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お仕事の時間ですよ

王宮騎士物語 第3話 花の髪飾り

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  王宮の大広間にて、近衛騎士の任命式が行われていた。見習いが取れた新人騎士は一年毎に異なる配属先で経験を積む。各人の能力に合わせて、成人の十八歳を節目に配属先が決定し、任命式が行われる。その後は三年から五年を目安に転属がある。だが、近衛騎士と役職に付くものはその限りではない。
「ソフィーナ王女、今年成人した近衛騎士達に祝福をお願いします。」
「名前を呼ばれたものは前に。」
一人一人名前を呼ばれ、王女の前に進み片膝を付く。
下げた頭に軽く手をおいた王女は祝福を言葉をかけ、置いた手のすぐ側にキスをおとす。
「クロード前へ。オーツ・カガーレの名を与える。祝福を。」
八年の時を経て再会する二人。儀式通りのキスはいつまでも頭に熱さを残す。クロードは言葉を交わすことなく列に戻った。
「ハンス前へ。ドーハ・ラベールの名を与える。祝福を。」
ハンスは前に進み出て王女の祝福をうけた。下を向いたまま、呟く。
「お約束通りに、ここに……」
王女も小さくつぶやく。
「よろしく、頼みますよ。」
ほんの数秒、祝福のキスが長かったかも…エリーは王女と騎士の再会にドキドキしていた。

  儀式が終わり、退出後エリーは騎士団長に呼ばれた。
「何かご用ですか?」
エリーが団長の正面に立つと、団長の後ろにクロードがいるのに気付く。
「エリー殿。」
クロードが進み出て、エリーに声を掛ける。その手に持った物を差し出した。
「これをお返ししたくて……」
クロードの手には少し色褪せた花飾りがあった。成人男性には不釣り合いな子どもが付けるような髪飾りに何故か懐かしさを感じる。
「それは……髪飾り?」
「はい、八年前……」
色褪せ、少し軸の曲がった花飾りを見つめながら……八年前………その言葉に導かれ、エリーは草の香りの緑の丘に一瞬にして戻っていた。鮮やかな記憶は幼さの残る自分を見つめる目と重なり、頬が熱くなる。
「…あ、………ああ!………姫様の落とし物!探して下さったのですね。」
  まだ、彼らが見習いの騎士だった頃、王女が訓練所に視察に訪れた。そこで……王女の馬が暴走し、その時落とした髪飾り。リボンはハンスが拾い、王女の手に戻ったが、花飾りは見つからなかった。それすらも今まで忘れていたエリー。花飾りを差し出され、それが何だったかを瞬時には思い出せなかった。
「わざわざ、ありがとうございます。クロードさん……。王女にお伝えいたします。」
クロードの手から花飾りを受け取ろうとエリーが手を出すと、掌に花飾りと彼の手が乗せられた。僅かに触れた手が名残惜しそうにゆっくり離れていく。お礼を言うエリーの瞳に映ったクロードが微笑んだ。
「いえ、本来なら、八年前にお渡しすべきものでした。それを近衛騎士になって返す事を励みにここまでこれたのです。そのお礼を一言、言いたくて。恥ずかしながら団長にお願いしてしまいました。」
「まあ、素敵。騎士様のお気持ちは、王女様もお喜びになられますわ。」
エリーはクロードの気持ちが、嬉しくて、弾むように答えた。
「あ……その……」
「?」
何か言いたげな顔でエリーをクロードが見る。少し首を傾げるエリー。次の言葉が出てこず、顔を赤くするクロード。クロードの心の内を想像できる団長はしばらく二人を遠巻きに見ていたが、思わず吹き出した。
「エリーさん。クロード、そろそろ時間だ。行こうか。……クロードは案外、シャイなんだな。はっきり言わないと伝わらないぞ。」
「団長!」
ニヤニヤ笑う団長に、やめてくださいと言葉に出さずに願うクロードを押しやり、口を開く。
「エリーさん、こいつ友達いないから、仲良くしてやってくれよな。」
「はい。こちらこそ。王女様のお付きの私も護衛の一人。よろしくお願いいたしますね。」
「…はい。……だ、団長!……痛いですっ……よろし…く……おねが…いします。」
「ははは、前途多難だな、クロード!」
バシバシと団長に背中を叩かれながらクロードが返事をした。
  エリーは、その様子を見ながら、楽しい人達ね。と思った。
  エリーの顔には自然と笑みが浮かんでいた。

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