仕事やめても……いいですか……?

キュー

文字の大きさ
53 / 159
お仕事の時間ですよ 2

転・マリー 12

しおりを挟む
  目が覚めた。助けが来たようだ。遠くでクロードが怒鳴る声が聞こえる。名を呼ばれる。近くに来ている。

気付いて!ここにいるわ!

  扉を叩き、助けを呼ぶ。
「ここよ!クロード!ここよ!助けて!」
私の声が届いたのか、扉がノックされた。
「ここか!扉から離れて!」
扉の鍵が壊され、助けに部屋に入ってきたのはハンスだ。

「怪我はない?」
「ええ、クロードの声がしたわ、彼も来てるの?彼は姫様の護衛じゃないの?姫様もここにいるの?ご無事なの?」
王女を心配する私の口から一息に吐き出された言葉に、ハンスは王女の無事を告げ、少し悲しげな瞳で呟いた。
「……君は……目の前の俺より……クロードの名を呼ぶのか…?」
あ、しまった…ハンスは私を心配してくれたのに……
混乱してるわ…私…

  ドラマでは王女を助けたのはハンスで、その時、怪我を負った。そして、エリーを助けたのはクロード。この世界の王女は攫われていない。遠話能力持ちのクロードは王女の護衛を離れて私の捜索に駆り出されたのだろう。
  この世界で私を助けるのは、誰が正解なのだろう……ううん、ハンスが怪我をしなかったし、王女が無事ならいいわ……問題は次の竜巻なの。ハンスが怪我をしていないなら王女と馬車に乗る理由がない。馬車に乗るのは私よね。大丈夫よきっと。

「ハンス……私……王女様が心配で……ごめんなさい……気が動転して……あなたが来てくれて、嬉しいのに……つい……」
「…マリー……すまない……助けが遅くなって……俺も…気が急いて…君が無事で安心して…なのに、クロードを呼ぶからつい、嫉妬してしまった………」
「ハンス……」
一歩……また一歩。近づく距離に、胸が高鳴る。ハンスとセリーヌの記憶のミライが重なる。この気持ちはマリーのもの……?それともセリーヌの?もう、そんな事…どうでもいい……
  私の腕が頼りなく宙泳ぎ、ハンスの胸に触れると同時に、ハンスに力強く抱き締められた。
  内から熱い感情が高ぶり、もう言葉が出ない。ハンスの顔が近い。恥ずかしくて思わず目を閉じた。髪に触れる息がゆっくりと降りてきて頬にかかる。そして……頬に触れる……唇……………

あっ…………

「……そろそろ…いいかな?ご両人。」
「!」
クロードがいつの間にかハンスの後ろに立っていた。
「ここを出るぞ。」
後ろに続くニヤニヤ顔の騎士達から無事でよかったなと、声を掛けられて少し照れた顔のハンスに私は手を引かれ廊下を走った。

  建物を出た瞬間、足元がゆらりと揺れた。急に血の気が引いて……あ、貧血だ……と感じた。目の前が真っ暗になり、身体の力が抜けた。
「マリー!?」
ハンスの声が遠く響く。やだ、気持ち悪い…………



  救急車のサイレンが鳴っている。

  

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

処理中です...