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黒の章
黒の子 25
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「クロード君。食事だ。」
「隊長……よければ調理しますよ?……俺…」
隊長が持ってきた食事は隊で持ち運ぶよく目にする携帯食だった。一昨日は食堂が閉まったあとの夜食用に準備されている物、昨日は非常用の備蓄品だった。隊長が用意する物は食事に関しては頓着しないようで、腹を満たせれば良いとばかりに味気無い。クロードはこのままの食生活では辛すぎると思い、せめて、キッチンに行かせてもらおうと考えていた。
クロードが閉じ込められてもう何日か……外泊届けが休学届けになっていることも彼は知らない。
「もう、部屋から出して下さいよ。授業も休んでるし……心配かけてますって。」
「連絡はしたから、大丈夫だ。それより、食べ終わったら、今度はこの魔装具を…」
全く聞く気のない隊長にはお手上げである。
不思議なことに、今この施設には隊長とクロードの他に人の気配がないのだ。この状況が、偶然のものなのか、隊長の企みなのか、クロードにはわからない。いつもは研究員、施設職員、食堂で働く女性、といった複数の人がいて、騎士達が出入りする日はとても賑やかなのに、この数日は人の動きを感じられない。
新しい魔装具の改良には実はクロードも興味があり、装着して実験するのも嫌じゃない。だが、今回の隊長の行動は行き過ぎだろう。今までクロードはフールワンツ先輩が一緒の時じゃないと実験に参加していなかった。きっと、こうなることがわかっていて、先輩は隊長を牽制していたんだなぁと、クロードは思う。
ハンスは初めて見る建物の入り口付近で騎乗したフールワンツ先輩がこちらを見ているのを見つけた。
最近よく彼がクロードと話している所に出くわす事が多かったので、顔見知りとなっていた。
「先輩!」
「ハンス…なぜ……」
不思議そうな顔でハンスを見る。
「あ、……授業…えっと……今日は……あの……その……これは……」
今日は休みじゃない。自分がここにいることの説明ができない。ハンスはどうにか誤魔化そうと口ごもった。
「すみません!クロードが心配で…」
「まあ、いい。実は困ったことになっていてな………」
フールワンツは隊長の偽招集で王都まで駆けた。だが、偽の招集など、すぐバレた。すぐにとって返したが、彼も建物に近付けなくなっていたのだ。
「中に居るんですね。」
そう言って騎乗したまま近付こうとするが、何故か進めない。 ハンスはその場でぐるぐると回り、建物を睨んだ。
「先輩、どうしてクロードはこの中に?いつもアルバイトだって言っていたのに…先輩は知っていたんですか?」
困った顔のフールワンツはハンスにすべてを話していいのか、まだ迷っていた。
「うん。俺が誘ったから……でも、すまない。まだ、詳しく話せない。だが、何とかして中に入らないと……」
「クロード!聞こえるか!?絶対助けるから!」
ハンスは大きく声を張り上げ呼び掛ける。たとえ、クロードの耳に届かなくても、叫ばずにいられなかった。
「隊長……よければ調理しますよ?……俺…」
隊長が持ってきた食事は隊で持ち運ぶよく目にする携帯食だった。一昨日は食堂が閉まったあとの夜食用に準備されている物、昨日は非常用の備蓄品だった。隊長が用意する物は食事に関しては頓着しないようで、腹を満たせれば良いとばかりに味気無い。クロードはこのままの食生活では辛すぎると思い、せめて、キッチンに行かせてもらおうと考えていた。
クロードが閉じ込められてもう何日か……外泊届けが休学届けになっていることも彼は知らない。
「もう、部屋から出して下さいよ。授業も休んでるし……心配かけてますって。」
「連絡はしたから、大丈夫だ。それより、食べ終わったら、今度はこの魔装具を…」
全く聞く気のない隊長にはお手上げである。
不思議なことに、今この施設には隊長とクロードの他に人の気配がないのだ。この状況が、偶然のものなのか、隊長の企みなのか、クロードにはわからない。いつもは研究員、施設職員、食堂で働く女性、といった複数の人がいて、騎士達が出入りする日はとても賑やかなのに、この数日は人の動きを感じられない。
新しい魔装具の改良には実はクロードも興味があり、装着して実験するのも嫌じゃない。だが、今回の隊長の行動は行き過ぎだろう。今までクロードはフールワンツ先輩が一緒の時じゃないと実験に参加していなかった。きっと、こうなることがわかっていて、先輩は隊長を牽制していたんだなぁと、クロードは思う。
ハンスは初めて見る建物の入り口付近で騎乗したフールワンツ先輩がこちらを見ているのを見つけた。
最近よく彼がクロードと話している所に出くわす事が多かったので、顔見知りとなっていた。
「先輩!」
「ハンス…なぜ……」
不思議そうな顔でハンスを見る。
「あ、……授業…えっと……今日は……あの……その……これは……」
今日は休みじゃない。自分がここにいることの説明ができない。ハンスはどうにか誤魔化そうと口ごもった。
「すみません!クロードが心配で…」
「まあ、いい。実は困ったことになっていてな………」
フールワンツは隊長の偽招集で王都まで駆けた。だが、偽の招集など、すぐバレた。すぐにとって返したが、彼も建物に近付けなくなっていたのだ。
「中に居るんですね。」
そう言って騎乗したまま近付こうとするが、何故か進めない。 ハンスはその場でぐるぐると回り、建物を睨んだ。
「先輩、どうしてクロードはこの中に?いつもアルバイトだって言っていたのに…先輩は知っていたんですか?」
困った顔のフールワンツはハンスにすべてを話していいのか、まだ迷っていた。
「うん。俺が誘ったから……でも、すまない。まだ、詳しく話せない。だが、何とかして中に入らないと……」
「クロード!聞こえるか!?絶対助けるから!」
ハンスは大きく声を張り上げ呼び掛ける。たとえ、クロードの耳に届かなくても、叫ばずにいられなかった。
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