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十四章

二十一話 【手合わせ】

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ギルド長の部屋へ入ると、ハゲた長髪の老人が立っていた。

白いローブから鶏ガラの様な手を出し、長い杖を持っている。

「お初にお目にかかる、惣一郎殿。私は[ギルド特別室ザザンド支部室長]の[ヒー・メギアド]と申します。本部から連絡は受けております」

「初めまして、ジビカガイライの惣一郎です」

「コイラットよ、ココからはギルドでも限られた者しか聞くことができぬ、極秘の話になるので、済まぬが席を外して頂けるかな?」

「はい! ヒー様。では下におりますので御用の際は」

そう言うと席を立ち、部屋を出るこの部屋の主。

「フォホホ、いや肩が凝るの~ 何年ぶりじゃろか、こんなに畏まったのはの~」

アハハ、素ですか……

「して、惣一郎よ、お前さんいつ使うつもりなんじゃ?」

「ふぇ? ああ、準備したいので、明日一日もらって明後日の朝にでも」

「ほか! 忙しないの~ それと荷物があると聞いておったが、あまり大きと部屋に入らんぞ?」

「そうなの? どのぐらい?」

「まぁ、普通にドアを通る大きさかの~」

「なるほど、気を付けます」

「じゃ明後日の朝に迎に来よう!」

「え? ええ、よろしく…… あ、待った! 日の出前にお願い出来ますか?」

「なんじゃそんな早く行くのか? まぁ年寄りは早起きじゃ、良かろう日の出前に!」

老人はあっさりと帰っていった。

こんな感じなのね……

無駄に緊張した惣一郎は、テーブルに置かれた、冷めたお茶を啜る。

戻って準備をしようと部屋を出ると、騒がしい一階。

階段を降りるとまた、水を打った様に静まり返る。

「惣一郎様! お話はもうお済みで?」

「ええ、俺もこれから準備に入りますので、戻りますね」

「畏まりました、何か必要な物がございましたらお申し付け下さい!」

「ありがとうございます…… そだ、木箱をお願い出来ますか? ドアを通れるサイズで細長い物を!」

「木箱を……ですか? 畏まりました、ご用意致しましょう」

惣一郎は大体の大きさを伝え、中庭へ戻る。




中庭では、トーマやゴザ、ギコルの男どもが、武器や防具の手入れをしていた。

「他は、風呂か?」

「ええ、女は長い」

なるほど、じゃまだテントには入れないか……

惣一郎はテントの外にテーブルを出し、3人に缶ビールを出してやる。

おつまみは、作り置きでもアツアツの唐揚げ。

「カーー! 美味い! なんて美味いエールだ!」

「この油っぽい鳥肉と、相性バッチリだな!」

「この入れ物は、まさかミチル鋼なのか?」

三者三様の感想を聞きながら惣一郎は『コイツらの装備も考えないとな……』っと考えていた。

「しかし、まさか俺ら5人だけで、ハイオークの王をやれるとはな~ 間違いなく冒険者でも初だろう!」

誇らしげに、勝利の美酒に酔う3人。

「あ~ ウチのベンゾウはソロで倒したよ、しかも無傷で」

っと水を差す、惣一郎。

無言が続く……



「なぁ…… あんたら一体何者なんだ? 神の子か何かか?」

「やだな~ 普通の新人冒険者だよ」

「「「 どこがだよ! 」」」

「惣一郎殿、ちょっと相手してくれないか?」

トーマが利き腕だろう左腕の袖を捲り上げ、腕相撲を申し込んでくる!

だがすぐ、

「あっ! すまん! 右でいいぞ!」

惣一郎の無い左腕に気付いて、やっちまったって顔をする。

「いや、左でいいよ」

惣一郎が幻腕を出し、テーブルに肘を突く。

目を丸くする3人。

「そ、それは、魔力なのですか……」

冷や汗を流すトーマは、

「おもしろい! 手合わせ願う!」

っと惣一郎の幻腕と手を組む。

が、必死の形相のトーマの腕は、ピクリとも動かない。

「ちょ、ちょっと待て! なぜだ! プロットの魔法まで使えないぞ!」

「へぇ~ 弁慶と同じプロットの魔法が使えたのか!」

惣一郎は簡単にトーマの手の甲をテーブルに擦り付ける。

「嘘だろ、トーマが力比べで負けるなんて!」

「いい機会だし、皆んなが何が出来るか教えてくれないか?」

「これから共に戦うなら当然か……」

「じゃ、話は早い! 立ち会えばいいじゃね~か」

そう言うと簡単に背中の長剣を抜くギコル。

惣一郎は理喪棍を持ち、盾を2枚と鉄球を3つ浮かせる。

「おいおい、なんじゃそりゃ!」

驚くトーマを差し置いて、気が短いギコルの剣が、弧を描く!

盾で受ける惣一郎。

死角から鉄球が、ギコルの腹にめり込む!

もう一枚の盾は、ゴザの前で視覚を奪う。

光矢が撃てないゴザが、素早く移動するが、盾はゴザの前を離れない。

「惣一郎殿、俺はプロットとグラビティーが使える! 行くぞ!」

手の内を晒し大楯を構え、突進してくるトーマ。

幻腕で盾を殴りつけると重く、突進を止めるも、押し戻せなかった。

鉄球がトーマの脇腹に当たるが、鈍い音を立て、あまり効いていない様だ!

なるほど前衛に持ってこいだな!

すると光矢が惣一郎の前の地面に刺さり、眩しい光を放つ!

視覚を一瞬奪われた惣一郎。

「私はライトアローと、アイスジャベリンが得意です!」

一瞬の隙に、惣一郎の周りに大きな氷柱が刺さっていた!

長剣を振り抜くギコルが視界に見え、盾を飛ばすが、氷に映ったギコルであった!

「こっちだ!」

一閃が逆から飛んでくる!

それを幻腕で掴み止める!

「俺の剣は[ファイヤーソード]だ!」

だが、何も起きない。

「あれ! 火がでね~!」

ダンジョン産だろう長剣にも、幻腕は有効なのを知る。

コンビネーションもいいし、皆使い勝手が良さそうなスキルであった。



「なるほど、いいチームだな!」

「ハァハァ、バケモンか! あの手に掴まれたら何も出来なかった! ハァハァ」

「くっそ~ ハァハァ、俺様のファイヤーソードが! ハァハァ」

「ハァハァ、弓を引く暇もないとは」

惣一郎がテーブルに戻り、ビールを開けると、風呂から出て来た湯上がりの、色っぽいツナマヨが、

「私にも、御指南頂きたい!」




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