風魔術は最強でした! ~転生したらもふもふ猫だったので、風魔法で無双しつつ魔女のペットとして暮らしていきます~

子子

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1章

18.力の証明 「その力を示してみせよ」

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「風の魔術師如きに、魔の森の奥まで探索できるとは思えません、父上!」

(……こいつ!)

 完全に見下した目でそう告げたのは、赤髪の王子だった。

 攻撃的でつり上がった目が印象的な男で、お世辞にも品があるとは言いがたい笑みをその顔に浮かべている。

「フレン兄様……」

(やっぱり、こいつが第三王子か)

 ぽつりと呟いたアセリアの言葉に、こいつが炎属性の第三王子だとテトは確信する。

 アセリアが研究に没頭している間、テトは毎日ごはんのことをばかり考えていたわけではない。

 ミント先生のおかげで、猫の身がいかに油断されやすいかわかったテトは、それを存分に利用することにしたのだ。

 城の中をあちこち探索し、聞き耳を立て、時には猫好きの女性(たまに男性も引っかかってしまったが)をもふもふの毛並みで誘惑して、城内の噂を集めてまわった。

 そしてこの第三王子連中が、アセリアを貶めている首謀者だと、突き止めたのだ。

 さすがに王子の周りは警備が厳しく、遠目からでしか顔を確認できなかったが、間違いないだろう。

 なにより、あの顔からは性根の悪さがにじみ出ている(偏見)。

「ラディカがなぜ高価なのか、分かっているのか? あれは貴重だ。探そうと思っても、すぐに見つかるものではない。故に、高値がつくのだ」

 第三王子フレンは、アセリアを貶める絶好き機会だとでも思っているのか、鼻を膨らませて意気揚々と告げる。

「つまり、お前の身には不相応なものだということだ。金で買ったのか――否、『風』のお前にそこまでの資金力があるとも思えない。となると、どこかから盗んだのか?」

 フレア王子は、獲物を見つけた蛇のように、目をぎょろりとさせる。
『……くっ、このクソ王子が!』

 テトは歯噛みし、今にも飛び出して反論してやりたい衝動に駆られる。 

 だが、王の前でそんなことをやらかすのが不味いことくらいは、さすがにわかる。

(我慢だ、我慢。ふふふふ、夜道には気を付けることだな……!)

 テトは必死に自分を抑え、ペチコートの下で爪を尖らせる。あの憎たらしい顔をずたずたに引き裂けるよう、これからも身体強化を磨いていかねばなるまい。

 アセリアは沈黙していたが、やがて顔を上げ、王と第三王子を見据えた。  

 その瞳には、恐れも怯えもない。

 ただ毅然とした強さだけが宿っていた。

「ラディカは、自分たちの力だけで手に入れました」

 アセリアが反論してみせることが意外だったのか、第三王子は少し驚いたように眉を上げる。

「手に入れた? どうやって」

「魔の森の奥に自分で出向いて手に入れたのです」

 きっぱりと言い切ったアセリアに、控えていた群臣たちは、一様にざわめき始めた。

「風の魔術師が、魔の森の奥になどいけるはずもない」

「そもそもアセリア様は侍従師団をお持ちではないはずだが」

「冒険者を率いたにしても、あれほどの量を見付け出すのは……」

 アセリアに向けられる、疑惑と侮蔑の視線。彼女の風の魔術師としての力量を、信じる者は誰一人としていないらしい。

 第三王子はその顔に、はっきりとした嘲笑を浮かべていた。

「はっ、何度も言わせるな。嘘をつくならもっとましな嘘をつくことだな! 風属性のお前では、魔の森に入った途端殺されるのがオチだと言っているだろう」

「以前の私ならそうだったかもしれません。ですが私は、風魔術の本当の力に気付いたんです。魔の森の魔物程度、敵ではありません」

「……なに?」

 その言葉に、ざわめきが一気に大きくなる。
 アセリアは真っ直ぐに王の目を見つめ、告げた。

「証拠をお見せしても宜しいですか?」

「……構わん」

 王の許しを得ると、アセリアはゆっくりと手を上げた。

 刹那――

「お待ちください」

 アセリアの集中を砕くように、待ったがかかった。
 第三王子かと思ったが、違う。アセリアに優しくしてくれていた筈の、第一王子だ。

「陛下。以前のアセリアならばともかく、今のアセリアの言葉を信じるならば、この場で魔術を使わせることは、控えるべきです。被害が出てしまってはいけませんから」

 第一王子アーサーはそう言うと、王城の魔術演習場のある方角をすっと指し示した。

「どうせなら、外で的当てを見せてもらいましょう。僕もアセリアの風魔術を、見て見たいですから」

(この王子、何考えてるんだ?)

 純粋にアセリアを信じてくれていると思えないのは、ただの被害妄想だろうか。

(でもアーサー王子は、アセリアの以前の魔術がどんなものか、知ってるんだよな?)

 ふっと、あのときの記憶が蘇る。

 アセリアとテトが出会ったあの日、行方が分からなくなったアセリアを探して、アーサーはわざわざ風の庭にまでやってきてくれた。

(あのとき、アセリアの力では、城壁を越えることなんてできないって、思ってる感じだった)

 なのに、アセリアが自己申告したくらいで、すんなり受け入れるものだろうか。

(うーん……、まあ考えても仕方ないか)

「よかろう、ではアセリア。存分にその力を示してみせよ」

「承知いたしました、陛下」

 アセリアは恭しく淑女の礼を取る。
 そうして俺たちは王に新生風魔術をお披露目するために、訓練場へ
と向かうことになった。

 まさかその先で、とんでもな事態が待ち受けているとは思いもせずに。




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