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お仕事の時間ですよ 3
王宮騎士物語 第43話 …好き
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ふたりの間には何も遮る物はない。なのに、それ以上一歩も前に進めず、言葉も出てこない。
サーバスは差し出した本を一向に受け取る様子がない。クレッセリアは手を降ろし、居心地の悪い空間から立ち去ろうと反転した。
「そんなに…好き……なんだ…………」
静寂の中に響くサーバスの声は絞り出したのであろう、力無く震え、クレッセリアの背中をゾクリと撫で上げ駆け上がる。耳まで燃えているように熱い。
「……な、何を……」
サーバスから避けるように顔を背けたまま、動揺を悟られまいと冷静を装い声を出そうとする。胸の辺りに持ち上げた、震える指先の両手でギュッと本を抱え、頭の中では先のサーバスの言葉が蘇る。
……好きって言った?そんなに好きって……何故、今?どうして?……でも好きって………何て返事したらいいの……? 私も好きって……い…言えない……そんなの……恥ずかしすぎる………
クレッセリアはサーバスの言葉と自分の思考がぐるぐる回り、サーバスの言葉の意図を探るために自らの言葉を探す。
「急に……そんな事……言われても……私……も……」
クレッセリアは背中に全神経が集まったかのようにサーバスを感じながら、自分の口からか細い声が出るのを聞いた。
「……っ……ほ……本……が……」
その声を聞き、クレッセリアは一瞬で冷水を浴びたように身体が冷たくなるのを感じた。期待した自分をすっかり棚に上げ、思わせ振りなサーバスの態度に怒りすら感じる。
…何?紛らわしい!…バカみたいじゃない!私ってば!独りで盛り上がって……
クレッセリアはくるりと振り返る。その目は沸騰する感情につり上がって……
「ええ、大好きですよ!…本が!ね!」
強く声が響く。その冷たい声に、サーバスは何故だか怒らせてしまったことに気付いた。彼は言葉を選び間違えたと理解し、悔やんだ……しかし、言わねばならない言葉がある。言いたくない……その言葉を口にした。
「…休みの間だけじゃ……読みたい本が沢山あって、読みきれないだろう?それに、少し先だが……貴重な本が入る予定があるんだ。きっと君も興味があると思って……長期の休みが終わっても、いつでもここへ入れるよう……許可証を用意したんだ。」
その言葉を理解した彼女の硬い表情は見る間にパアーッと溶けて、……ああ、花が咲いた……その花に目を吸い寄せられるサーバスはぼんやりそう思った。
許可証は最初の日に来館希望者がクレッセリアと知って直ぐ様手配した。翌日にはいつでも渡せるように懐にいれて………だが、渡せなかった。渡してしまったら、クレッセリアと同じ空間で同じ時を過ごす理由が無くなってしまうのだ。一日過ぎ、また、一日過ぎ……明日だ、明日渡そう……と、ずるずる先延ばしにしていた。彼女に『あなたは居なくてもいい。』とか、『ひとりにして。』とか、『邪魔よ。』などと言われたくない。
「これがあれば、いつでも自由に入館出来る。期限はないから……」
「ありがとう!うれしい!サーバス!ありがとう!」
まあ、その言葉が聞けて、俺も嬉しいですよ。とサーバスは呟いた。あ~あ、明日からはここに来る理由が無くなってしまったな……と頭をかいた。
「じゃぁ……」
許可証も渡してしまったから、ここで何もせずボーッとしているのは不自然だ。後は彼女の邪魔にならないよう図書館を出よう。サーバスは退出しようと扉に向かって歩き出した。
「サーバス。」
呼び止められた。
「どこへいくの?」
掛けられた声を不思議に思い、ふぇ?と間の抜けた声が出た。
「どこって……俺がここに居なくても…」
「なにを言ってるの、あなたはここで私が選んだ本を読むの。冒険小説なら、はまるわよ。楽しいから絶対!」
それから、甘い雰囲気は無いものの、二人っきりの時間を過ごした。お互いを意識しつつも、一足飛びにはいかない二人の関係はこの先ゆっくりと前に進み、卒業後も二人が一緒にいる姿を見ることになる。ブリジットに言わせると……
「サーバス!クレッセリア!あーもう、好き合ってるんだから、さっさとくっついてしまいなさいよ!身分の差?そんなもの、愛し合う二人には燃え上がる燃料みたいなモンよ!サーバス!男を見せなさい!」
………だそうだ。
その、応援の言葉をサーバスは聞いて友の思いが嬉しかったが、言った場所がね………残念だ。やっぱり残念ブリジットだと彼は思った。その言葉はハマーとの結婚式の感動的な新郎のお礼のスピーチの後で、花嫁がマイクを奪って言うのはちょっとどうかと思う。隣でハマーが頭を抱えて、関係者のため息が聞こえた。クレッセリアとサーバスはその後、会う人、会う人に謝り続けた。
