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第七章
三話【腑に落ちない過去】
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「どうでした? 美味しかったでしょ、ここの料理は!」
「ええ……」
正直何食ったか覚えてない。
「ではまた明日。寝る前にこれ飲んでゆっくりおやすみ下さい。乱れた魔力を整えてくれる薬です!」
「あ、ありがとうございます」
良い人だ、良い人なんだが……
食堂を出ると惣一郎はカウンターで、火の付いた蝋燭を受け取り暗い部屋に戻ると、植木鉢に種を置き村へと帰る。
中庭の食堂には戻ったゴゴ達が、遅めの夕食を食べていた。
「おかえりなさい惣一郎様」
「ただいま。どうだった?」
「それがその、腑に落ちない情報がありまして」
箸を置くゴゴが、難しい顔をする。
なんだろう?
「キッドについて運良く、詳しく知る者に会えたのですが……」
「それで」
「キッドは幼い頃、魔女崇拝者に家族を殺されているそうなのです」
ん? どういう事……
「何でもキッドの両親が、その魔女崇拝者の集まる組織[グルミターナ]のメンバーだったらしく、姉とキッド自身も凄惨な幼少期を過ごしていたそうなのです。ですがある日急に、組織から裏切り者扱いされた両親とキッドの姉が酷い殺され方をされたと…… 話してくれた人は幼いキッドの面倒を見ていた方でして、嘘は無いかと……」
グルミターナ……
「キッドがその過去を隠し、その組織に復讐を考えてるのかも知れないな」
「ええ、ですがそれなら何故、勇者である惣一郎様じゃなく、スワロ様を攫ってまで向こうについたのか」
「或いは、キッドの首に傷がある……」
「はい! すでに復讐に失敗し、魔女に傀儡されている可能性も……」
これも答えは直ぐに出ないか……
「わかった。取り敢えず傀儡の線が消えない以上、話を聞いた者も怪しくなってくる。ゴゴとエルネンドは、しばらく村で過ごせ!」
「わかりました。入口はすでにジジ達が、別の街に移動してますので」
その日はキッドの過去以外、有力な情報はなかったが……
「それとガリンバ! クチャクチャ音を立てて飯を食うな! マナーだろ!」
「ひぃー」
「何や荒れとるやないか、惣一郎」
暗い中庭から現れた、黒髪の少女。
「ドラミか、食事のマナーは大事だろ。折角の料理も美味さ半減だ!」
「そんな事より約束や、覚えてるやろ?」
そんな事って……
「ああ、ユグポンに魔力だろ?」
「せや、行くで!」
「何処に?」
「アホ! その辺であの魔力垂れ流してみぃ、みんな寝てられんわドアホ! 部屋用意したからついてき」
それで昼間いなかったのか……
惣一郎は言われるがまま、ドラミの後をついて行く。
すると畑の手前に石碑が置かれているのが見えた。
「あれは……」
「ドラゴンのや。みんな忘れたくないんやろ」
日は浅くとも村のみんなの気持ちに、嬉しくなる惣一郎が手を合わす。
「何処だドラミ、ちょっとやる気出てきたぞ」
「ええ心掛けや! こっちや」
ジル達が住む木の横に根っこがうねり出し、ドアが見える。
中は何も無い真っ暗な空間だった。
「ほな、ここで頼むで! いっぱいになったらノックするから、可能な限り毎晩でも顔出したってな」
言うだけで言って出て行くドラミ。
ドアが閉まると部屋は真っ暗であった。
ユグポンの為だ、気合い入れて頑張るか!
理喪棍を持ち、集中する惣一郎。
惣一郎の体から闇が魔力を引きずり出す感覚を覚える。
ユグポンは腹を空かしていたのだろうか?
全力で魔力を放出すると、3分そこらでノックが聞こえる。
放出をやめ、部屋から出る惣一郎。
外にドラミはいなかった。
放置かよ!
風呂でも入るか……
「ええ……」
正直何食ったか覚えてない。
「ではまた明日。寝る前にこれ飲んでゆっくりおやすみ下さい。乱れた魔力を整えてくれる薬です!」
「あ、ありがとうございます」
良い人だ、良い人なんだが……
食堂を出ると惣一郎はカウンターで、火の付いた蝋燭を受け取り暗い部屋に戻ると、植木鉢に種を置き村へと帰る。
中庭の食堂には戻ったゴゴ達が、遅めの夕食を食べていた。
「おかえりなさい惣一郎様」
「ただいま。どうだった?」
「それがその、腑に落ちない情報がありまして」
箸を置くゴゴが、難しい顔をする。
なんだろう?
「キッドについて運良く、詳しく知る者に会えたのですが……」
「それで」
「キッドは幼い頃、魔女崇拝者に家族を殺されているそうなのです」
ん? どういう事……
「何でもキッドの両親が、その魔女崇拝者の集まる組織[グルミターナ]のメンバーだったらしく、姉とキッド自身も凄惨な幼少期を過ごしていたそうなのです。ですがある日急に、組織から裏切り者扱いされた両親とキッドの姉が酷い殺され方をされたと…… 話してくれた人は幼いキッドの面倒を見ていた方でして、嘘は無いかと……」
グルミターナ……
「キッドがその過去を隠し、その組織に復讐を考えてるのかも知れないな」
「ええ、ですがそれなら何故、勇者である惣一郎様じゃなく、スワロ様を攫ってまで向こうについたのか」
「或いは、キッドの首に傷がある……」
「はい! すでに復讐に失敗し、魔女に傀儡されている可能性も……」
これも答えは直ぐに出ないか……
「わかった。取り敢えず傀儡の線が消えない以上、話を聞いた者も怪しくなってくる。ゴゴとエルネンドは、しばらく村で過ごせ!」
「わかりました。入口はすでにジジ達が、別の街に移動してますので」
その日はキッドの過去以外、有力な情報はなかったが……
「それとガリンバ! クチャクチャ音を立てて飯を食うな! マナーだろ!」
「ひぃー」
「何や荒れとるやないか、惣一郎」
暗い中庭から現れた、黒髪の少女。
「ドラミか、食事のマナーは大事だろ。折角の料理も美味さ半減だ!」
「そんな事より約束や、覚えてるやろ?」
そんな事って……
「ああ、ユグポンに魔力だろ?」
「せや、行くで!」
「何処に?」
「アホ! その辺であの魔力垂れ流してみぃ、みんな寝てられんわドアホ! 部屋用意したからついてき」
それで昼間いなかったのか……
惣一郎は言われるがまま、ドラミの後をついて行く。
すると畑の手前に石碑が置かれているのが見えた。
「あれは……」
「ドラゴンのや。みんな忘れたくないんやろ」
日は浅くとも村のみんなの気持ちに、嬉しくなる惣一郎が手を合わす。
「何処だドラミ、ちょっとやる気出てきたぞ」
「ええ心掛けや! こっちや」
ジル達が住む木の横に根っこがうねり出し、ドアが見える。
中は何も無い真っ暗な空間だった。
「ほな、ここで頼むで! いっぱいになったらノックするから、可能な限り毎晩でも顔出したってな」
言うだけで言って出て行くドラミ。
ドアが閉まると部屋は真っ暗であった。
ユグポンの為だ、気合い入れて頑張るか!
理喪棍を持ち、集中する惣一郎。
惣一郎の体から闇が魔力を引きずり出す感覚を覚える。
ユグポンは腹を空かしていたのだろうか?
全力で魔力を放出すると、3分そこらでノックが聞こえる。
放出をやめ、部屋から出る惣一郎。
外にドラミはいなかった。
放置かよ!
風呂でも入るか……
応援ありがとうございます!
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