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お仕事の時間ですよ
俺なんか……5 不思議体験?
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ドラマの撮影が進むにつれて、自分の中で役の人物が占める割合がどんどん大きくなる……物語の中の人物だけど、俺の中で生きてる…ような気がする。
撮影中は『ファイブ』は眠りについているようで、俺はクロードとして考え、行動していている。役が…はまって、調子がいい時は、撮影終了や中断のカットが掛かっても、クロードを引き摺っているみたいで、急な周囲の雰囲気の変化に、俺は自分のいる場所が分からなくなる。サクラの声で力が抜けてようやく自分が何処にいるのか、誰なのか理解して、現実を意識出来るようになる。
ドラマの撮影は待ち時間も長い。俺は一回、素に戻ると、また役に入るには時間が必要になる。共演者を待たせたり、周囲に迷惑をかけたくないので、なるべく素の自分に戻らず、半分クロードの感覚でいる。半分って言うのはサクラがそう呼んでるだけで……俺が撮影中、完全集中時が全。自分に戻ると素。役に入ったままで撮影の待ち時間に、見た目はボーッとしているけれど現実に戻りきってないアイドリング状態を半……って。だから、半分クロード状態だと、ここに座っているのも、実は凄く違和感がある。ドラマの撮影とか、待ち時間、とか理解しているのに、じっとしているのが苦痛になってくるし、気がつくと考えているのは、ハンスとの剣術稽古で負けて悔しかったこととか、エリーに見つめられて胸が熱くなったこととか、剣の感触、甲冑の重み……今回俺は随分役に入り込んでるよな……
「ねえ、ファイブ君はどう思う?」
急に…声が身体を抜けた。……ファイブって…誰…?目の前にソフィーナ王女…いや、ちがう……セリーヌ………
あ……途切れた。急に…現実。ああ、サクラは……いないか………
「こら、セリーヌ、ダメだって。」
ああ、休憩中か、いつの間に…セリーヌ撮り終わったのか……ミライ君もいる…ああ、止めてくれてたんだ。いつもありがとう。よく現場が一緒だから、知ってるんだ。俺が半の状態の時は話し掛けないでって、サクラがお願いしていたから……
休憩中にソフィーナ役のセリーヌさんに話しかけられたみたいだね。俺、半の時って、黙って座っているだけのように見えるから。
「いいじゃないの!休憩長いんだし、ファイブ君も、聞いてよ。」
困った顔のミライ君がごめん、と小さく呟く。いいよ、大丈夫。皆が集まる場所にいた俺も悪い。
「ごめん、ボーッとしてた。何の話?」
「不思議体験の話!」
「不思議体験?」
何だ?不思議な体験?
「なんかね……予告じゃなくて、えっと、予言?予知?そういう力持ってる人がいるの知ってる?」
「ああ、聞くよね、たまにいるみたいだよ。」
「でね、そういう力って、大小の違いはあるけど、皆持ってる力だと思うの。」
「え?予言?とか?皆?」
びっくりだよね、身近にそんな力を持った人がいっぱいいたら便利だろうな。
「ん……ちょっと違うかな…そんな凄い事じゃなくても、今日だって………ほら、撮影の予定が変更になることってあるじゃない?」
「うん。台詞とか、小物とか、たまにシーン丸ごと変わったり…スケジュールとか…」
今日は何かあったかなあ?話題変わった?