サーバスは差し出した本を一向に受け取る様子がない。クレッセリアは手を降ろし、居心地の悪い空間から立ち去ろうと反転した。
「そんなに…好き……なんだ…………」
静寂の中に響くサーバスの声は絞り出したのであろう、力無く震え、クレッセリアの背中をゾクリと撫で上げ駆け上がる。耳まで燃えているように熱い。
「……な、何を……」
サーバスから避けるように顔を背けたまま、動揺を悟られまいと冷静を装い声を出そうとする。胸の辺りに持ち上げた、震える指先の両手でギュッと本を抱え、頭の中では先のサーバスの言葉が蘇る。
……好きって言った?そんなに好きって……何故、今?どうして?……でも好きって………何て返事したらいいの……? 私も好きって……い…言えない……そんなの……恥ずかしすぎる………
クレッセリアはサーバスの言葉と自分の思考がぐるぐる回り、サーバスの言葉の意図を探るために自らの言葉を探す。
「急に……そんな事……言われても……私……も……」
クレッセリアは背中に全神経が集まったかのようにサーバスを感じながら、自分の口からか細い声が出るのを聞いた。
「……っ……ほ……本……が……」
その声を聞き、クレッセリアは一瞬で冷水を浴びたように身体が冷たくなるのを感じた。期待した自分をすっかり棚に上げ、思わせ振りなサーバスの態度に怒りすら感じる。
…何?紛らわしい!…バカみたいじゃない!私ってば!独りで盛り上がって……
クレッセリアはくるりと振り返る。その目は沸騰する感情につり上がって……
「ええ、大好きですよ!…本が!ね!」
強く声が響く。その冷たい声に、サーバスは何故だか怒らせてしまったことに気付いた。彼は言葉を選び間違えたと理解し、悔やんだ……しかし、言わねばならない言葉がある。言いたくない……その言葉を口にした。
「…休みの間だけじゃ……読みたい本が沢山あって、読みきれないだろう?それに、少し先だが……貴重な本が入る予定があるんだ。きっと君も興味があると思って……長期の休みが終わっても、いつでもここへ入れるよう……許可証を用意したんだ。」
その言葉を理解した彼女の硬い表情は見る間にパアーッと溶けて、……ああ、花が咲いた……その花に目を吸い寄せられるサーバスはぼんやりそう思った。
許可証は最初の日に来館希望者がクレッセリアと知って直ぐ様手配した。翌日にはいつでも渡せるように懐にいれて………だが、渡せなかった。渡してしまったら、クレッセリアと同じ空間で同じ時を過ごす理由が無くなってしまうのだ。一日過ぎ、また、一日過ぎ……明日だ、明日渡そう……と、ずるずる先延ばしにしていた。彼女に『あなたは居なくてもいい。』とか、『ひとりにして。』とか、『邪魔よ。』などと言われたくない。
「これがあれば、いつでも自由に入館出来る。期限はないから……」
「ありがとう!うれしい!サーバス!ありがとう!」
まあ、その言葉が聞けて、俺も嬉しいですよ。とサーバスは呟いた。あ~あ、明日からはここに来る理由が無くなってしまったな……と頭をかいた。
「じゃぁ……」
許可証も渡してしまったから、ここで何もせずボーッとしているのは不自然だ。後は彼女の邪魔にならないよう図書館を出よう。サーバスは退出しようと扉に向かって歩き出した。
「サーバス。」
呼び止められた。
「どこへいくの?」
掛けられた声を不思議に思い、ふぇ?と間の抜けた声が出た。
「どこって……俺がここに居なくても…」
「なにを言ってるの、あなたはここで私が選んだ本を読むの。冒険小説なら、はまるわよ。楽しいから絶対!」
それから、甘い雰囲気は無いものの、二人っきりの時間を過ごした。お互いを意識しつつも、一足飛びにはいかない二人の関係はこの先ゆっくりと前に進み、卒業後も二人が一緒にいる姿を見ることになる。ブリジットに言わせると……
「サーバス!クレッセリア!あーもう、好き合ってるんだから、さっさとくっついてしまいなさいよ!身分の差?そんなもの、愛し合う二人には燃え上がる燃料みたいなモンよ!サーバス!男を見せなさい!」
………だそうだ。
その、応援の言葉をサーバスは聞いて友の思いが嬉しかったが、言った場所がね………残念だ。やっぱり残念ブリジットだと彼は思った。その言葉はハマーとの結婚式の感動的な新郎のお礼のスピーチの後で、花嫁がマイクを奪って言うのはちょっとどうかと思う。隣でハマーが頭を抱えて、関係者のため息が聞こえた。クレッセリアとサーバスはその後、会う人、会う人に謝り続けた。
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