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黒の章
黒の子 1
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「ホアン、俺、騎士になる。」
「また、将来の夢が変わった……トンの貸本屋で働くのが夢じゃなかった?」
「トンみたいな貸本屋も読み放題でいいなと思ったけど、昨日店でトンが腰が……って愚痴っていたから、理由を聞いたんだ。」
「どうして腰が痛いって?」
「うん、本の仕入れに街まで行って、大量の本を担いで帰ったから、腰が痛いって。」
「そうねぇ、本も沢山あると重いわね。」
「内緒だよって、腰の痛いの飛んでけ~ってやったら、ありがとよって。」
にこにこしながらクロードが言った。
「やれやれ。飛んでけ~、はやっちゃだめだよって、言ったよね?」
「ごめんなさい……でも、痛いのが治るのは良いことじゃないの?どうしてやっちゃだめなの?」
「そうだね…闇雲にダメじゃ、納得できないよね。」
「ホアン、遠くの人の声も聞こえるんだ。誰かな……返事しちゃだめ?」
「おや、また新しい力が?……絶対返事しちゃ駄目だよ。悪い人がここまで探しに来ちゃうからね。」
「ホアン……相変わらず心配症だね。」
「クロード、この国では魔力を持つ者は希少な存在なんだ。」
「何度も聞いたよ、でも、俺の出来ることなんて、痛いの痛いの飛んでけ~くらいで……」
「いや!それが、持たざるものには、欲しくて欲しくてたまらないものなんだ。クロードはこれからどんどん新しい力が出てくるだろう。ほら……」
彼はクロードの髪を一つまみ持ち上げた。灰色だった髪は年々少しづつ黒髪混じりになっている。それとともに魔力が増加してきている。
「お母さまの加護が薄くなって……もう何年もすると、完全に黒くなる。クロード、絶対に、力を人に見せたり話したりしてはいけないよ。それと、森の奥にも行っちゃダメだよ。」
「はぁい。わかりましたぁ。」
何度も繰り返し聞かされるホアンの言葉を聞き流し、軽く返事をした。
「…ホアンは心配症なんだよ、それにいつも言ってるお母様の加護ってなんだよ、訳わかんね。俺にはお母様なんていないんだから……あ、でも魔女は…いるか…ははっ……」
独りで呟くクロードの声はホアンには届いていない。クロードは、森の奥だって、こっそり行ってるが、危険はないし、どうしてダメダメって言うのか不思議だった。
「クロード、あ~そぼ~」
幼馴染みのハンスが遊びに誘いにきた。
「ちょっとまってて~」
近所の大人達は村の外れのクロードの家近くには滅多にやって来ない。すぐそばには鬱蒼とした森があり、その森の奥にはその昔魔女がいたと噂されていた。
そんな恐ろしげな所に足を踏み入れる者はなく、年に一度肝試しに子ども達が森の外周付近をうろつくぐらいだ。
「平気さ、魔女なんていないよ。ただの噂さ。」
「ハンス、俺は魔女が怖くて、こなかったんじゃないぞ。大人の言いつけにしたがったまでだ。」
家の中まで声が聞こえる。いつもなら、ハンス一人でやって来るのに、今日はハンスとは別の聞きなれた声がする……クロードはニヤリと笑い、腰にバッグを着けて、ドアを開けた。
「やあ、ハンス。今日はそっちの腰抜けも来たのか?」
「黙れ、クロード!俺は腰抜けなんかじゃないぞ。」
「いつもねえちゃんの尻にくっついてる臆病ものじゃないか。」
「まあ、まあ、クロード、ベルタも…今日は森のキノコを取りに行くんだろ?」
クロードはベルタをからかいながらも、ドアの横に積まれた籠をハンスに手渡し、自分も左手に一つ持った。ベルタはキノコ取りは初めて……大人の手伝いしかしたことなかった……なので、キノコの見分け方が分からないだろうからクロードが一緒に見てやるつもりだ。
「ねえちゃんの許可はとってきたのかい?」
「まさか!魔女の森へ行くなんて言ったら、許しちゃくれないよ。ハンスの家に行くって言ってきた。」
「そうか、じゃあ取ったキノコは持って帰らないのか?」
「ハンスに貰ったって言えば……」
「バカだな、ハンスは変わり者の俺と付き合いがあるって、知られてるんだぜ?ハンスにもらったなんて事言ったら俺が森で取ってきたのバレバレじゃん。」
「むぅぅ。」
「いいじゃないか、いっぱい取ってきて、皆で食べよう。旨くて、珍しいキノコを取りにいこうぜ。沢山取れたら売りに行こう。」
三人は森に向かう。村の子ども達は、子どもだけで森に入ってはいけないと、きつく言われている。だが、子どもだけではなく毎年何人か森で行方不明者が出る。そして発見されないのは森の魔女に食べられたからだと、言う奴もいる。
「ベルタは俺の事気味悪くないのか?大人達は目も合わせないぜ?」
「俺は全然怖くねぇぜ。別に、皆がお前を怖がってるわけじゃねえぞ。本屋のトンだって、パン屋のマッツーだって、お前とは仲良いじゃないか。魔女の隠し子なんて噂信じる方がバカなんだよ。」