「今日さ、髪飾りが、変わったの。」
髪飾り?そんなの、いちいち見てないよ………
「予定では翠の物ばかりで、その中から一つ選ぶの。」
そんなに重要な事なのかなぁ。
「翠選んでたよね?」
「今日は翠と黒の二択だった。」
「何かおかしいとこあった?」
なんかどうでもいいや。髪飾りの色なんて……話が長くなりそうで、ちょっと引いて聞いていた。セリーヌさんはどんどん話を進める。
「私ね、翠と黒が出されるって知っていたの。」
「最初のセッティングでは翠の三つだったの見たけど、落として壊れたから、他のを出しただけだろ?壊れるのも知っていたの?」
ミライ君は彼女が何を言いたいのか、探る感じで言った。
「それがね、黒の髪飾りを見るまで私も忘れていたの。でも、黒の髪飾り見た時、ああ、これか!って、これ前から知ってるって、感じたのよ。」
ふう~ん。見るまで気付かないって……
「すごく前に……小さいときに……夢に見たんだと思う。よくわからないけど。ファイブ君、ミライ君、そういう事ってない?」
小さい時の夢?覚えてないな。
「ああ、正夢的な……予知夢とか?俺は見たことないけど?」
「ないと思う。」
「えーっ、ホントにない?私、皆にもよくあることだと、思っていたの。映画とか見ててさ、初めて見るのに前に見たと感じることない?」
「似たような話は沢山あるからねぇ、どちらかが真似したんじゃないかって思うけど……」
「近くにいた人が喋った瞬間、あ、このシーンこの台詞、昔見た、とか、聞いた、とか……例えば、小さい頃すごいスピードで移動する感覚や風景を覚えていたの。でも、何時、何の乗り物に乗った時の事か、わからなかったのね、大人になって、免許とって、初めて自分の運転でホバーに乗ったら、あ、これ、この瞬間だって解って……風景、スピード、感覚すべてが一致して、でも私それまでホバーに乗ったことなかったから。その記憶があるのはやっぱり、予知夢ってことよね。」
「じゃあさ、色々わかっていたら、便利じゃん?学生時代はテストの出る問題とか、賭けとか、危険回避とか、できそうだよね。」
「ん~それが、夢に見た時は意味がわからないのよ。断片的だし、はっきり覚えてないし。その出来事が起こって、分かるみたいな。」
本当に予知夢を見ても、覚えていない、その瞬間が過ぎる時点で、分かるなんて……それって、なんだか……
「はぁ~?なんか、役には立たないね。それ。不思議だね~って、それだけだね。」
あ、ミライ君が、アッサリ言っちゃいました。俺もそう思うよ。
「うん。本当に。そう思うわ。役に立たない。でも、でも~不思議体験でしょ?ああ、誰かこの気持ち、わかってくれないかなぁ~」
まあ、結局、黒の髪飾りを見たことが(予知夢?)あった、不思議だね~って事。誰かに聞いてもらえれば…セリーヌさん……気がすんだみたい。俺は疲れたけどね。ミライ君も苦笑いしていたね。セリーヌさん…不思議ちゃんなのかなぁ……意外……
「ん?予知夢?見るよ…たまに。ん。ハッキリ覚えているよ。そうだね、便利っちゃあ…便利かな。」
後日……身近に、不思議体験者を発見しました。フォーによると、何でも、予知夢に限らず、獣人は勘や感覚の鋭い人が多くて、不思議な力を持ってる人が多いんだって。凄いね。
撮影中は『ファイブ』は眠りについているようで、俺はクロードとして考え、行動していている。役が…はまって、調子がいい時は、撮影終了や中断のカットが掛かっても、クロードを引き摺っているみたいで、急な周囲の雰囲気の変化に、俺は自分のいる場所が分からなくなる。サクラの声で力が抜けてようやく自分が何処にいるのか、誰なのか理解して、現実を意識出来るようになる。
ドラマの撮影は待ち時間も長い。俺は一回、素に戻ると、また役に入るには時間が必要になる。共演者を待たせたり、周囲に迷惑をかけたくないので、なるべく素の自分に戻らず、半分クロードの感覚でいる。半分って言うのはサクラがそう呼んでるだけで……俺が撮影中、完全集中時が全。自分に戻ると素。役に入ったままで撮影の待ち時間に、見た目はボーッとしているけれど現実に戻りきってないアイドリング状態を半……って。だから、半分クロード状態だと、ここに座っているのも、実は凄く違和感がある。ドラマの撮影とか、待ち時間、とか理解しているのに、じっとしているのが苦痛になってくるし、気がつくと考えているのは、ハンスとの剣術稽古で負けて悔しかったこととか、エリーに見つめられて胸が熱くなったこととか、剣の感触、甲冑の重み……今回俺は随分役に入り込んでるよな……
「ねえ、ファイブ君はどう思う?」
急に…声が身体を抜けた。……ファイブって…誰…?目の前にソフィーナ王女…いや、ちがう……セリーヌ………
あ……途切れた。急に…現実。ああ、サクラは……いないか………
「こら、セリーヌ、ダメだって。」
ああ、休憩中か、いつの間に…セリーヌ撮り終わったのか……ミライ君もいる…ああ、止めてくれてたんだ。いつもありがとう。よく現場が一緒だから、知ってるんだ。俺が半の状態の時は話し掛けないでって、サクラがお願いしていたから……
休憩中にソフィーナ役のセリーヌさんに話しかけられたみたいだね。俺、半の時って、黙って座っているだけのように見えるから。
「いいじゃないの!休憩長いんだし、ファイブ君も、聞いてよ。」
困った顔のミライ君がごめん、と小さく呟く。いいよ、大丈夫。皆が集まる場所にいた俺も悪い。
「ごめん、ボーッとしてた。何の話?」
「不思議体験の話!」
「不思議体験?」
何だ?不思議な体験?
