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第二章 汐里と亮太
第22話 舞台裏
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気がつくと、僕の体はふわふわと宙に浮いていた。
『あれ? おかしいな……僕、自転車を押して横断歩道を渡ってたはずなのに……あれ? あの人……お父さんだ』
下を見ると、動かないもう一人の僕を抱きかかえて、泣き叫んでいるお父さんが見える。
『お父さん泣かないで! 僕はここにいるよ!』
慌ててお父さんに近づこうとした僕の肩を、誰かの手が優しく抑えた。
『お母さん?』
振り返ると、久しぶりに見るお母さんがにこにこ笑って立っていた。
『随分早くこっちに来ちゃたのね、亮一』
ギュッと抱きつく僕の頭を撫でて、お母さんは残念そうに言った。
『亮太のこと……可愛がってくれてありがとう……本当、いいお兄ちゃんだった……でっかい花丸だよ』
『うん……ねぇお母さん、僕はもう、亮太やおじいちゃん達に会えないの?』
僕はお母さんを見上げて聞いてみた。
『そうね……きっといつかは会えるけれど、しばらくの間は無理ね……傍にいることはできても、私達の姿は亮太達からは見えないのよ』
『そっか……そうなんだ……』
途端に、僕は亮太が心配でたまらなくなった。
亮太はまだ小学校に入ったばかりだ。
亮太は優しくて大人しいから、嫌なヤツに意地悪とかされるかもしれない。
僕が守ってあげなくっちゃ!
『そっか……やっぱり亮一は、亮太のお兄ちゃんね』
お母さんはまた僕の頭を撫でて、にっこりと笑った。
あれから、どのくらいの時間がたったんだろう。
亮太はすっかり僕の背を追い越して、立派な大人になった。
今は、おじいちゃん達と離れて一人暮らしをしている。大きくなっても、亮太は相変わらず真面目で大人しい。
『うーん、これで素敵なお姉さんが亮太と一緒にいてくれたら、最高なんだけどなあ……』
僕は、コンビニのグリーンの制服を着て黙々と品出しをしている亮太を眺めながら考えていた。
ぼたり、亮太の手からパンが滑り落ちる。
「はい」
屈み込みこもうとする亮太より先にパンを手にしたお姉さんが、にこりと笑ってそこに立っていた。
あ、この人だ。
僕は直感した。
「すみません」
亮太は視線も合わせずにぼそりと言って、パンを受け取った。
うーん……これは……僕が背中を押さないと、なにも進展しないような気がする!
僕がやきもきして日々を過ごしているうちに、チャンスはやってきた。
その日、深夜のコンビニにはお客さんが一人もいなかった。
そこへ、僕が目をつけているあのお姉さんが、らしくない暗い表情で店に入ってきた。
『これは! チャンスだ! 亮太、あのかわいいお姉さんに話しかけるんだ!!』
僕は大きくなった亮太の背中を、思いっきりばしんと叩いた。
「これ……全部自分用ですか?」
よし、よく言った! バンザイ!
あれ? なんかお姉さんが変な顔してるぞ……おかしいな……
「今日……誕生日ですよね……20歳の……初めてお酒を飲むのに、この度数をこの量は危険です」
そ、そうだよ……飲み過ぎはよくないよ……うちのお父さんみたいになっちゃうよ……
「あと、このスイーツの量も……一度に採ると……」
「ああ、もう、うるさいわね!!」
わあ! お姉さんが怒っちゃった! どうしよう……ってあれ? 亮太、どこに行くの? あ、あれは亮太が好きなプリンじゃん……美味しいんだよね、カラメルソースがほろ苦くてさ……僕も大好き!
「これ、俺のオススメです。賞味期限がもうすぐきれるから、誕生日プレゼントです」
なんだって⁉ 誕生日プレゼント⁉ ナイスアイディアだよ亮太!!
あれ? お姉さんの表情がなんだか微妙にイラッとしているような……なんで?
「おめでとうございます」
「うっ……」
あっ……お姉さん……泣いちゃった……
なんか、かわいそう……亮太は慰め……ないのか……まあ、黙って泣き止むのを待つのも悪くないよ、うん。多分ね。
「どうぞ」
うんうん、ここですかさず気遣いのBOXティッシュ。いいよ、亮太にしちゃ上出来だよ!
あ……お姉さん、なんか逃げるようにして行っちゃった……まあ、いっか……
これからが勝負だよ、これからが。
頑張れ、亮太!
