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第八章

七話 【必殺、手の平返し!】

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「ば、バカな…… 剣神だぞ……」

絞り出した領主の言葉が出たのは、惣一郎が鉄球でベンゾウと遊び始めた頃だった。

カマナもロドも、まだ口を開けている。

「お前… いや、貴方は何者なのだ…ですか?」

混乱している領主に、惣一郎達は、

「冒険者ジビカガイライ、鉄壁の魔導士、惣一郎!」

「閃光の乙女、ベンゾウ!」

ワン!(あ、蝶々!)

っと、暇な時に考えた紹介ポーズで自己紹介してみたが……

どんずべりだったので、二度とやらない。

『ジ、ジビカガイライ! ジビカガイライだと!先日王都で話に上がったジビカガイライだと言うのか!』

真っ青な顔の領主であった……



あっさり剣神を倒したからか、そこからは話はスムーズだった。

惣一郎は林で亡くなった男の亡骸を出し、助けが間に合わなかった事を詫び、頭を下げる。

執事がお礼を言い遺体を運び出すと、領主が中へ案内する。

手のひらを返した様に、客人としてもてなされ、豪華な応接室でまったりお茶を飲んでいた。

カマナは和解した? 喜びで、ロドとソファーでイチャイチャしていた。

さすが人を刺す女! 親の顔が見たい。

その親の領主は、額の汗を何度も拭きながら、惣一郎を持て囃す。

剣神の代わりに雇う気なのだろうと思い込む惣一郎は、適当に話を合わせて退散する気でいた。

「では、今後はギルドとも仲良くお願いしますね! そろそろ私たちはこの辺で」

「いえいえ、今おもてなしの料理を急がせてますので、どうぞ何日でもごゆっくりされていかられよ」

「いえいえ、そこまで甘える訳には!」

「いえいえいえ、どうぞご遠慮なさらず」

「いえいえいえいえ、本当お気持ちだけで」

鈍感な惣一郎も、ここまで来ると何かに気付く。

「領主様! まさかとは思いますが、もしかしてベンゾウをお雇いになりたいのですか?」

剣神に相応しいとか言っちゃったしな~

「はい?」

惣一郎は惣一郎だった。




半ば強引に領主の家を出ると、

「では、私もギルドへ和解の話をしに行きますので、ご一緒しましょう!」

と、付き纏う気なのか町まで一緒に行く事になる。

何故か溺愛のカマナをほっといて……

仕方なく領主の馬車に乗って、アマルの町へ戻る事に。

道中は諦めたのか、しつこくする事は無くなり、この先の街や王都の話を聞かせてくれた。

話は面白く、行く先々の名所や料理の話には興味も持てた。

町に戻ると真っ直ぐギルドへ向かい、突然の訪問に大騒ぎとなるが、ギルマスと領主の和解が成立し、深々と頭を下げるギルマスもホッと胸を撫で下ろしていた。

領主はギルマスと今後の話し合いがあると、惣一郎に挨拶し、奥へ消えて行く。

領主に雇われていた冒険者達が、明日から働かないと…… っと、残念そうに帰っていく。

刺された冒険者も助けられたお礼言い、頭を下げて帰っていった。

外はすっかり夕方になり、今から宿を探すのも億劫なので、惣一郎達はそのまま、話に聞いた[コマロの街]を目指し街を出る事にした。




クロの荷車で林の中を進み適当な場所でテントを出す。

夕飯は、冷凍ピザを耐熱レンガの簡易な竈で焼いてみました。

中々上手く焼けたので、今度ちゃんとした竈を考える惣一郎だった。

広げた地図を眺めながら、コマロの街の前に渓谷を通るルートと、大きく迂回して橋を渡って行くルートがある。

ベンゾウに聞けば絶対渓谷ルートだろう。

ここは安全に、迂回するか!

こっそり決めた惣一郎は、クリーンをかけてベッドに入る。





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