンって音がなるから、パリン草って名付けられたんだよ」
 「これって、よく道端とかに生えているやつじゃないです?」

お、見覚えがあったようだね。少し見せただけで思い出せるのは、かなり評価ができるね。

 「そうだよ。一見道端に生えているから、雑草に見えるかもしれないけど、ポーションを作るには重要な材料なんだ」
 「そうだったんですね~」

  こうして、勉強の方が進んでいき、気が付けば昼ご飯時になっていた。アナスタシアは大きく伸びをして、息を吐きだした。

 「そろそろ、休憩にしてお昼ごはんにでもしようか。その後が、体を動かしての練習になるから、食べ過ぎには注意だけどね」
 「はいです」
 「それじゃ・・・」

  昼ご飯を食べるために「レストランに行こうか」と言おうとすると、アナスタシアから待ったがかかった。何だろうと思って彼女の方を見ると、持ってきていたバスケットを取り出した。

 「実はですね・・・お昼ごはんはお礼もかねて作ってきたのです!」

  バスケットにかかっていた布を取ると、そこからは美味しそうなサンドイッチが現れた。具材は、カツや卵、ツナと言ったメインになる物と、レッタスとトトマがサンドされ、ソースの良い香りが漂ってくる。

  講堂では基本的に飲食が禁止されているが、昼ご飯時のみ、そう言った制限が解除される。昼ご飯を持参してきた人たちは、会話をしながら食べているのが周りを見渡せば見れる。

 「ありがとうね。アナスタシア」
 「お礼なんていいんですよ。この前のお礼もまだなのに・・・あ、それと私のことは「シア」と呼んでくださいです!」
 「わかったよ、シア」

  その後はシアが作ってきてくれたサンドイッチを食べて、基本的な型をして解散することになった。
 ______________
  それから、二週間ほどみっちりと勉強と鍛錬をした結果、シアの知識はだいぶ増え、なりたてにしては実力もだいぶつき、Eランクのホーンラビットぐらいだったら、余裕とは言わないが一人で倒せるぐらいだ。

  それと、シアが僕たちのギルドに入ったのだ。みんなからはすぐに受け入れられた。そしてギルドホームに遊びに来るたびに、よく弄られているのを見かける。

  クエストに行く以外の日は、シアの指導を行っていたクロキは、思ったことを言ってみた。

 「シアもそろそろ、僕がいなくてもやって行けるんじゃないのかな?」

  クロキはシアがEランクまで上がったので、そう聞いてみるとわずかだが顔に影を作った。

 「そうです?クロキさんが言うからにはそうかもしれませんが、まだちょっと心配で・・・」
 「うーん・・・だったら、しばらく僕たちのパーティーに入ってみる?」

  クロキはそう聞いてみると、目を輝かせながら勢いよく頷く。

 「あ、でもアリスたちにも聞いてみないとわからないから、聞いてみてからでいいかな?」
 「はいです!」

  相変わらずの良い元気だね。シアは。

 「それじゃ、今日も勉強を始めていこうか。今日はワイバーンについてだよ」
 _______________
  シアの勉強と鍛錬を終わらせて、ギルドハウスに帰ったクロキはひとまず、デニスとアリスに夕食の時間に聞いてみることにした。

 「シア?ああ、この間入ったアナスタシアのことか。別にいいぞ」
 「アナスタシアちゃんが私たちのパーティーに入るの?私としては大歓迎だよ!」

  と二人からは許可が取れたので、明日マリーにも聞いてみることにする。明日は、クエストをパーティーで受ける日だったので、ちょうどよかった。その時にシアを連れていくか。

 「アナスタシアって君?・・・ああ!この間クロキたちのギルドに入った新人の子だよね?別にいいけど、あんまり私の獲物は取らないでよね!?」
 「わ、わかりましたです!」

  と、マリーから謎の注文を受けて、戸惑いながらも返事をするシア。それを聞いていた一部の冒険者たちが、苦笑しながらクエストボードに向かっていく。

  マリーはこの都市の冒険者たちの間で、バトルジャンキーと、元気が良すぎることで有名なのだ。

 「とりあえず、シアは今日がクエスト初挑戦だから、ホーンラビットの討伐にしようか」
 「そうだな。初めてならそこらがいいだろう」
 「私のためにごめんなさいです・・・」

