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黒の章
黒の子 16
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プロポーズ……って、誰が誰に?とクロードは思ったが、それを聞いていいものか、しばし悩む。
そのまま会話は途切れ、無言のまま馬を進める。辺りに民家が無くなり、人の生活の気配がなくなった。
今まで、この辺りには来たことがなかったクロードは、王都からそんなに離れていないのに、こんなに何もない事に違和感を感じていた。田舎育ちの彼は、どんな辺鄙な所でも人の往き来に伴い、何らかの人の気配を、目印や建造物もしくは名残があるのを肌で知っている。ここまで何もないということは、民間人が入らない、特別な所なのか。
だが、検問も何もなかったし、遮る物は見当たらなかった。王都までの距離を考えるとどうしてと、不思議に思う。胸の奥がざわざわするが、それが何かわからない。
目の前のフールワンツはそのまま何も言わず進んで行く。
遠くに大きな建物が見えてきた。
「あそこですか?」
高い塀に囲まれ、入り口には警備員が立っている。そこで二人は馬を降りた。
扉の前に立ち、フールワンツの顔を見ると軽く会釈をして扉を開けて誘導する。だが、クロードを見ると全身を見て、更には顔をじろじろ見てくる。その探るような目をじっと見ていると落ち着かない。
「申し訳ありませんが、確認いたします。」
クロードの顔を見た後、警備員は名前を聞き、クロードが答える。
「では、これからは全て『いいえ』で答えて下さい。他の言葉は話してはいけません。」
すべて、いいえ?クロードはちょっと首をかしげて、了承の返事をした。
「はい。」
「返事はすべて、『いいえ』でお願いします。」
「いいえ。」
もう、始まっていたのか……と、気を引き締めたが、うっかり『はい』と答えてしまった事に、顔を赤くした。
「今日の天気は晴れです。」
「いいえ。」
天気はいいよな……でも、『いいえ』だ。
「私の名前はケンジンです。」
「いいえ…?」
目の前の人は始めて見るのに名前も何もないよな…と思うが、『いいえ』と答えろと言われたので、そう答える。
「私は三人兄弟です。」
「いいえ。」
「私の名前はシンジです。」
「………いいえ。」
さっきと名前…違うよな。心の中でつぶやく。
「あなたには秘密があります。」
「いいえ。」
「あなたは人に言えないことがありません。」
「?いいえ。」
「中に入りますか?」
「は……いいえ。」
何だろうこのやり取りは?不思議に思ってフールワンツの顔を見た。
ニッコリ笑ってこちらを見ている彼に警備員が声を掛けた。
「ワンツ、クロードは報告通り複数の能力持ちだ。クロード、一緒に来なさい。」
「?」
急に口調が変わったケンジンに、驚いたが、フールワンツも頷いて歩きだしたので、クロードも開かれた扉の中へ入って行った。
「改めて自己紹介だ。王立騎士団第七部隊長のシルバーアール。君も会ったことがある第七副部隊長フォムボトルや第三班シーブイレイル班長の上司になるな。」
「フォムボトルさんが副部隊長!すごいや!それにシーブイレイルさんも班長になったんだ!」
「彼らから君のことは聞いているよ。」
七才の時に村で出会った騎士。ハンスと共に騎士を目指すきっかけになった二人だ。あれから再会することは無かったが、ここで名前を聞くとは、驚きだ。
「ここにいるワンツも第七部隊所属だよ。俺が引き抜いた。」
「…でも……まだ先輩は準騎士ですよね?…」
「準騎士で、学生だが、ここでは特別に許されている。君も今日から第七部隊所属だ。いいかな?」
「え?第七部隊?…私はまだ小学年ですよ?よく、わかりませんが…そんな事が…出来るのですか…?」
一方的にポンポン言われて、よくわからないまま、食堂のような部屋に入り、椅子を勧められた。
「まあ、ここが何のための施設なのか、第七部隊の事も、説明するから。」
そのまま会話は途切れ、無言のまま馬を進める。辺りに民家が無くなり、人の生活の気配がなくなった。
今まで、この辺りには来たことがなかったクロードは、王都からそんなに離れていないのに、こんなに何もない事に違和感を感じていた。田舎育ちの彼は、どんな辺鄙な所でも人の往き来に伴い、何らかの人の気配を、目印や建造物もしくは名残があるのを肌で知っている。ここまで何もないということは、民間人が入らない、特別な所なのか。
だが、検問も何もなかったし、遮る物は見当たらなかった。王都までの距離を考えるとどうしてと、不思議に思う。胸の奥がざわざわするが、それが何かわからない。
目の前のフールワンツはそのまま何も言わず進んで行く。
遠くに大きな建物が見えてきた。
「あそこですか?」
高い塀に囲まれ、入り口には警備員が立っている。そこで二人は馬を降りた。
扉の前に立ち、フールワンツの顔を見ると軽く会釈をして扉を開けて誘導する。だが、クロードを見ると全身を見て、更には顔をじろじろ見てくる。その探るような目をじっと見ていると落ち着かない。
「申し訳ありませんが、確認いたします。」
クロードの顔を見た後、警備員は名前を聞き、クロードが答える。
「では、これからは全て『いいえ』で答えて下さい。他の言葉は話してはいけません。」
すべて、いいえ?クロードはちょっと首をかしげて、了承の返事をした。
「はい。」
「返事はすべて、『いいえ』でお願いします。」
「いいえ。」
もう、始まっていたのか……と、気を引き締めたが、うっかり『はい』と答えてしまった事に、顔を赤くした。
「今日の天気は晴れです。」
「いいえ。」
天気はいいよな……でも、『いいえ』だ。
「私の名前はケンジンです。」
「いいえ…?」
目の前の人は始めて見るのに名前も何もないよな…と思うが、『いいえ』と答えろと言われたので、そう答える。
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「私の名前はシンジです。」
「………いいえ。」
さっきと名前…違うよな。心の中でつぶやく。
「あなたには秘密があります。」
「いいえ。」
「あなたは人に言えないことがありません。」
「?いいえ。」
「中に入りますか?」
「は……いいえ。」
何だろうこのやり取りは?不思議に思ってフールワンツの顔を見た。
ニッコリ笑ってこちらを見ている彼に警備員が声を掛けた。
「ワンツ、クロードは報告通り複数の能力持ちだ。クロード、一緒に来なさい。」
「?」
急に口調が変わったケンジンに、驚いたが、フールワンツも頷いて歩きだしたので、クロードも開かれた扉の中へ入って行った。
「改めて自己紹介だ。王立騎士団第七部隊長のシルバーアール。君も会ったことがある第七副部隊長フォムボトルや第三班シーブイレイル班長の上司になるな。」
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「彼らから君のことは聞いているよ。」
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「…でも……まだ先輩は準騎士ですよね?…」
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「え?第七部隊?…私はまだ小学年ですよ?よく、わかりませんが…そんな事が…出来るのですか…?」
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