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第十一章

二十五話 【季節外れの怪談】

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ノイテを収納し、何も無かったかの様に帰ろうとする惣一郎。

「待て惣一郎! 礼をする」

「いいよ、気にすんな」

「待て惣一郎! 礼をする」

「聞いたよ!」

「じゃなんて言えば、礼ができる?」

「………」

厄介なのに捕まったと、諦める惣一郎。

夕飯をご馳走すると言うので座って待つ。

さっき食ったの忘れたのだろうか?

「大っきい人! 強いね!」

「デカい人、凄かったね!」

「巨人の……」

「惣一郎だ!」

ホルビット達は全部で7人。

村と言うには少ない人数だった。

ベンゾウも弁慶も、別のホビットに取り囲まれ圧倒されていた。

「おっぱい大きいね!」

「おっぱいお化けだね!」

「旦那様、潰しちゃダメか?」

やめときなさい。

あのベンゾウも引いている……

するとチルが戻ってきて、

「できたぞ惣一郎、いっぱい食べろよ!」

うん、小さい……

惣一郎は一口で食べ、

「うん、美味しかったよ、じゃ元気でな!」

っと帰ろうとする。

「待て惣一郎、泊まってけ!」

「何処にだよ!!」

完全にホルビットのペースだった。

強引に引き止められ、岩場の近くでテントを出す事になる。

「いい家だな、惣一郎!」

「ああ、ありがとう。 じゃおやすみ」

惣一郎は川の土手に、ホルビット出没注意の看板を立てようと決意して寝る。



夜中に雨が降り出し、テントを叩く。



翌朝、雨は上がりテントを出ると、ホビット族も家も無かった。

「あれ、何処行ったんだ?」

周りを見渡したが、見当たらない。

まぁいいか…… 見つかるとうるさいし。

今のうちに川を渡ろうと、ベンゾウ達を起こし進み始める。

すると昨夜の雨で川は増水しており、最初にテントを置いた場所は、完全に水の中だった。

「何これ…… オカルト?」

不思議な体験に感じたが、なぜか感謝する気にはなれなかった……

惣一郎のテレキシスで荷車ごと川を渡り、そのまま進みながら、

「夕べ、ホルビット族いたよな?」

っと、馬鹿な質問をする惣一郎。

「ええ、潰しておけば良かった……」

まぁ、いたのは確かな様だ。




荷車は草原を進む。

木が徐々に景色を埋めて行き、また林へと風景を変えて行く。

木の根が荷車の進行を阻み、歩き出す惣一郎達。

するとすぐ狼男に襲われる!

五匹のベルフは、ベンゾウと弁慶にあっさり倒されるが、後から凄い数のベルフが襲いかかって来る!

「な、なんだ? 多いわ!」

慌ててククリ刀を出し、円盤が飛び回る!

ベルフに混ざり、上位種のライノルフが、数を増やす!

ベンゾウと弁慶は乱戦だ。

クロを守りながら少しずつ数を減らす惣一郎。

40匹近くの上位種は、異常な光景だった。

弁慶の侃護斧が重そうだ! 魔力切れだろうか?

円盤が援護に飛ぶ……


突然襲われたベルフの大群との戦闘が、ようやく終わりが見えて来る。

ベンゾウが最後の一匹を仕留めると、肩で息をする。

「すまん、ハァハァ、ベンゾウ殿! 魔力が」

「ハァハァ、大丈夫」

弁慶は魔力を強化しても、長い時間は持たないというが、元々燃費の悪い魔法だ、ここまで戦えれば十分だろう。

「ハァハァ、しかし… なんなんだ急に」

するとベンゾウが声を上げる!

「ご主人様!」

奥からライノルフより一回り大きな魔獣、[ベルフの王]が唸りながら現れる!

大きな手の爪が脇の木を掴み砕く、仲間を殺された怒りの現れか!

惣一郎が苦無を浮かせ、前に出る!

咆哮と共に鋭い爪が惣一郎に襲いかかると、その腕に苦無が深く刺さる!

貫通までは出来ないが、苦痛の叫びをあげ、後ろに下がり飛ぶ!

惣一郎には消えた様に見えた。

上から大きく口を開け、惣一郎に飛びつくと!

幻腕が王の下顎を掴みあげ、勢いを止める。

そこにベンゾウが斬り込み、王は下半身を落とす。

惣一郎は、掴んでいた上半身を投げ落とす。

「助かった、ベンゾウ!」

弁慶も構えていた侃護斧を下ろす。

オカルトの次はモンスターかよ……





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