「本当…かもよ?」
ふざけて、そうクロードが言うと、バカなことを言うな、と二人に突っ込まれた。
「また、将来の夢が変わった……トンの貸本屋で働くのが夢じゃなかった?」
「トンみたいな貸本屋も読み放題でいいなと思ったけど、昨日店でトンが腰が……って愚痴っていたから、理由を聞いたんだ。」
「どうして腰が痛いって?」
「うん、本の仕入れに街まで行って、大量の本を担いで帰ったから、腰が痛いって。」
「そうねぇ、本も沢山あると重いわね。」
「内緒だよって、腰の痛いの飛んでけ~ってやったら、ありがとよって。」
にこにこしながらクロードが言った。
「やれやれ。飛んでけ~、はやっちゃだめだよって、言ったよね?」
「ごめんなさい……でも、痛いのが治るのは良いことじゃないの?どうしてやっちゃだめなの?」
「そうだね…闇雲にダメじゃ、納得できないよね。」
「ホアン、遠くの人の声も聞こえるんだ。誰かな……返事しちゃだめ?」
「おや、また新しい力が?……絶対返事しちゃ駄目だよ。悪い人がここまで探しに来ちゃうからね。」
「ホアン……相変わらず心配症だね。」
「クロード、この国では魔力を持つ者は希少な存在なんだ。」
「何度も聞いたよ、でも、俺の出来ることなんて、痛いの痛いの飛んでけ~くらいで……」
「いや!それが、持たざるものには、欲しくて欲しくてたまらないものなんだ。クロードはこれからどんどん新しい力が出てくるだろう。ほら……」
彼はクロードの髪を一つまみ持ち上げた。灰色だった髪は年々少しづつ黒髪混じりになっている。それとともに魔力が増加してきている。
「お母さまの加護が薄くなって……もう何年もすると、完全に黒くなる。クロード、絶対に、力を人に見せたり話したりしてはいけないよ。それと、森の奥にも行っちゃダメだよ。」
「はぁい。わかりましたぁ。」
何度も繰り返し聞かされるホアンの言葉を聞き流し、軽く返事をした。
「…ホアンは心配症なんだよ、それにいつも言ってるお母様の加護ってなんだよ、訳わかんね。俺にはお母様なんていないんだから……あ、でも魔女は…いるか…ははっ……」
独りで呟くクロードの声はホアンには届いていない。クロードは、森の奥だって、こっそり行ってるが、危険はないし、どうしてダメダメって言うのか不思議だった。
「クロード、あ~そぼ~」
幼馴染みのハンスが遊びに誘いにきた。
「ちょっとまってて~」
近所の大人達は村の外れのクロードの家近くには滅多にやって来ない。すぐそばには鬱蒼とした森があり、その森の奥にはその昔魔女がいたと噂されていた。
そんな恐ろしげな所に足を踏み入れる者はなく、年に一度肝試しに子ども達が森の外周付近をうろつくぐらいだ。
「平気さ、魔女なんていないよ。ただの噂さ。」
「ハンス、俺は魔女が怖くて、こなかったんじゃないぞ。大人の言いつけにしたがったまでだ。」
家の中まで声が聞こえる。いつもなら、ハンス一人でやって来るのに、今日はハンスとは別の聞きなれた声がする……クロードはニヤリと笑い、腰にバッグを着けて、ドアを開けた。
「やあ、ハンス。今日はそっちの腰抜けも来たのか?」
「黙れ、クロード!俺は腰抜けなんかじゃないぞ。」
「いつもねえちゃんの尻にくっついてる臆病ものじゃないか。」
「まあ、まあ、クロード、ベルタも…今日は森のキノコを取りに行くんだろ?」
クロードはベルタをからかいながらも、ドアの横に積まれた籠をハンスに手渡し、自分も左手に一つ持った。ベルタはキノコ取りは初めて……大人の手伝いしかしたことなかった……なので、キノコの見分け方が分からないだろうからクロードが一緒に見てやるつもりだ。
「ねえちゃんの許可はとってきたのかい?」
「まさか!魔女の森へ行くなんて言ったら、許しちゃくれないよ。ハンスの家に行くって言ってきた。」
「そうか、じゃあ取ったキノコは持って帰らないのか?」
「ハンスに貰ったって言えば……」
「バカだな、ハンスは変わり者の俺と付き合いがあるって、知られてるんだぜ?ハンスにもらったなんて事言ったら俺が森で取ってきたのバレバレじゃん。」
「むぅぅ。」
「いいじゃないか、いっぱい取ってきて、皆で食べよう。旨くて、珍しいキノコを取りにいこうぜ。沢山取れたら売りに行こう。」
三人は森に向かう。村の子ども達は、子どもだけで森に入ってはいけないと、きつく言われている。だが、子どもだけではなく毎年何人か森で行方不明者が出る。そして発見されないのは森の魔女に食べられたからだと、言う奴もいる。
「ベルタは俺の事気味悪くないのか?大人達は目も合わせないぜ?」
「俺は全然怖くねぇぜ。別に、皆がお前を怖がってるわけじゃねえぞ。本屋のトンだって、パン屋のマッツーだって、お前とは仲良いじゃないか。魔女の隠し子なんて噂信じる方がバカなんだよ。」
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