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十二章

二十八話 【奴隷紋】

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クロの案内で奥に進む惣一郎達。

時折出るゴドルを倒しながら歩いて行くと、右手奥に岩が積み重なっており、地下へ降りる洞窟の入り口が見えた。

クロは素通りだ。

「クロ待て! アレって宝箱が出る小部屋臭くないか?」

「ポイね!」

「確かに!」

ワン!(早く飯にしようぜ!)

「やっぱりそうか!」

惣一郎は洞窟の入り口へ向かい、中を伺い出す。

「結構、深そうだな」

「アタイ通れるかな……」

入口は狭いが、中は広そうだ。

「じゃ俺とベンゾウで、中を見てくるよ」

森の中に不自然に、岩が積まれた洞窟へ入って行くふたり。

弁慶は心配そうに見送る。


大きな石を足場に、少しづつ降りて行く惣一郎。

開けた空間に出ると、壁の松明に勝手に火が灯る。

「ナニこの演出!」

明るくなった広い部屋に、白い毛に覆われた大きな背中が見える。

ゴドルの上位種だろうか?

白い虎男は、余裕なのかゆっくりと立ち上がり振り返る。

目が合う惣一郎。

「クソ! ダンジョンじゃなきゃ絶対高く売れるのに!」

コイツも余裕だった。

盾を2枚出し印を結ぶ。

ベンゾウも小刀を抜いている。

白いゴドルは、空腹なのかヨダレをぼたぼたとこぼし、唸り出す。

盾を前に構えると、白い影を残してゴドルはいなくなっていた!

「なっ、はや!」

ベンゾウも銀の閃光になって追いかけている。

惣一郎には残像しか見えない攻防だった!

慌てて壁を背にする惣一郎が、残像の先を探そうと、必死に目を凝らす!

ベンゾウに匹敵するスピードなのか!

すると残像が白い影を落とす!

ゴドルの左腕だ!

良かった、ベンゾウの方が早い様だ!

ホッとした瞬間!

目の前に、大きな口を開けたゴドルが現れる!

前に出していた盾を挟み、壁に押し付けられる惣一郎!

グフ!っと息を漏らすと、幻腕で押し返す!

ゴドルの目は、惣一郎を見ていなかった。

後ろからベンゾウに、2本の小刀を心臓の場所に刺され、すでに絶命していた。

壁に挟まれ、幻腕と右手で盾を押し戻していた惣一郎。

ゆっくりと抜かれた小刀は、ゴドルを挟み盾をも貫通し、惣一郎の右手に小さな傷を付けていた。

「ああああああああああああああああああ!」

惣一郎の右手の小さな傷から、血が出てるのを見たベンゾウが騒ぎ出す!

惣一郎は直ぐにゴドルを押しのけ、ベンゾウに駆け寄る!

「大丈夫だ、何ともない! ちょっと刺さっただけだ!」

頭を抱え、痛そうに疼くまるベンゾウ!

奴隷紋が浮き上がっている!

主人に危害を加えた罰なのか!

「ベンゾウ! 何ともない大丈夫だ!」

「あああああぁあぁ」

「ベンゾウ!」

クッソ! 何だっけ、どうすれば解除になるんだ! 落ち着け! えっと……

「許す! 俺はベンゾウがした事を許す!」

頼む!

奴隷紋がゆっくりと消えて行く……

ベンゾウは、そのまま気を失った。

クソ、こんな小さな傷で! 

「ベンゾウ」


気を失ったベンゾウを抱えて洞窟を登るのは、無理そうだ。

惣一郎は、弁慶にコールで事情を一方的に話し、目を覚ましたら戻ると伝える。

ゴドルの出る森に、弁慶とクロだけ残すのも心配だった。

「すまん、ベンゾウ……」





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