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第九章

九話 【生意気な被害者】

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翌朝、朝食を摂り、また北へと進み出す。

今日は朝から、どんよりとした曇り空だった。

弁慶用の雨具を検索していると、ベンゾウが、

「ご主人様、あれ!」

っと、前を指差す。

「今度はなんですか?」

先に車輪が片方壊れて、傾いている馬車が見えた。

馬車の周りには騎士が、狼男のベルフの集団と交戦中だった。

それも劣勢!

「クロ、急げ!」

考えるより先に動く惣一郎は、ククリ刀を4つ出し、戦いの準備を始める。

凄い勢いで走る荷車に、弁慶はしがみつく事しか出来なかったが、ベンゾウはいつでも飛び出せる姿勢で、惣一郎も荷車に立ったままククリ刀を浮かせ、前しか見ていなかった。

「間に合え!」

最後の騎士が、ベルフの爪で引き裂かれる!

「クソ! 行けベンゾウ!」

ベンゾウが走る荷車から、閃光となって飛び出す!

止まる荷車から飛び降り、ククリ刀であっという間に3匹のベルフを両断すると、閃光が4匹の間をすり抜け、その四匹が崩れ落ちる!

残ったベルフも、何が起きたか分からないだろう。

惣一郎が馬車に張り付く、ベルフ2匹の首を落とすと、ベンゾウが残りの2匹を4つにしていた。

あっという間の事で、弁慶は何も出来なかった。

悔しそうに荷車を降りる。

惣一郎は、生き残りが居ないか確認するが、騎士達6人は、すでに事切れていた。

遅れて弁慶が馬車の中に声をかける。

「誰かいるのか!」

返事が無いので弁慶は、ドアを軽く引っぺがし中を確認すると、震えた少女を庇う口髭の紳士がいた。

「すまん間に合わなかった」

っと、惣一郎が詫びる必要も無いのだが、一応の礼儀を見せる。

紳士がゆっくり馬車から顔を出し状況を確認する。

暗い表情であったが、惣一郎に礼を言う。

「助けて頂き感謝申し上げます。私は[クライス家]に仕える執事の[ノート]と申します」

タキシードの様な正装の執事は、口髭を左右にカールさせ、白髪のオールバック。

惣一郎のイメージする、THE執事であった。

ノートは馬車の中の少女を呼び、

「こちらはクライス家当主[セブ・メリル・クライス]の御息女[リンゼ・メリル・クライス]様に御座います」

厄介な家名持ちか……

「こちらは名乗ってますのよ!」

10歳にも満たない少女に怒られた、惣一郎。

「あぁ、すまん。冒険者の惣一郎だ! んで、ベンゾウに弁慶とクロ。道中危険も多いだろうが気を付けてな! じゃ!」

「待ちなさい! 冒険者が何なのその態度は!」

「お嬢様行けません。ここは爺にお任せ下さい」

すでに話も聞かず、荷車に乗り込んでいた惣一郎達に、ノートがクロの前に止めに入る。

「冒険者様、お願い致します。どうかお助け下さい。もちろん謝礼もさせて頂きます」

脅しのつもりだった惣一郎だが、本気で置いて行こうかと悩みだす。

「なぁ、そこに倒れてる6人の騎士は、あんたらを守る為に死んだんだろ? それが仕事でも何もなしか? 子供だとしても他人に礼を言わせて踏ん反り返ってるとは…… 大した家なんだな、そのクライス家ってのは」

「何ですって! クライス家を馬鹿にするなんて、これだから無知な冒険者は! いい事、代々アロス国に仕える大貴族のクライス家は、本来なら貴方方の様な……」

「お嬢様! おやめ下さい。今その様なことを」

頭を抱える執事だった。

ん? アロス国…… 何でこんな所に?

すると近くの林からまたベルフが三匹現れる。

汚名返上と弁慶が立ち上がる。

弁慶の筋肉が一回り大きくなって見えると、向かって来る先頭のベルフの頭を、無雑作に鷲掴みに止め、2匹目を上から侃護斧で叩き付ける!

ベルフは、左肩から切れるというより千切れる。

三匹目が飛び越え襲うが、すぐ下から折り返した侃護斧がベルフの頭を弾き飛ばし、汚い花火を打ち上げると、そのまま左手で持ったベルフも腕ごと両断する。

破壊力が凄い。

押し潰し千切れるといった斬れ味の悪い侃護斧。

返り血を浴びた弁慶も満足そうに振り返ると、生意気なドレスの金髪クリクリ頭の少女は、そのまま卒倒する。

よくやった弁慶!




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