  シアが頭を下げて謝ってきたので、アリスが「わざわざ謝らなくていいんだよ」と言って、頭を上げさせた。

 「その前にアナスタシアのポジションを決めておいた方がいいだろう」

  ちなみにシアの戦闘スタイルは、簡単な魔法と接近戦を組み合わせた感じだ。

 「それだったら、もう決めてあるよ。後衛と前衛の間である中衛だね」
 「それはどうして?シアちゃんの見た目とか雰囲気からするに、後衛の方がいいんじゃない?」

  雰囲気で決めてはいけない、というのは後で注意するとしよう。

 「理由としては、ウォータショットだとかの簡単な魔法を使えるし、接近戦もある程度できるからだよ。それに僕たちのパーティーには、中衛がいないからね」
 「なるほど、見方の援護もでき、自分から攻撃することもできる・・・まさに中衛向きだな。そうであれば、アナスタシアは中衛が適任だな」

  僕が言った理由に納得したようで、全員が頷く。マリーは若干首をかしげながらだが。

 「それじゃ、ホーンラビットのクエストで受付してくるね」
 「行ってらっしゃいです!」

  ホーンラビットの討伐 報酬 一体につき千ギリス
 場所
  シアン岳
  内容
  ホーンラビットの肉が不足してきたから、狩ってきてくれ。解体はこちらでするから、そのままでいい。運ぶ場所は北東区画にあるイシディスの肉屋に持ってきてほしい。討伐部位はそちらがもらってくれ。
  受注条件
  Eランク以上の冒険者二名以上
  討伐部位
  ホーンラビットの前歯

 「足場が悪いから、戦闘中でも気をつけて行動してねシアちゃん。もし打撲とかの怪我をしても、私が治してあげるから!」

  心配しつつも、怪我をしたら治すと宣言するアリス。この気合が空回らなければいいのだが・・・

 少し、話しながら歩いているとクロキは危険を察知して剣を抜き、横から飛んできた何者かの攻撃を、味方がいない方向へ受け流した。

  それを合図に次々と、クロキたちに襲い掛かってくる魔物たち。後衛の二人は武器と呼べる物は、魔法の効力を上げる魔導書と杖なので、ひたすらに避け続ける。シアはクロキと同じように慌てながらも剣で受け流していき、マリーは正面から受け止める。

  猛攻が終わり、周囲を見渡すと角を生やした青い目の兎が、こちらを睨み付けてきていた。

 「荒々しい歓迎だな」
 「だったらこっちもそれに返さないとだね!」
 「お願いだから、怪我しないようにだけは気をつけてね!」

  こうして戦闘が始まったのだが、ホーンラビットは基本的に突撃することしか、攻撃方法がないため、ホーンラビットたちは最初でかたをつけるしかない。

  それに対処は簡単だ。対処が簡単と言うことは、倒すのも一見難しそうに見えるが簡単で、突撃してきたところを半身にして避け、そこに剣を振るうだけだ。

  そのため五分ほどで十五匹ぐらいはいた、ホーンラビットたちは倒れていた。

 「シア、初めての戦闘は大丈夫だった?」

  少し手が震えているのを見た僕は、大丈夫じゃないとわかっていてもそう聞いた。冒険者という職業柄、他のものの命を奪わなければならない。つまり、本来だったらいけないことだが、命を奪うことに慣れるしかないのだ。

 「・・・大丈夫、です」
 「大丈夫じゃないときは、大丈夫じゃないって言ってもいいんだよ、シア」

  おそらく、シアは戦闘よりも、他者の命を初めて奪ったことで、自分に対して恐怖しているのだろう。

 「怖いのです。こうも簡単に他の命を奪ってしまったことが・・・本当は全く、大丈夫じゃないのです・・・!」

  シアは地面に座り込み、自分を守るかのように自分を抱きしめる。

  これは自分の中でけじめをつけなければならないことだから、僕たちは何も言わない。僕たちも最初はそうだったから。今では、生きるために、そして今ある大切なものを守るために剣を振るう。

 「とりあえず、帰るとしよう。ここにいてもまた襲われて、無駄に命を奪うだけだからな」
 「そうね。そうしましょうか・・・立てる?シアちゃん」
 「はい、です・・・」

  そう言って立つがふらふらとしていたので、クロキは背に背負って帰ることにした。後衛二人にかなり重いであろうホーンラビットを任せて。
 _______________
  翌日、冒険者組合に行くと、すっかり元気になったシアにあった。

 「気持ちの整理はついたの?」
 「はいです!これからもよろしくお願いします。先輩方!」

  その答えに四人は、顔を見合わせた。もしかしたら、もうだめかもしれないと思っていたからだ。だが、これからも頑張って行くなら、僕たちは応援することにした。

 「「「「こちらこそ、これからよろしくお願いします」」」」

  その後仮加入だったシアが、正式にパーティーに参加することになった。
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