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第十一章

十四話 【蟹交戦】

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国境を越えた町は、建物などは大差ないのに行き交う人のせいか、雰囲気が違う感じがした。

何が違うのか分からないが、違和感を感じる惣一郎だった。

「ザイラスにも一応ギルドはあるのですが、あの、なんて言うか連携が上手く取れていなくて、その、また不愉快な思いをさせてしまうかもしれません…… どうかその……」

子供にめっちゃ気を使わせてしまっている……

「すまん。昨日は色々と立て続けにあって、迷惑をかけた。気をつけるよ」

と反省する惣一郎。

クオンの案内で、そのまま町を出て北東を目指す。

三號街はこの先の森の中にあるそうで、クロの荷車なら明日の夜には着くだろう。

だが、すぐに道が無くなっていた。

草原はまだ進めるが、森は歩きになりそうだ。

道なき草原を進んで行くとクオンが、この辺りに[グラフ]と言う魔獣が出るので注意する様にと言ってくる。

グラフとは、カニの様だ。

硬い外殻で覆われており、剣などの攻撃があまり効かず、炎系の魔法一択で討伐するそうだが……

「ん~ クオンは炎系の魔法使えるの?」

「いえ、私は氷系しか」

ゴリ押しで行けるかな?

討伐は面倒だが、そのグラフ、美味いそうで是非食べたい!

「クロ、見つけたら頼む!」

「え? どなたか炎系の魔法お持ちなんですか?」

「いや、まぁ、なんとかなるでしょ!」

するとクロが吠える!

早速のお出まし…… デカ!

青い蟹が鋏で何かをしきりに食べている。

草?

近づくと全貌が見えて来る。

「こりゃ戦車ぐらい、ありそうだな~」

「せんしゃ?」

「いや、何でもない」

荷車をおり、グラフの後ろに回る。

クオンは心配そうに見ていた。

弁慶じゃ潰しちゃうかな~

蟹は味噌が美味いし、なるべく潰したくはない。

ベンゾウに手足をバラしてもらうか。

呑気に考えていると、蟹が急に振り向いて鋏で攻撃してくる!

間一髪、避ける惣一郎! 危な!

弁慶が侃護斧を構える。

「弁慶、潰すな! 鋏を狙え!」

振り下ろされた鋏めがけて、弁慶の侃護斧が当たると、ガッキーン!っと大きな音をあげ、弁慶が侃護斧を手放す。

痺れた様だ!

「ベンゾウ! 手足の関節を切れるか!」

閃光になり、真下に潜り込むベンゾウが小刀で波紋を作る!

パンっと高い音を立てると足が一本切り落とされる!

「よし、関節が弱点だ!」

惣一郎のククリ刀がオレンジの円盤になり、蟹に襲い掛かるが、鋏で叩き落とされる。

ベンゾウが2本目を狙うが、蟹も動きが早い!

動きを止めないと!

弁慶が集中し、侃護斧を構える。

「俺が受け止める! 弁慶、鋏の関節を叩け!」

前に出る惣一郎が、振りかぶった鋏の間に鉄球を深く撃ち込む!

閉じなくなった鋏の一撃を、幻腕で受け止めると、関節に侃護斧が叩き込まれ、砕ける様に鋏がぶら下がる!

すると直ぐ、もう一本の鋏が弁慶を襲う!

惣一郎がククリ刀で飛び出た目を両断すると、その鋏が地面に刺さる!

弁慶が鋏を抱きかかえ、動きを止めると、ベンゾウが波紋を広げ、鋏を根本から斬り落とす。

弁慶と惣一郎の幻腕で、下から蟹をひっくり返すと、腹部の柔らかそうな所にベンゾウの小刀が突き刺さる!

バタつかせた足はゆっくり動きを止める。

「いや、強くね!」

息を切らす惣一郎に、クオンが、

「火を使わず倒す人を、初めて見ました……」

っと、驚いていた。




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