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第四章

二十話【失念】

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図鑑で知る世界一凶暴な蟻[ブルドックアリ]。

赤い身体に長い毒を持つ牙、身体を支える長い6本の脚で素早く動き、尻にあたる腹部の先端が黒い蟻。

殺人蟻とも呼ばれる凶暴な蟻が、ドラミに誘われてワラワラと姿を現す。

街にバラけていた蟻を、全てこちらに誘導するドラミ。

だが惣一郎の想像を遥かに超える数であった。

「多いな…」

惣一郎は出した槍を仕舞い杖に尻を乗せると、上空に飛び立ち穴へ向かう。

盾を構えるゴゴとジジの後ろで、杖を構えるスワロが目を開けると、上空に無数の光剣が現れ、流星の様に近づく蟻に突き刺さっていく!

ドラミも杖を振ると舗装された石畳を崩し、現れる木の根が次々と大きな蟻を地面に縛りつけて行く。



街中の地面に空いた大きな穴に惣一郎が、白い粉を空から振り撒く!

モクモクと広がる煙に赤い蟻が身体を白くすると、もがき苦しみだし泡を吹く。

穴に容赦無く色んな種類の殺虫剤を投げ込み、這い出る蟻の勢いが止まると、スワロ達へ続く蟻の列に粉を撒きながら戻って行く。

弱っているが、死んではいない……

スワロ達も光剣で蟻を両断しながら進んでいた。

遠距離攻撃は毒を持つ蟻との相性が良かった。

距離を取りながら次々と光剣で刺し進むスワロ。

横から現れる蟻も、次々とドラミの蔓が捕らえ動きを封じる。

戻った惣一郎も槍を出し、蟻の頭部を串刺しにしながら進み、また穴まで戻ってくる。

近くには、襲われた人達の遺体が何倍にも膨れ上がり、倒れていた。

穴の周りで倒し続けると、やがて動く蟻はいなくなり、惣一郎は蟻の死骸を収納し始める。

疲れたスワロとドラミが背中を合わせ、地面に座り込む。

盾を持つだけで何も出来なかったゴゴとジジは、振り返り無数の蟻の死骸と、それを消して行く惣一郎に目を丸くしていた。

「ゴゴよ、付いて行くと言った意味がわかったぞ……」

「えっ! あっ、ああ……」

急に消えた蟻を追って街の傭兵達も現れ、手に持つ武器を落とす。

「な… 何が……」

「おい、あの白いフードのふたり! まさか…」

その傭兵達の中に、目立つカウボーイハットの男がいたが、スワロも惣一郎も気付かない。

半壊した街からも、隠れていた人々が次々と顔を出し、口を開けたまま言葉を失う。



惣一郎は黙々と死骸を収納し、収納出来ない蟻には止めを刺し、収納していく。

すっかり街は半壊した建物だけが、蟻の襲撃を物語っていた。

穴を覗き込む惣一郎。

雪が降ったみたいな所々白い深い穴に念の為、サーチを飛ばす。

すると惣一郎の顔色が一変!

「今直ぐ逃げろ!」

っと、大声を張り上げる!

惣一郎の声に構えるゴゴとジジ!

驚く傭兵達も直ぐに、街の人々を避難させ始める!

立ち上がるスワロとドラミが、

「何や、まだいるんかい!」

惣一郎はドラミの言葉を無視し、慌てて穴に瓶を投げ入れ続ける!

スワロも主人の行動に、只事じゃ無い雰囲気を読み取り、穴の上空に光剣を出し構える!

失念していた……

穴に殺虫剤を投げ入れながら惣一郎は、この世界にも、いておかしく無い存在を思い出していた。






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