『あれ? おかしいな……僕、自転車を押して横断歩道を渡ってたはずなのに……あれ? あの人……お父さんだ』
下を見ると、動かないもう一人の僕を抱きかかえて、泣き叫んでいるお父さんが見える。
『お父さん泣かないで! 僕はここにいるよ!』
慌ててお父さんに近づこうとした僕の肩を、誰かの手が優しく抑えた。
『お母さん?』
振り返ると、久しぶりに見るお母さんがにこにこ笑って立っていた。
『随分早くこっちに来ちゃたのね、亮一』
ギュッと抱きつく僕の頭を撫でて、お母さんは残念そうに言った。
『亮太のこと……可愛がってくれてありがとう……本当、いいお兄ちゃんだった……でっかい花丸だよ』
『うん……ねぇお母さん、僕はもう、亮太やおじいちゃん達に会えないの?』
僕はお母さんを見上げて聞いてみた。
『そうね……きっといつかは会えるけれど、しばらくの間は無理ね……傍にいることはできても、私達の姿は亮太達からは見えないのよ』
『そっか……そうなんだ……』
途端に、僕は亮太が心配でたまらなくなった。
亮太はまだ小学校に入ったばかりだ。
亮太は優しくて大人しいから、嫌なヤツに意地悪とかされるかもしれない。
僕が守ってあげなくっちゃ!
『そっか……やっぱり亮一は、亮太のお兄ちゃんね』
お母さんはまた僕の頭を撫でて、にっこりと笑った。
あれから、どのくらいの時間がたったんだろう。
亮太はすっかり僕の背を追い越して、立派な大人になった。
今は、おじいちゃん達と離れて一人暮らしをしている。大きくなっても、亮太は相変わらず真面目で大人しい。
『うーん、これで素敵なお姉さんが亮太と一緒にいてくれたら、最高なんだけどなあ……』
僕は、コンビニのグリーンの制服を着て黙々と品出しをしている亮太を眺めながら考えていた。
ぼたり、亮太の手からパンが滑り落ちる。
「はい」
屈み込みこもうとする亮太より先にパンを手にしたお姉さんが、にこりと笑ってそこに立っていた。
あ、この人だ。
僕は直感した。
「すみません」
亮太は視線も合わせずにぼそりと言って、パンを受け取った。
うーん……これは……僕が背中を押さないと、なにも進展しないような気がする!
僕がやきもきして日々を過ごしているうちに、チャンスはやってきた。
その日、深夜のコンビニにはお客さんが一人もいなかった。
そこへ、僕が目をつけているあのお姉さんが、らしくない暗い表情で店に入ってきた。
『これは! チャンスだ! 亮太、あのかわいいお姉さんに話しかけるんだ!!』
僕は大きくなった亮太の背中を、思いっきりばしんと叩いた。
「これ……全部自分用ですか?」
よし、よく言った! バンザイ!
あれ? なんかお姉さんが変な顔してるぞ……おかしいな……
「今日……誕生日ですよね……20歳の……初めてお酒を飲むのに、この度数をこの量は危険です」
そ、そうだよ……飲み過ぎはよくないよ……うちのお父さんみたいになっちゃうよ……
「あと、このスイーツの量も……一度に採ると……」
「ああ、もう、うるさいわね!!」
わあ! お姉さんが怒っちゃった! どうしよう……ってあれ? 亮太、どこに行くの? あ、あれは亮太が好きなプリンじゃん……美味しいんだよね、カラメルソースがほろ苦くてさ……僕も大好き!
「これ、俺のオススメです。賞味期限がもうすぐきれるから、誕生日プレゼントです」
なんだって⁉ 誕生日プレゼント⁉ ナイスアイディアだよ亮太!!
あれ? お姉さんの表情がなんだか微妙にイラッとしているような……なんで?
「おめでとうございます」
「うっ……」
あっ……お姉さん……泣いちゃった……
なんか、かわいそう……亮太は慰め……ないのか……まあ、黙って泣き止むのを待つのも悪くないよ、うん。多分ね。
「どうぞ」
うんうん、ここですかさず気遣いのBOXティッシュ。いいよ、亮太にしちゃ上出来だよ!
あ……お姉さん、なんか逃げるようにして行っちゃった……まあ、いっか……
これからが勝負だよ、これからが。
頑張れ、亮太!
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