「なんかね……予告じゃなくて、えっと、予言?予知?そういう力持ってる人がいるの知ってる?」
「ああ、聞くよね、たまにいるみたいだよ。」
「でね、そういう力って、大小の違いはあるけど、皆持ってる力だと思うの。」
「え?予言?とか?皆?」
びっくりだよね、身近にそんな力を持った人がいっぱいいたら便利だろうな。
「ん……ちょっと違うかな…そんな凄い事じゃなくても、今日だって………ほら、撮影の予定が変更になることってあるじゃない?」
「うん。台詞とか、小物とか、たまにシーン丸ごと変わったり…スケジュールとか…」
今日は何かあったかなあ?話題変わった?
「今日さ、髪飾りが、変わったの。」
髪飾り?そんなの、いちいち見てないよ………
「予定では翠の物ばかりで、その中から一つ選ぶの。」
そんなに重要な事なのかなぁ。
「翠選んでたよね?」
「今日は翠と黒の二択だった。」
「何かおかしいとこあった?」
なんかどうでもいいや。髪飾りの色なんて……話が長くなりそうで、ちょっと引いて聞いていた。セリーヌさんはどんどん話を進める。
「私ね、翠と黒が出されるって知っていたの。」
「最初のセッティングでは翠の三つだったの見たけど、落として壊れたから、他のを出しただけだろ?壊れるのも知っていたの?」
ミライ君は彼女が何を言いたいのか、探る感じで言った。
「それがね、黒の髪飾りを見るまで私も忘れていたの。でも、黒の髪飾り見た時、ああ、これか!って、これ前から知ってるって、感じたのよ。」
ふう~ん。見るまで気付かないって……
「すごく前に……小さいときに……夢に見たんだと思う。よくわからないけど。ファイブ君、ミライ君、そういう事ってない?」
小さい時の夢?覚えてないな。
「ああ、正夢的な……予知夢とか?俺は見たことないけど?」
「ないと思う。」
「えーっ、ホントにない?私、皆にもよくあることだと、思っていたの。映画とか見ててさ、初めて見るのに前に見たと感じることない?」
「似たような話は沢山あるからねぇ、どちらかが真似したんじゃないかって思うけど……」
「近くにいた人が喋った瞬間、あ、このシーンこの台詞、昔見た、とか、聞いた、とか……例えば、小さい頃すごいスピードで移動する感覚や風景を覚えていたの。でも、何時、何の乗り物に乗った時の事か、わからなかったのね、大人になって、免許とって、初めて自分の運転でホバーに乗ったら、あ、これ、この瞬間だって解って……風景、スピード、感覚すべてが一致して、でも私それまでホバーに乗ったことなかったから。その記憶があるのはやっぱり、予知夢ってことよね。」
「じゃあさ、色々わかっていたら、便利じゃん?学生時代はテストの出る問題とか、賭けとか、危険回避とか、できそうだよね。」
「ん~それが、夢に見た時は意味がわからないのよ。断片的だし、はっきり覚えてないし。その出来事が起こって、分かるみたいな。」
本当に予知夢を見ても、覚えていない、その瞬間が過ぎる時点で、分かるなんて……それって、なんだか……
「はぁ~?なんか、役には立たないね。それ。不思議だね~って、それだけだね。」
あ、ミライ君が、アッサリ言っちゃいました。俺もそう思うよ。
「うん。本当に。そう思うわ。役に立たない。でも、でも~不思議体験でしょ?ああ、誰かこの気持ち、わかってくれないかなぁ~」
まあ、結局、黒の髪飾りを見たことが(予知夢?)あった、不思議だね~って事。誰かに聞いてもらえれば…セリーヌさん……気がすんだみたい。俺は疲れたけどね。ミライ君も苦笑いしていたね。セリーヌさん…不思議ちゃんなのかなぁ……意外……
「ん?予知夢?見るよ…たまに。ん。ハッキリ覚えているよ。そうだね、便利っちゃあ…便利かな。」
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