風魔術は最強でした! ~転生したらもふもふ猫だったので、風魔法で無双しつつ魔女のペットとして暮らしていきます~

子子

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1章

13.初戦闘 『いやどんなチートだよ!』

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 アセリアと共に、薬草を探して森へと足を踏み入れる。
 そこは薄暗く、人の気配がまるでなかった。

(どうか強い魔物、出ませんように……!)

 先ほどまでは森にハイキングにでも来ているような気楽さがあったが、奥へと進むにつれどんどん別世界へと足を踏み入れていくような心地の悪さがある。

『これは中々に不気味な雰囲気だな』
 
「平気。ちゃんと道は覚えてるから」

『それならいいけど。アセリア、決して無理はしないでくれよ』

 アセリアはテトの心配そうな声に、ふふっと微笑んだ。

「大丈夫。いざとなったら、全部ふっとばしてお城までの道をつくっちゃえばいいから」

『今の君が言うと冗談に聞こえないな』

 実際問題、全部ふっとばすことが出来るかは、定かではない。

 風の宮にある訓練場はそう大きなものではないため、試せる魔術に限界があったからだ。

 そのせいもあり、テトの魔力量の限界についても、まだ計れないでいる。

(ステータスとかそういう便利なものがあればいいけど、なさそうだしなあ)
 
 アセリアは迷いなく森の奥へと進んでいく。

 やがて日差しが樹々に遮られ、周囲はどんどんと薄暗さを増していった。

『……あの、アセリアさん。本当にこっちであってる?』

「ん、あってる」

『俺が城に行ったときと、雰囲気が違うような気がするんだけど』

「あのときは崖の下から戻ってきたから。そっちの道はちょっと、うろ覚え」

 これがあったから、無事に戻れたんだよ。と、アセリアは首元からペンダントのようなものを取り出す。

 ペンダントトップには、小さな水晶が取り付けてあった。水晶の中には粒子の細かな砂粒のようなものが入っていて、振っても逆さを向けてもずっと、一定方向に集まったままで動かない。

『これは?』

「土魔法で作った魔道具。お母様と対になってるから、城の方向を指してるの」

『へえ。便利だな。って……それ、リシア様にも俺たちの居場所がばれてるってことじゃないのか?』

「大丈夫、距離まではわからない。庭にいると思われるだけ」

(常習犯め)

 ドヤ顔をしてみせるアセリアに、何と言葉を返せばいいかを迷う。

 そのとき、不意に茂みがガサガサと音を立てた。

『! なんだ!?』

「たぶん、魔物」

『ま゛っ!?』

 冷静なアセリアとは裏腹に、テトはぎゃっと毛を逆立ててアセリアの肩に飛び乗る。

 同時に茂みを払いのけるようにして、1匹の魔物が姿を現した。

(こ、これが魔物……!)

 超大型犬ほどはありそうな、巨大なトカゲだった。見た目的には、前世で見たコモドドラゴンが近い。

 全身は緑みがかった赤で、ぎょろりとした目と鋭い牙を持っている。

 背中から尻尾にかけては鋭いトゲに覆われ、四肢の爪も鋭く尖っていた。

「キングイモリ……。毒を持ってるから気を付けて、テト」

『え、イモリなの!? でっか。しかも毒あるのかよ』

 薬草採取にあたって、アセリアはしっかり魔物図鑑で魔物も網羅してきたらしい。

 その毒イモリは、鋭い目でじっとこちらを見据え、時々しゅるしゅると舌を出し入れしている。

『……アセリア、やっぱ引き返す? 俺イモリはちょっと……』

「猫なのに?」

『だから俺は本物の猫じゃないって――』

 いつもの軽口を叩いているうちに、イモリはこちらの品定めを終えたらしい。

 敵と判断したのか、目を見張るような素早さで地面を這いながらこちらに襲いかかってきた。

『うわっ、早っ! ちょ、アセリア!』

「任せて」

 アセリアは慌てず騒がず両手を前に突き出した。

「テト、魔力」

『あいよっ、《風よヴェントゥス》』

 開いた接続部から、俺の魔力が勢いよくアセリアへと流れ込む。

 同時にアセリアが、詠唱を開始した。

「《風よヴェントゥス 強く吹けファクトゥス・フォルティス 神の息吹がごとくディヴィナス・アンヘリトゥス》」
 
 詠唱とともに突風が発生し、今にも襲いかかろうとするキングイモリを吹き飛ばす。
 イモリは勢いよく木にぶつかり、そのまま地面に落下する。

『やった! ナイスアセリア!』 

「ふう……、良かった」

 アセリアはほっと息を吐く。

「あのイモリ、風属性とは相性が悪いから。ちょっと心配だった」

『そうなのか?』

「うん。重くて飛びにくいし、皮が厚くて防御力が高い上にちょっと切ったくらいだとすぐ回復する」

『いやどんなチートだよ』

 言ったそばから、地面に落ちたキングイモリがごそごそと動きだした。どうらや一瞬、気を失っていただけらしい。

『げっ、起きたぞ。どうする?』

「うーん。燃やしちゃうのが一番なんだけど、それは出来ないし……」

『風圧で呼吸を奪うとか』

「キングイモリは皮膚とか……でも呼吸できる」

『いやだからどんなチートだよ!』

 そうこうするうちに、イモリの背後で再び茂みが揺れた。
 そこには今目の前にいるイモリよりもさらに、一回り大きなキングイモリの姿がある。

『ええええ、増えたあああ』

「そういえば、今繁殖期かも」

『つがいかよ! 襲いかかってこないでおとなしくイチャイチャしてろよ!』

 アセリアはじっと、テトを見た。

「魔物は魔力が好物……繁殖期……、魔力いっぱい」

『……え。もしかしなくても俺のせいですかね?』

「おいしそうなんだね、きっと」

『ンンンン、そんな人生の終了の仕方は嫌すぎる!』

 カップルの餌になって終了なん御免だ。

 しかしぶんぶんと首をふるテトが生きの良い食事に見えたのか、キングイモリの親玉は牙をむき、威嚇の声をあげた。

『ひえっ、ちょっとふざけてる場合じゃなさそうだな」

「《風よヴェントゥス》――!」

 アセリアの詠唱とともに突風が発生し、飛びかかろうとしたイモリの体を吹き飛ばす。

 しかし、やはりイモリはすぐに体勢を立て直し、起き上がってくる。

『場所が悪いな。こう木々が密集してたんじゃダメージが出ない』

「うん、すぐぶつかって止まっちゃう」

(考えろ、どうすればいい。このままイモリの餌はゴメンだ)

「シャアアアシアアッ」

『うわっ!』

 考えるうちに、同時に二匹が襲いかかってきた。

 アセリアが同じく風を発生させたものの、正面から外れた一匹は空中で身をよじることで風から抜け出し、再び飛びかかってくる。

 アセリアの詠唱は間に合わない。

(危ない!)






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