仕事やめても……いいですか……?

キュー

文字の大きさ
50 / 159
お仕事頑張りましょう

俺なんか……11 映画化決定

しおりを挟む
  絵本を読んで終わった。久しぶりに読んだが、ちょっと、胸に来て目の奥がじわり熱くなる。表情には出さずに彼女に絵本を返す。
「いいお話だね。好きなの?」
「天使はマックなの。」
「そうなんだ。」
よくわからないけど、俺はニッコリ笑う。
「天使なの。キスして!」
少し怒ったように彼女が言うので、どうやら、俺は益々困ったような顔になっていたようで…
「こらこら、ナナ。」
「だって、騎士様が天使にキスしないから…」
「ナナ!だめよ。騎士様は天使の騎士じゃないのよ。」
とうとう、彼女の母が止めにはいった。

俺にはこの状況がわかりません。誰か説明して下さい。

  ナナちゃんは彼女の母に叱られ自分の席に戻った。よくわからない俺は困ってしまった。お、俺が何か悪い事した?ナナちゃん?
「ごめんなさい。うちの娘が変な事言って。」
「いえ、逆に気になりますね。絵本好きなんですね。俺も読みましたが、記憶を無くした天使の話ですよね。」
ナナちゃんが持っていた絵本は出版され話題の本として紹介された時に、俺も初めて読んだ。たしかシリーズで、何冊か出ていたように記憶している。
「ファイブさん。ここにも置いてあるのよ。」
ほら、と指差す。
店内の壁際に白いテーブルクロスのかかった小さなテーブルがあり、そこに壁に立て掛けて絵本は置いてあった。側には絵本を持った女性と店主のマックさんが並んで写っている写真があった。
  絵本を手に取り何気なく表紙をめくる。
「あ、これ、サイン……」
作者のサイン入りだ。
「この本の作者が弟に会いに来た時に撮った写真なの。」
彼女は写真立てを指でつつく。
「へぇ~この方が作者なんですね。え?会いに来た?」
「作者は私の同級生なの。で、天使のモデルが弟なのよ。」
はい?弟さんが、モデルですか?
「今はもう、こんなおっさんだけどね、小さい頃はそりゃあ、もう、可愛くて可愛くて!ホント天使だったのよ。」
おっさんって、今でも、とっても、美人ですが……子どもの頃……可愛だろうなぁ……
「そうだよ、可愛い天使!」
ジグが話に乱入してきた。いつの間にかマックを抱き締めている。
「ジグ、だめ、僕の。」
サシャ、今の発言は危険だよ。
「騎士様!天使が危ない…助けてあげて!」
ナナちゃん、やっぱり、わからないです。それに、騎士様はジグでしょ?
「もう、落ち着いて下さい!皆様!」
店内に声が響いた。
「やっぱり。こうなったわね。」
なんか、怒っている人が登場した。獣人の女の子。フォーも獣人だけど彼の姿は獣に近い。彼女はほとんど人と変わらない姿で、耳と尾があり一目で獣人とわかる。
「はい、はい、そこ、離れて。」
鋭く目をやり、びしっとジグを指差して言う。それから小さなサシャに優しく声を掛ける。
「サシャ、いらっしゃい。今日も全部ご飯たべた?」
「うん。食べたよ。」
サシャの頭を撫でて、偉かったね、と言い、次にナナに顔を向ける。
「新しいご本を読んだのね。この方は絵本の騎士様じゃないのよ?わかってるでしょ?」
「でもぉ」
「似ているのは、ファイブさんをイメージしてるかもね……シンラさんに今度聞いてみるといいわ。ね?でも、ファイブさんに無理を言ってはだめ。」
「はい、ごめんなさい。」
「ファイブさん、申し訳ありません。ナナが言っていた騎士様とはこちらの本です。最近出たので、ご存知ないかとおもいます。騎士の姿が……挿し絵が似ていますから。ナナが思い入れちゃったのも無理ないかも。」
俺は渡された絵本を開いた。
「ジグさん。初めてお目にかかります。マックの婚約者のキュールです。」
「初めまして。兄のジグです。」
「よろしくお願いします。」
「よろしく。」
「そろそろ彼を離していただけませんか?」
「久しぶりなのに…」
「お願い・します。」
バチバチ火花が散ってるようだけど、俺は本に夢中だった。天使と、騎士の話。悲恋だ。涙が出そうだ。ナナちゃん。確かに、騎士様は天使にキスしなきゃ!でも、俺は騎士様じゃないからね。絵本の騎士様はドラマの騎士に似ていた。うん。これは意識してると思う。マネージャーはこの本知ってるのかなぁ。帰ったら聞いてみないとな。

  あ、着信、メッセージだ。
「うわっ!このタイミングで!こわっ!」
「え、何何?」
俺の手元を覗き込むレイナさん。って、なぜ?
「やっと、情報解禁だって~」
レイナさん…止めて下さい…
「映画化~」
「やった~おめでと~勿論ファイブさん主演でしょ?シンラとサクラが相談していたから…」
なぜ皆さん知ってるんです?俺より先に…たしかに、マネージャーから、連絡が今、ありました。って、マネージャーはこの作者と知り合いなの?
…天使シリーズ最新作映画化決定、『天使の騎士』主演ファイブ・ヨナ・クスクス頑張ってね…
って、そんな大事な事を事後承諾って、ありえねェ。

マネージャーから追伸
だって、オファーが来た時点で言ったら、尻込みして、受けてないでしょ?あんたはできる子だから大丈夫よ。休暇あけから打合せやるからね。忙しくなるわよ~
それから
天使に会ってみて感想は?美人でしょ?
でもね、天使に恋しちゃだめだよ~
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

指令を受けた末っ子は望外の活躍をしてしまう?

秋野 木星
ファンタジー
隣国の貴族学院へ使命を帯びて留学することになったトティ。入国しようとした船上で拾い物をする。それがトティの人生を大きく変えていく。 ※「飯屋の娘は魔法を使いたくない?」のよもやま話のリクエストをよくいただくので、主人公や年代を変えスピンオフの話を書くことにしました。 ※ この作品は、小説家になろうからの転記掲載です。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...