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第十八章

六話 【ゼリオスの秘策】

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惣一郎にセシルからコールが入る。

『惣一郎様、ゼリオスさんから連絡が来まして、正午に島全体に粉を撒くそうです』

『おっ、準備出来たのかな? 了解。みんなにも伝えてくれ』

『はい!』

先に島に入ったゼリオス達が、正午に大掛かりな事をやらかすそうだ。

「ベンゾウ、弁慶! 陽が真上に来たらマスクしろよ! ゼリオス達が殺虫剤を撒くらしい」

マイマイカブリの頭を潰しながら弁慶が、頷く。

ベンゾウはバラバラの厄災の死骸の上で、お菓子を急いで食べていた。





「おい、ジジイ! 陽が真上に来たらコレをしろってさ!」

「なんじゃいこりゃ」

岩に腰掛け、渡されたマスクを見て答えるジゼル。

辺りには数体の大型の厄災が、死骸となり潰れ切り刻まれていた。

「ちょ、丁度ええ、も、もう休もう……」

疲れた声のギリアーク。

ショウニカガイライの3人は、ギリアークの魔法で攻撃の威力が上がるのが楽しくて仕方なかった。

「こんなおもしれぇ魔法初めてだぜ! クンクン、おっ! もう一匹来るぞ! 休憩なんざ後だ後々!」

「申し訳ないギリアーク様、こりゃわしも癖になりそうで…… そぉれ、どっこいしょ!」

「ガオーーーン!!」

「がっはは~ 若いってええの~」

「ジゼルよ、貴様座っとらんで、ええ加減止めぬか!」





「ちょっ団長! 少し休まぬか?」

「ああ、俺も流石に疲れたぞ……」

エルとトーマが座り込む。

「ああ、今セシル殿から連絡が入った。正午にゼリオス殿が薬を撒くらしい。それまで少し休もう」

息も乱さず、兼房虎徹を一閃!

ツナマヨの背後の巨大なオケラが、二つに分かれ崩れる。

今度はオケラの大群だったらしい。

木の上からゴザが降りて来て、

「近くにはもういないみたいだ」

っと伝えると、ギコルがマジックバッグから、最近覚えたおにぎりを配り出す。

「今度は間違いなく美味いぞ! 俺の自信作だ」

みんなの顔が曇る……





「団長、イグラシオ団長!」

「えっ? ああ、すまん」

「いつまで槍に見惚れてるのですか! しっかりしてください団長! 今セシルさんからコールが入りました」

惣一郎から預かった武器や防具を慣らす為、ワイドンテは、近くの魔獣や厄災など、手当たり次第狩っていた。

攻撃する度、攻撃を受ける度に「おお~」っと声を上げる騎士達。

イグラシオも普段は指揮だけの事が多いが、今日は率先して先頭に立っていた。

「それで、なんと?」

「はい、正午にスーサイド・キップスが、島全体に毒薬を撒くそうで、配られたマスクなる口を覆う布を付けろとの事です」

「コレか……」

「ええ、ちゃんと鼻まで隠す様にとの事」

「ふむ、槍の事もあるし、コレもただの布ではなさそうだな……」

イグラシオは団員に、休憩の指示を伝える。

「正午にはマスクなるこの布を、装備するそうだ! 今のうちに水分を摂る様に!」





ゼリオス達ハツネツガイライは、ビルゲンとバオの2人と、島に到着してからすぐに、森の開けた場所で地面に大きな魔法陣を描いていた。

「しかし凄いですね、このポンチョっていう外套は」

「ああ、迷彩と言うらしいが、動物が近くに来ても我々に全く気付かないとは、まるで透明になったみたいだな!」

「コレなら厄災に邪魔されず、作業出来ますね」

「過信するなと惣一郎殿も言ってただろ! 気付く厄災もいると! しかし確かに凄い…… 本当に何者なのだろうな、惣一郎殿は」

「僕の夫になり、王になるお方だ!」

「ビルゲン様、妄想はそのぐらいに! もう直ぐ正午です。仕上げにかかりますよ!」

銀色の粉で描かれた魔法陣は、ゼリオスとビルゲンを中心にうっすらと光だす。






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