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第三章

十八話【トリグル】

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早朝、スワロの反対側から抱きつくドラミに驚き、目を覚ます惣一郎。

いつの間に潜り込んで来たんだコイツ!

薄着で気持ち良さそうに、寝息を立てているドラミを起こさない様にベッドを出る。

キッチンにみんなの朝食を作り並べると、惣一郎はひとり街に向かう為、ツリーハウスを出る。

揺れて見送るユグポンが種になると、ポケットに仕舞い、杖に腰を乗せると、まだ薄明るい空へと飛び立つ。

涼しい朝の風を受けながら飛んで行くと、遠くに大きな壁が見えて来る。

あれがトリグルか、厄災も随分近くまで来てたんだな~

惣一郎は聳え立つ外壁の上に瞬間移動し、街の様子を伺う。

広い街は、中央に神殿の様な石造の建物を囲む様に、簡易な木組みのテントの様な家が無数に並んでいた。

避難民が集まるキャンプの様であった。

早朝にも関わらず賑わう街かと、外壁に腰を下ろし様子を見ていると、どうも様子が違う様であった。

武器を持った獣人や、人族が慌てている様に見える。

飛び交う声も、冷静では無い。

何かあったのだろうか?

すると街の北側で鐘が鳴り、武器を持った人達が向かう。

原因が自分じゃ無いと思った惣一郎は、下の目立たない場所に転移し、何食わぬ顔で街を歩き始める。

朝食の準備か、至る所からいい匂いが漂い、露店が並ぶ通りを歩いていく。

時折、武器を持った男達が、惣一郎の横を走り過ぎていく。

露店で見かけた野菜を買い込みながら、惣一郎は店主に「何かあったのか?」っと、尋ねる。

「ああ、いつもの事さ。奴隷として攫われた身内を救おうと誰かが襲って来たんだろ。街までは易々と入れやしないのにな」

「街? あれ、ココじゃ無いのか?」

「なんだ、お前さん初めてか? 街は中央の入り口から飛んだ先の地下にあるのよ。ココは俺たちの様な、金もコネも無く街に入れない者が集まってる所さ」

なるほど……

惣一郎は買った野菜を収納すると、中央の建物へ向かい歩き始める。

石段を登ると門が見え、槍を持つ門番がふたり立っていた。

偵察隊と同じ牙を生やす大男であった。

「街へ入りたいんだが」

男は惣一郎を舐める様に見ると、

「金貨2枚だ」

っと、手を出す。

人を見て値段を決めている様に思えたが、揉めたくも無い惣一郎は、黙って金貨を2枚渡す。

「すまん、間違えた! 4枚だった」

隣の男がニヤニヤ笑っている。

「高すぎるだろ。流石に4枚は払えん」

「そうか、通行料は毎日変わる。今日は諦め、また来るといい」

ため息を吐く惣一郎が手を出すと、男が「まだ何か?」っと惚ける。

「諦めるから、金貨2枚返せよ」

「キャンセル料だ、知らんのか?」

隣の男が笑う。

苛立つ惣一郎が幻腕を出し、槍を持つ男の手を上から握ると、直ぐに苦悶表情で膝を突く。

「イダダダダ! は、はなせ!」

「離すのは、金貨4枚だ」

出遅れた隣の男が槍を向けるが、直ぐにそのまま前に倒れる。

白目を剥いた男の懐から、惣一郎の鉄球が転がる。

「は、離せ…… こ、こんな事して、どうなるか……」

「だから、金貨4枚だって、早くしないと値上がるぞ」

見る見る汗が噴き出す男は、空いてる手で惣一郎の幻腕を上から殴るが、素通りし、掴む事も出来ない。

「わ、わかった、わかった! は、払う」

少し力を弱める惣一郎。

男は惣一郎から受け取った2枚と別に、さらに2枚分を細かい金で両膝を付いた前の地面に並べ出す。

「街へ入りたいんだが、それで足りるんだっけ?」

並べられた金貨を見ながら静かに聞き直す惣一郎。

「か、金は払っただろ! 早く…イダダダダ! わかった! 足りる、コレで足りるから!」

ようやく解放された男は、槍を手放し、潰れた手を抱え込みながら、震えるもう片方の手で門を開ける。

惣一郎はゆっくりと門の向こうの魔法陣に乗る。





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