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第九章

五話【精霊召喚】

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中庭にユグポンを出す惣一郎。

案内するネコについでに、近くに湖はないかと尋ねると、十二番の扉で行けるセイブラという町が湖の近くだと言う。

「セイブラか、後で行ってみるか……」

チョンチョン。

ベンゾウが後ろから袖を引っ張る。

振り返るとベンゾウが中庭の噴水を指差す。

「何よ……」

「水あるよ」

はぁ?

いやいや、あるけども……

精霊を呼び出すのよ? 

いくら何でも、これでいいなら風呂でいいだろって話よ!

ユグポンからドラミが出てきて、

「何や早かったな! 十分やろ」

おいおい……

「これでいいなら風呂でいいだろ!」

「ありゃ水じゃなくってお湯やろが」

………




ネコのいる前で隠す訳でもなく、精霊を呼び始めるドラミ。

えっ? いきなり?

もっと厳かに締めやかにしめやかに執り行なう物ではないのかい?

惣一郎の期待を裏切り、いきなり始まった精霊召喚。

ドラミの周りを魔法陣が広がり、祝詞の様な呪文を唱え始める。

中庭の噴水の水が光り、水の貴婦人ウンディーネが姿を現す!

感動もクソもなかった……

「妾を呼び出すとは、一体なんの用かえ?」

水で出来た透明な貴婦人。

ドラミが事情を説明し、来る時に協力を求める。

「妾の力を借りたくば、それ相応の褒美を所望するぞえ」

所望するそうです……

噴水で繰り広げるファンタジーに、転移屋を利用する旅人も足を止め、離れて人集りが出来ていく。

「惣一郎、褒美やて! 考えてなかったわ! どないする?」

弁慶が「やはり金だろう?」

スワロが「いや、相手は精霊。生贄とか?」

ベンゾウが「お肉?」

ドラミが「あかん帰ってまうで! 惣一郎、早く何か!」

急に言われても……

すぐ様ネットで検索する惣一郎。

購入した品をウンディーネに捧げて、

「これなんてどうでしょうか?」

「これは何かえ?」

惣一郎はポット型の浄水器の蓋を開け、噴水の水を汲むと、濾過された水が下に溜まる。

それをコップに注ぎ、差し出す。

ご賞味あれ!

水で出来た手に触れ、コップを渡すとゴクゴク飲み始めるウンディーネ。

「んーーーー美味! こんな澄んだ水は初めて口に致したのえ!」

惣一郎は何杯でも飲めると、カートリッジの説明をする。

「見事じゃ! 見事妾の心を掴んだのえ! 何でも妾に頼ると良いぞえ! いつでも手を貸してたまわすのえ!」

のえのえうるさいし、微妙に使い所が怪しい。

ウンディーネは浄水ポットを抱えて水の中に消えて行く……

気が付くと中庭に拍手が湧き起こっていた。

「やるやないか惣一郎! これで契約成立や! いつでも呼び出せるで」

頼りになるのだろうか……

流石勇者様!っとネコも集まり拍手喝采の中、恥ずかしそうにユグポンの中に消える惣一郎だった。




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