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第七章

十二話【ふたりの勇者】

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森の中を瞬間移動で進む惣一郎。

それを難なく追い掛けるベンゾウ。

ドラミは種の中で待機していた。

「見えて来た! ベンゾウ、蟲も操られているだろうから注意しろよ! 紛れて小さな虫も居るかも知れない」

「うん、ご主人様!」

こう言う時のベンゾウは、本当に頼もしい。

惣一郎の視線の先には巨大な蟲が4匹見えた。

村はその4匹に外壁を崩され、滅茶苦茶にされた状態であった。

破壊し疲れたのか4匹は、大人しそうに止まっている。

お互いに襲い合わずに崩れた家屋の上で。

蟲は昔見たアニメに出て来そうな、巨大なダンゴムシと、そのダンゴムシよりは小さいが、8mはありそうな長い触覚を持つカミキリムシ。

崩れた外壁にまとわりつく、20mはあろう青紫色のムカデと、その上でムカデに張り付く六本脚だが人型っぽい謎の蟲人間。

「上位種もいるな……」

サーチで様子を伺う、木の上の惣一郎。

人の顔が多少見て取れる上位種は背中に透明な羽を4枚見えたが、何虫か元が分からない。

「ご主人様、上位種とムカデはベンゾウがやるよ!」

声と共に隣に現れたベンゾウ。

惣一郎のサーチがベンゾウにも見えるのか、まだ距離がある位置からベンゾウが声をかける。

「無茶すんなよ!」

「うん!」っとまた、声を残し消える。

惣一郎は槍を空に広げ、離れた木の上からカミキリムシめがけ、鉄の雨を降らす!

硬そうな艶の無い黒い外殻に刺さる、無数の槍。

カミキリムシがギシギシっと鳥肌が立つ様な声を上げると、ダンゴムシがゆっくりと動き出す!

瞬間移動でその反対側に現れた惣一郎が大量の瓶を空から落とす。

カミキリムシの声に、動き出すムカデと上位種。

白い煙が舞う村の中心部に向け、無数の脚が規則正しく動き出すと、背中の上位種の前にベンゾウが小刀を構え現れる!

煙に気を取られた上位種の腕が一本落ちる。

咄嗟に気付いてガードした腕だった。

「戻って来るとは、驚いたぞ……」

上位種が喋った!

女の声で……

「ありゃ、喋れたの?」

構えた姿勢を崩さず、緊張感のない問いを投げるベンゾウ。

ムカデは背中の上の事に気付かず、煙の上がる方へと進む。

「乗り心地良いね、コレ!」

ベンゾウのふざけた言葉に、ムカデが急に仰け反り、牙を広げる!

体を捻り背を見るムカデには、ベンゾウも上位種の姿も映らなかった。

探すムカデの顔に、ビンを投げ付けるベンゾウ!

そのビンを空中で割る、上位種!

だがビンの中身が拡散し、暴れ始めるムカデ!

ギーーーー!

一瞬振り返った上位種がベンゾウを見失うと、透明な羽を広げ空中でホバリングするその上位種に、円盤が2枚前方の煙の中から襲いかかる!

一枚を叩きつけ打ち落とす上位種の右脚がもう一枚の円盤によって切落とされる!

「ちょ、ご主人様! ベンゾウのでしょ!」

白い煙が晴れ、串刺しになったカミキリムシの首を落とすベンゾウが、上空で理喪棍に腰を乗せる惣一郎に文句を言う。

「いや、お前がそっちに行ったから……」

巨大なダンゴムシは体を横に丸め、背中には無数の槍がハリネズミの様に刺さっていた。

惣一郎の元に戻っていく円盤と、金属の棒。

棘をなくしたダンゴムシが、ゆっくりと無数の脚を出して体を広げる。

泡を吹き、苦しそうに……

「流石は勇者か……」

「なに? 喋れんの?」

驚く惣一郎に、上半身を跳ね上げ伸びるムカデが迫る!

だが、直径1m以上あるムカデの伸び切った体には、頭部が置き去りに忘れられていた。

そのまま崩れた家屋に、倒れ込むムカデ。

「ベンゾウがやるの!」

背後の声に、またも振り返る上位種!

倒れ込む前のムカデの背を駆け上り、跳躍したベンゾウが、両手をクロスさせ逆手に持つ黒い小刀が白く燃え上がる!

だが惣一郎の円盤が、上位種の首を斬り落とす!

「おのれ…… ここまでとは……」

落ちながら、喋る上位種の頭。

赤い目は地面に落ちるまで、ずっと惣一郎を見ていた。


「なんでぇ! ベンゾウの必殺技が出る所だったでしょ!」

上空で惣一郎の出した盾に乗り、怒るベンゾウ。

「いや、隙が出来たからつい…… あっ、ほらダンゴムシがまだ残ってるぞ!」

ふたりの視線の先には蠢くダンゴムシが、虫の息で森に帰ろうとしていた。

あれ? 襲って来ない……

ダンゴムシは背中から緑の体液を流しながら、ゆっくりと村を出ようと動き、やがて動かなくなった。

上空で顔を見合わせる惣一郎とベンゾウが、首を傾げる。





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