異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付

文字の大きさ
159 / 409
第九章

三話 【山あり谷あり】

しおりを挟む
翌朝、工房から聞こえる鉄を叩く音で目を覚ます惣一郎は、テテオに挨拶して庭で朝食の準備をする。

昨夜のお礼に、朝は惣一郎がご馳走する。

朝なので簡単なメニューになるが、テテオもカカも喜んでくれた。

食後、午前中はいつも工房で作業すると言うテテオを、見学させてもらう惣一郎。

職人の仕事に目が離せなかった。

午後テテオは店番との事で、町をぶらつく惣一郎達。

何処の家も緑が多く、庭の大木の上に家がある家もあった。

広くは無いが、長閑な印象の町が惣一郎は気に入っていた。



町のギルドを訪ねると、田舎の村の郵便局を思わせるギルドだった。

数人が働くギルドのカウンター、その向かいに背もたれの無い椅子が数個並び、窓の横の掲示板には、数件の依頼が張り出されていた。

惣一郎はカウンターで、何か運搬の依頼はないか尋ねてみるが、一件も無かった。

張り出された依頼も素材収穫依頼だけだったので、諦めて外に出る。

すると弁慶がいきなり前に出る。

その背中に鼻ぶつけた惣一郎は、

「ちょっ、いきなり何を」

そのまま、疼くまる弁慶。

ベンゾウはその先で、男の首を刎ねていた。

弁慶は青ざめた顔で、額には汗が吹き出していた。

何があった……

ベンゾウが戻り、弁慶を寝かすと胸に矢が刺さっていた。

え?

「ご主人様! キュアを!」

慌てて惣一郎は杖を握り、キュアを唱える。

少し顔色が落ち着く弁慶。

だが矢は深く刺さっていた。

パニくる惣一郎は、見てる事しか出来なかった。

ベンゾウは小刀で矢が刺さった根元を少し切り、矢を抜くと血が溢れる。

「ご主人様! ご主人様!!」

はっ!っと自分の事だと気付く惣一郎は、クリーンをかけて、薬草を押し込み、もう一度キュアをかける。

ベンゾウの焦った顔は変わらない。

刺さった場所が悪いのだ。

人が集り、ギルドの職員も出てくる。

慌てて担架を持ってくるが、弁慶には小さすぎる。

見る見る呼吸が浅くなって行く弁慶。

まだ状況が分からない惣一郎は、ダンジョンで手に入れた回復薬を思い出し、飲ませようとするが、飲む力が無い。

惣一郎は口に含み、弁慶に口を重ねる。

すると、顔色が血の気を戻す。

念の為と、残った回復薬を胸の傷口に垂らすと、押し込んだ薬草が押し戻され、見る見る傷口が塞がる。

ホッと腰を落とすベンゾウを見て、惣一郎も安心する。

「何があった?」

ベンゾウは、首を刎ねた男を見る。

惣一郎は近付き確認する……

何故ここに!



エリオットだった。

手には弓と毒の入った小瓶が転がっていた。

惣一郎はまだ頭が真っ白だった。

弁慶はもう大丈夫だろうが、意識は戻らない。

集まった人に手を借りて荷車に乗せると、そのまま武器屋に戻る。

エリオットの遺体も回収して。




テテオに事情を話し庭をまた借り、荷車に印を結び惣一郎はテレキシスで荷車を浮かせると、弁慶をベッドに滑らせ寝かせる。

惣一郎はベンゾウに弁慶を頼み、ソファーに腰を下ろす。

矢は惣一郎を狙った物だろう。

弁慶は身を挺して、矢から惣一郎を守った。

ベンゾウは瞬時に、エリオットの首を刎ねた。

だが何故エリオットがここに?

魔道具を取り出し身につけて、マルジさんにコールを送る。

『惣一郎殿! よかった、やっと連絡が取れた!昨日から何度も送り続けていたのですが、兎に角、今どちらに? エリオット元王子が逃亡したのです!』

慌てるマルジだった。

『ええ、死ぬところでしたが、仲間が身を挺して守ってくれました。その仲間も死にかけましたが、今は無事です』

静かな喋りだった。

『くっ! 申し訳ありません…… 元王子派の人間がエリオットの逃亡を手助けした様でして。国の英雄に……謝罪しきれない……兎に角、エリオットを捉えねば!』

『俺が持ってます…… 王子の首を』

『…………重ね重ね。すぐにそちらへ向かいます。どちらにおられるのでしょうか?』

『ワーテイズのサイソス』

『すぐ…

コールを切った惣一郎の顔には感情がなかった。

「ご主人様、弁慶が!」

ベッドへ駆け寄ると、弁慶の目が開く。

「旦那様、無事で何より」

惣一郎は黙って抱き寄せ、耳元で囁く。

「済まなかった…… ありがとう」


今まで疑っていた、自分が許せないのだろう。

その後も何度も謝っていた。

弁慶は真っ赤な顔で、

「妻として当たり前の事、お気になさらず」

と、弁慶も腕を回す。


回復薬とはいえ、死にかけの傷を癒せば相当体力も使うのだろう。

弁慶はまた、幸せそうに眠りにつく。


「ご主人様、気付くのが遅れてごめんなさい」

ベンゾウは、惣一郎が装備で矢など刺さらないと知っていたのだが、それを知らない弁慶が犠牲になるとは思ってもみなかった。

惣一郎はベンゾウもそっと抱き寄せる。

「よくやった、俺は全く気付かなかったよ! ベンゾウが謝る事は何も無いぞ!」

ホッとするベンゾウは、

「妻として当たり前の事!」

とふざけて見せたが、内心責任を感じていた……





しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

処理中です...